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全然まだ登ってる途中

――この4人組で行くのを決めたのはいつですか?

「2月末ぐらいですね。なんで、アルバムの制作も超突貫でしたよ。作ってた曲はあったんですけど、松隈とも〈じゃあ、どうしよっか?〉みたいに相談しながら。だから、ミックスとかも聴いていただいたらわかるように、もう〈ギザギザハートの子守唄〉で(笑)。これでもちょっとマイルドにしたんですけど。歌詞もとにかくストレートで、メンバーたちにも言ったんですけど、ブルーハーツとかをリファレンスにして、簡単な言葉でちゃんと伝えるっていうことを意識してくれっていうので、そこはカッコ付けないように意識しましたね」

――いわゆる〈ファースト・アルバム〉を何度も作ってきたなかで、歴代の作品と比べて今回はどんな一枚でしょう。

「それで言うと、1期BiSの『Brand-new idol Society』やBiSHの『Brand-new idol SHiT』と一線を画すのは、やっぱりBiSもBiSHもファーストは〈音のおもちゃ箱〉をめざしたんですよね。そんなに方向性を決めず、やりたい曲を全部やってみようみたいな部分だったんですけど、今回は松隈と話して、いわゆるパンクをめざそうみたいな部分はあって。もちろんそのなかに幅はあるんですけど、キラキラな楽曲とかもなく、パンクにガッツリ寄せた感じはあるかなとは思いますね。まあ、パンクが何なのかわかってないんですけど(笑)。ザラザラしてるようには作りましたね」

――あと、収録曲で〈これをASPがやるんだ〉っていうのが“レリゴ”だと思います。それも往年のBiS感に繋がる理由ではあるんですが。

「ふわっと出てきたんすよね、“レリゴ”が。英詞にしようとも思ったんですけど、伝えることで言うとやっぱり日本語のほうがいいなみたいな部分はあったりとか。あと、自分の気持ちの変化っていうか、どうしても僕がBiSの最初に“レリビ”が生まれた時のような感覚ではないので。ぶっちゃけBiSの最初はお客さんとの距離なんてそこまで考えてなかったんですけど、最後の解散ライヴでは“レリビ”で想像してたような状況をお客さんと近い距離で一緒に作ることができたのかなって自分の中では思っていて。いまはもうそういう状況じゃないっていう部分もありながら、ASPはまだ素人っちゃ素人みたいなもんなんですけど、それでもちょっとは僕がステップアップして上からになったかな?みたいな感じはありますね(笑)」

――それでいうと、近年は渡辺さんのパーソナルな心境とかがいちばんBiSに注がれてたのかなって思うんですけど。特に去年のEP『ANTi CONFORMiST SUPERSTAR』のあたりは、そのまんま一人称だなって感じて。

「あのEPはそうっすね(笑)」

――ASPが出来てBiSもまた変わっていくんでしょうか。

「そうですね。BiSHと同じような感覚ではあるんですけど、彼女たち自身がBiSというものを自分たちでも持ちはじめているので、ここから変わっていくのかなという気はしています。逆に言うと、いまのところASPはホントに僕と松隈の趣味全開でしかないっていうか、まだここからですね」

――はい。最近のWACK全体でいうとGO TO THE BEDSとPARADISES、WAggに新メンバーが入られて。そういえばASPを含むWACKの全グループに柏木由紀さんが加入するという企画も進行中ですね。

「だからメチャクチャ忙しくて(笑)。でも柏木さんは良い子だし、歌も凄く上手いんですよ。なんで、彼女が悪い意味で〈アイドルだから〉ってナメられてるところを払拭したいなって気持ちは凄くあります」

――もうホントに歌が好きな方ですよね。

「そう、みんな〈意外と歌上手いんすね〉って言うんすよ。たぶんAKB48っていう概念が偏見になっちゃってる人が多いんで、そこを変えたいなと思ってますね」

――改めて考えると、ASPも含めてやっぱりWACKは動きがいろいろありそうです。

「ステップアップできてるんでしょうね。コロナもありますけど、自分でもいまのところは全然まだ登ってる感じを実感できるというか、ずっとがむしゃらに走り続けていたんですけど、登り方も変わってきて、〈やっとここからなのかな〉みたいな。ホントにわけわかんないですけど、まさかの柏木由紀を手掛けたりとか、いわゆる芸能の中心みたいな部分にも入り込んできたのは感じてるところですね。なんで、戻らなきゃいけないので、やっぱり〈ANAL SEX PENiS〉かな、みたいな(笑)」

 

5月26日にリリースされるASPのデビュー・アルバム『ANAL SEX PENiS』(WACK)

 

CARRY LOOSEの20年のシングル“にんげん”(T-Palette)

 

渡辺淳之介が手掛ける最近のWACK作品。
左から、EMPiREの21年のシングル『HON-NO/IZA!!』(avex trax)、PARADISESの21年のEP『PARADISES RETURN』(ワーナー)、GO TO THE BEDSの21年のEP『REINCARNATION』(ワーナー)、豆柴の大群の21年作『まめジャー!』(avex trax)

 

左から、BiSのニュー・シングル『TOUCH ME/LOVE』(ULTRA STUPiD)、柏木由紀の21年のシングル“CAN YOU WALK WITH ME??”(キング)、松隈ケンタが在籍するBuzz72+の20年作『13』(SCRAMBLE)、松隈が音楽を担当した映画のサントラ『映画大好きポンポさん』(エイベックス・ピクチャーズ)