ここ数年は過去作のアーカイヴや発掘音源集の続いていたプリンスだが、こちらは2015年の『HITnRUN Phase Two』以来となる初出曲ベースのアルバムだ。録音時期は『20ten』を作り終えてすぐの2010年前半で、皮肉なタイトルの表題曲やカーティス・メイフィールド風の“Born 2 Die”を筆頭に、黒人差別や寡占企業の支配など現代に色濃く顕在する問題を主題とした曲が目立つ。“1000 Light Years From Here”や“When She Comes”など先述の『HITnRUN Phase Two』でリサイクルされたアイデアもあれば、ソウル・アサイラムのエモいカヴァー“Stand Up And B Strong”や曲名通りの“Hot Summer”など曲単位でのポップな聴きどころも多く、また違う殿下の表情を窺い知れる佳曲集であるのは言わずもがな。