(左から)鈴木正人、青柳拓次、栗原務

2020年にデビュー30周年を迎えたLITTLE CREATURES。2021年1月には8作目のアルバム『30』をリリースした。その記念すべき30周年作が、〈RECORD STORE DAY〉の6月12日(土)に完全限定生産のアナログ盤としてリリースされる。

これを機に今回Mikikiは、前後編の2記事でLITTLE CREATURESの30年を振り返る。90~2000年代について語った前編に続く後編は、2010年代以降のバンドと新作『30』について。音楽ライターの小野田雄を聞き手に、青柳拓次(ヴォーカル/ギター)、鈴木正人(ベース)、栗原務(ドラムス)の3人がじっくりと語った。 *Mikiki編集部

 

2011年

2010~2016年
禁じ手を使った『LOVE TRIO』、トリオの模索を伝える『未知のアルバム』

――2010年代のLITTLE CREATURESは、ハード・ディスク・レコーディングによる緻密なポスト・プロダクションを極めた末に、3人による生演奏に回帰。その流れをさらに押し進めていきますが、2010年のアルバム『LOVE TRIO』は肉感的にしてシンプルなバンド・サウンドを基調に、ギター以上にシンセサイザーの存在感を増したロックが展開されています。

LITTLE CREATURES 『LOVE TRIO』 ビクター(2010)

青柳拓次「LITTLE CREATURESは打ち込みに傾倒した時期もありましたけど、自分のギターしかり、全体のサウンドしかり、基本的にはヴィンテージな鳴りが好きなんですよね。だから、生楽器のあたたかい音であったり、エレキ・ギターの味わい深い鳴りであったりにこだわってきましたし、逆にいえば、ムーグを除いて、シンセサイザーのサウンドは禁じ手にしてきたんですけど、だからこそ、敢えて、その禁じ手を使うことで、何か新しい耳触りが欲しかったんだと思います」

2010年作『LOVE TRIO』収録曲“The Sand Cage”

栗原務「しかも、あのアルバムではシンセサイザーのアプローチや解釈が3者3様に異なっていて、それが混ざり合っているところに面白さがあるし、アートワークも含め、いい意味でふざけている作品ですよね」

2016年

──この作品でデビュー20周年を迎え、作品同様に活動も軽やかになっていくのかと思いきや、次作『未知のアルバム』のリリースは5年半後の2016年ですよ。

青柳「しっかり仕事をしないといけないなと思いつつも、需要と供給の問題もありますからね(笑)。でも、そろそろかなという時になるとタイミングを読む才能に長けた事務所の社長がバチッと声をかけてくれて、じゃあ、やろうかなとなるんです」

LITTLE CREATURES 『未知のアルバム』 CHORDIARY(2016)

――外からきっかけを与えてもらいつつ、『未知のアルバム』はミニマルな3ピースの編成でしたよね。

栗原「2010年の『LOVE TRIO』はシンセサイザーを用いつつ、音数自体はめちゃくちゃ少なくて、そこからさらにシンセサイザーを抜いて、ギター、ベース、ドラムに削ぎ落したものが『未知のアルバム』になったんじゃないかな」

2016年作『未知のアルバム』収録曲“声なき者”

鈴木正人「ギター、ベース、ドラムというのは、トリオのバンドとしてはベタな編成じゃないですか。そのベタな編成を利用しながら、今までとは異なる手触りを模索するところに面白みがあったんですよ」

――そのベタな編成こそがLITTLE CREATURESにとっては未知なる世界だった?

鈴木「それはあったかもしれない」

──『未知のアルバム』のバンド・アンサンブルはミニマルでありつつ、凝ったドラム・パターンがアクセントになっていますよね。

栗原「そうですね。曲作りでは3人それぞれがドラム・パターンも作ってくるんですけど、彼ら2人のパターンにはボンゴなどのパーカッションも組み込まれていて、自分では思い付かない面白いものなんですが、地味に複雑なんです。

レコーディングにおいては、まず、それをどうやったら実際にプレイできるかというところから始まって、かなり練習が必要だった作品でしたね」