この4月、巨匠・蜷川幸雄の跡を継いで彩の国さいたま芸術劇場の新しい芸術監督となった振付家・ダンサーの近藤良平。その就任第1作として、近藤自身の演出・振付による舞台『新世界』が上演される。
「クロッシング」をテーマに掲げる2022年度のラインアップの中、「ジャンル・クロス」と銘打たれた『新世界』は、様々なジャンルのアーティストが集う越境的な舞台だ。まず演出補に、劇作家・演出家・俳優の長塚圭史。近藤とは旧知の間柄で、2021年よりKAAT神奈川芸術劇場の芸術監督を務めているため、公共劇場の芸術監督同士でもある。出演には近藤、そして長塚も名を連ねるほか、ダンサーの入手杏奈、柿崎麻莉子、四戸由香、俳優の青井想、サーカスアーティストの油布直輝、長谷川愛実、天野真志、切り絵師のチャンキー松本、ミュージシャンの岡田カーヤ、栗原務、鈴木井咲、西尾賢、リョコモンスターと、多士済々。新芸術監督の船出にふさわしい賑やかさだ。
ではどのような舞台になるのか。勿論、様々な試行錯誤を重ねて初日に至るわけなので、言ってしまえば観てのお楽しみなのだが、シェイクスピアの『テンペスト』が題材の一つとなっている点には注目したい。劇作家が単独で書いた最後の戯曲とも言われ、ある種特別な位置づけで語られる『テンペスト』の簡単なあらすじは、こうだ。大公の座を奪われ追放された主人公プロスペローは、娘ミランダと12年間孤島で暮らしながら復讐のため魔術を身につけ、仇敵のナポリ王や大公となった弟らを集めるが、やがて和解し、娘とナポリ王子が結婚する中、プロスペローは持っていた魔法の杖を折る――。荒ぶる全能者から、他と同じく非力な一人の人間へと戻るプロスペローの姿と行動には、赦しや平和、再生を見て取ることができるだろう。
『新世界』は『テンペスト』の筋を厳密に追うというより、そのイメージを膨らませ、自由に発展していく舞台になるようだが、生命が芽吹き、劇場としても新たに船出する春にふさわしく、また、時節柄、ロシアとウクライナなど世界の諸問題とも重なって見えるかもしれない。
さらに言うなら、魔法を操るプロスペローは、劇場における芸術監督にも通じる存在だ。
主宰するダンスカンパニー、コンドルズでは、懐の深さでもって、多様なバックグラウンドと強烈な個性を持つメンバー達を四半世紀にわたって束ねてきた近藤が、彩の国さいたま芸術劇場でその力をどう使い、あるいは使わず、自らの時代を作っていくのか。多彩なメンバーと共に彼が創り出す“新たな世界”に期待は高まる。
THEATER INFORMATION
ジャンル・クロスⅠ<近藤良平 with 長塚圭史>『新世界』
【日時】2022年4月29日(金・祝)~5月1日(日)各日15:00開演
【会場】彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
【演出・振付】近藤良平(彩の国さいたま芸術劇場芸術監督)
【演出補】長塚圭史
【出演】
近藤良平/長塚圭史/入手杏奈/柿崎麻莉子/四戸由香/青井 想
<サーカスアーティスト>
油布直輝/長谷川愛実/天野真志
<切り絵師>
チャンキー松本
<ミュージシャン>
岡田カーヤ/栗原 務/鈴木井咲/西尾 賢/リョコモンスター
【料金(全席指定・税込)】
一般: 5,000円/U-25*:2,000円
*U-25:公演時25歳以下対象。入場時要身分証明書
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【主催・企画制作】公益財団法人埼玉県芸術文化振興財団
【助成】一般財団法人地域創造
【協力】KAAT神奈川芸術劇場
【特別協力】沢入国際サーカス学校/瀬戸内サーカスファクトリー
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