コラム

GIDEON VAN GELDER 『Lighthouse』

Freedom Jazz Dance

GIDEON VAN GELDER 『Lighthouse』

ロバート・グラスパー以降〉をキーワードにして、その盛り上がりをいつになく外側へも伝えているジャズ界隈の昨今。かつてホセ・ジェイムズ・バンドにも在籍していたピアニストが絶好のタイミングで発表するセカンド・アルバムは勢いを継ぐ矢となるのだろうか?

GIDEON VAN GELDER Lighthouse Kindred Spirits/Pヴァイン(2014)

ストレートなマナーで切り拓かれた〈いまのジャズ〉

 オランダ出身でNY在住、83年生まれのピアニストによる4年ぶり2作目。共同プロデュースにはホセ・ジェイムズや黒田卓也らに関わるブライアン・ベンダーを迎え、ホセの最新作でも歌っていた注目のシンガー・ソングライターベッカ・スティーヴンスが前作『Perpetual』から続投、さらにエリマージやロバート・グラスパーのバンドでも活躍するジャマイア・ウィリアムス(ドラムス)が新たに加入……という参加陣はいかにも〈新世代のジャズ〉だが、この『Lighthouse』から聴き取れるのはヒップホップポスト・ロック以降の感覚ではなくストレートなジャズ・マナーだ。

 ベッカがフローラ・プリムのように可憐な歌声で飛翔する“As Night”はECM新主流派めいたクールさを醸し、トニーニョ・オルタ“Moonstone”やミルトン・ナシメント“Pier // Cais”のカヴァーで聴かせる清冽さはミナス・サウンドを思わせる。そして、アブストラクトな響きもあるピアノは影響を公言するアンドリュー・ヒルさながらだ。ただし、古びたジャズの再生産やディフォルメとは無縁の快音はクラブ・ミュージックを通過した耳にも新鮮に響くスリリングな切れ味を持ち、演奏から立ち昇る熱は気鋭という言葉が相応しい。伝統的ジャズを研ぎ澄まして現代に再提示する本作もまた、〈いまのジャズ〉を真正面から切り拓く一枚だ。 *池谷昌之

 

ブレのないコンテンポラリーな独創世界

 ニュー・スクール在学中より交流を温めていたホセ・ジェイムズのバンドに名を連ね、『Blackmagic』(2010年)のレコーディングとそれに伴うツアーへの参加(来日も経験)で知られるピアニスト、ギデオン・ヴァン・ゲルダー。それに前後して故郷オランダのキンドレッド・スピリッツから発表した初のリーダー作『Perpetual』は、(いわゆるクラブ・サウンドと融合するのではない)当世的なクラブ・ジャズの在りようをストレート派にも馴染むフォーミュラで感覚的に証明する作品だったが、時流に照らせば今回完成されたセカンド・アルバム『Lighthouse』にも同じようなことが言える。

 ホセやロバート・グラスパーといった急進的(?)な面々がともすればアピールする〈枠に縛られない俺〉という枠が急速に出来上がっているようにも思える昨今、彼らとひとつの同時代性を形成している(と見なされる)ギデオンではあるが、前作リリース後の『Perpetual EP』(2011年)で披露されていたトニーニョ・オルタのカヴァー“Moonstone”が再収録されていることからもわかるように(全体の録音時期がばらけているのかどうか執筆時点では不明なのだが)、ここにあるのは同志たちの手つきに安易に引きずられることなく構築されたコンテンポラリーな独創世界だ。快く疾走するバップ“Victory Joy Dance”で幕を開け、“As Night”と“Visions”の回廊を抜けて視野の開けた先では、前述のスピリチュアルな“Moonstone”とミルトン・ナシメント“Pier // Cais”が、前作で切り拓いた幻想的なサウンドスケープを柔らかく拡張している。例えばカルロス・ニーニョのような何年か前の〈新しいジャズ〉が好きな人も聴いてみてほしい! *轟ひろみ

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