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いらなくなったPC、おくれよ
はずかしい画像は消したか?

キリンジ “都市鉱山”(2010年作『BUOYANCY』収録曲)より

まず気づかいが優しい。バルカン人のポンファーのように突発的な堀込高樹さんによるデヴィッド・バーン風の痙攣ボーカルもくせになります。

都市鉱山というのは、廃棄された電化製品なんかの基盤に使われている希少鉱物のことです。サイバーパンクを想起させる響きのわりに言葉の意味は結構ふつうで誰しもガッカリしたことだと思います。

〈都市鉱山=近未来に壊滅した都市の瓦礫からレアメタルをディグることで生まれる諍の意〉であってほしいですね。

 

さよならの国
口づけの街に生きる

キリンジ “君の胸に抱かれたい”(2000年作『3』収録曲)より

素敵。ぜひ住みたい。

 

水曜日 継母の従兄弟を訪ねてみる
金曜日 姪が歯医者に行くので付き合う

キリンジ “奴のシャツ”(2003年作『For Beautiful Human Life』)より

ハードボイルドな無職である。木曜日は何もしていない。叔父に苦言を呈されても〈親父の通夜でからまれる〉と被害妄想気味なところもダメダメ。

父親(主人公にとっての叔父)から〈あいつはボタンを掛け違えている〉と吹き込まれて本人に言ってしまう姪の存在もイヤですね。反面教師にしたい。

 

ザクロを跳ねたら知らぬ存ぜぬで済むと思うな

キリンジ “Drive me crazy”(99年作『47’45”』収録曲)より

〈すむ〉じゃなくて〈済む〉であるところが、字面として、強硬な態度のイメージを強めています。

ザクロって人肉の味がするというけど、わたしは人肉もザクロも食べたことがない。
そこでファクトチェックしようとして検索したところ〈ザクロはどんな味? 血・人肉に似てるって本当?〉っていうタイトルの記事が出てきて力が抜けました。

〈ザクロを跳ねたら〜〉に決まる前の歌詞が〈誰かを跳ねたら〜〉だったと何かで見た気がするんですが、ザクロは割った感じも皮膚が裂けて内臓が見えているようなグロテスクさがあるので〈ザクロ〜〉で本当に良かったです。

〈ヒヨコたちの列がぁ!!〉〈ひときわ目立つ黄色い傘がからまわりする〉から推測するに、曲中ではおそらく幼稚園児が轢き殺されているんですが、そこを聴いて思い出すのは、「デス・レース2000年」という車で人を轢き殺してポイントを競う映画で、社会的弱者を轢き殺すほど点数が高いというひどいルールです。堀込高樹さんも、もしかしたら、「デス・レース2000年」からインスパイアされているんじゃないでしょうか。

 

若者がギターを弾き歌う
若者に媚びた歌を
自分らしく君らしく、と
慰められて浮かぶ魂
安上がりでそいつは結構だ

キリンジ “柳のように揺れるネクタイの”(2006年作『DODECAGON』収録曲)より

最高です。リリースが2006年なのですが、たしかにその時期っていわゆる〈親に感謝〉とか〈みんなありがとう〉〈地元最高〉みたいな歌詞のポップスが多かった気がします。

〈使えねえ、と言うな〉の切実な若いサラリーマンの叫びもいい。“地を這う者に翼はいらぬ”で歌われる〈メンズ・メンズ・ワールド〉に生きる人の歌。

 

投げかけたキス
気付かれたら頬張る
テクノクラートさ

キリンジ “水とテクノクラート”(97年作『冬のオルカ』収録曲)より

なんだか素敵です。〈ああ、水鳥飛び去ってく/飛行場の濡れそぼつは〉〈赤いK急〉など映像的。品川から羽田空港に向かうときはいつも聴いています。

〈合間縫う腑に落ちない ミュージック〉は電車の発車メロディのことなんじゃないかと密かに思ってます。

 

頑張ったんですが、ぜんぜん10個じゃないですね。まだまだありますが、こんな感じでよろしくお願いします。

記事で紹介した楽曲のSpotifyプレイリスト

 


RELEASE INFORMATION

KIRINJI 『爆ぜる心臓 feat. Awich』 ユニバーサル(2021)

リリース日:2021年7月28日(水)
配信リンク:https://jazz.lnk.to/KIRINJI_HazeruPR

■初回限定盤(CD+DVD)
品番:UCCJ-9229
価格:1,980円(税込)

■通常盤(CD)
品番:UCCJ-2196
価格:1,320円(税込)

TRACKLIST
1. 爆ぜる心臓 feat. Awich
2. 再会
3. 恋の気配(2021 Version)

初回限定盤DVD
・爆ぜる心臓 feat. Awich(Music Video)
・再会(Music Video)

堀込高樹 『鳩の撃退法 オリジナル・サウンドトラック』 ユニバーサル (2021)

リリース日:2021年8月27日(金)
品番:UCCJ-2195
仕様:SHM-CD
価格:2,750円(税込)

収録予定曲
・オープニング
・津田の語り
・秀吉、幼稚園お迎え
・津田の語り、車中
・3000+3万円
・埠頭
・狼狽する津田
・鳩、判明
・倉田のムード、カフェその1
・倉田のムード、マンション前
・倉田のムード、カフェその2
・奈々美と晴山 pt. 1
・奈々美と晴山 pt. 2
・倉田と秀吉、bar Spin
・倉田と秀吉、車中
・bar Spin (fast)
・bar Spin (slow)
・鳥飼、富山へ
・カフェBGM(クリスマス)
・追跡
・謎解き
・新聞
・bar Olivia
・爆ぜる心臓 feat. Awich
他、全25曲

LIVE INFORMATION
KIRINJI SPECIAL LIVE 2021 ~SAIKAI~

2021年8月13日(金)東京・羽田 Zepp Haneda(TOKYO)
開場/開演:18:00/19:00

2021年8月14日(土)東京・羽田 Zepp Haneda(TOKYO)
1部 開場/開演:13:00/14:00
2部 開場/開演:17:00/18:00

チケット:5,500円(税込/ドリンク代別/全席指定)

※公演時間は約60分を予定
※2021年8月14日(土)の2部公演のみ有料生配信を実施予定

■チケット一般発売(先着)
2021年7月17日(土)10:00
e+:https://eplus.jp/
チケットぴあ:https://t.pia.co.jp/

 


PROFILE: 奥野紗世子
92年生まれ。小説家。「逃げ水は街の血潮」で第124界文學界新人賞受賞。近作に「無理になる」(「文學界」2021年6月)。「tattva」(ブートレグ)で連載中。
Twitter:https://twitter.com/HumanTofu
note:https://note.com/souvenir_