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コラム

マニック・ストリート・プリーチャーズ(Manic Street Preachers)2010年代以降の10の名曲

マニック・ストリート・プリーチャーズ『The Ultra Vivid Lament』

Photo by Alex Lake
 

数多の名盤を世に送り出し、波乱の歴史を背負いながらも決して立ち止まることなく、その時々の社会、その時々の自分たちと向き合って新しい音楽を滾々と生み出すことで、〈いま〉を生き続ける。マニック・ストリート・プリ―チャーズはそういう稀有なUKバンドだ。ちょうど30年前にメジャー・デビューし、ファースト・アルバム『Generation Terrorists』(92年)で早速センセーショナルなメディアの寵児となった彼らは、初期メンバーであるリッチー・エドワーズの失踪という悲劇を経て、5作目『This Is My Truth, Tell Me Yours』(98年)で初の全英ナンバーワンを獲得。商業的にも本格ブレイクしたことはご存知の通りで、そこまでのストーリーに注目が集まりがちなのは致し方ないのだが、それからの歩みも同等におもしろい。

※95年2月に失踪した彼は、2008年に死亡宣告がなされている
 

なぜってキューバ公演で幕を開けた2000年代のマニックスは、守りの姿勢に転じるどころか、引き続き独自の創造欲と関心事だけを追求してきた。カオスの坩堝のごとき6作目『Know Your Enemy』(2001年)に次いで、『Lifeblood』(2004年)ではクリーンで洗練されたポップを鳴らす。『Send Away The Tigers』(2009年)でアンセミックなロックに回帰したかと思えば、スティーヴ・アルビニとパンク・アルバム『Journal For Plague Lovers』(2009年)を録音した。

そして2010年代も多様な表現に挑んで充実した時代を過ごしてきた彼らが、14作目『The Ultra Vivid Lament』を送り出す。アバを主要なレファレンスとするピアノ主導のサウンドと、両親を相次いで亡くしたニッキー・ワイアー(ベース)が従来以上に自身の内面を掘り下げた歌詞で紡ぐ、どこまでも鮮やかな哀歌(Ultra Vivid Lament)の数々を収めた作品だ。

今回の記事では、2010年代以降のマニックスを語るうえでは欠かせない10の名曲を選出。『The Ultra Vivid Lament』に至る10年間から厳選した10曲を辿れば、本作でまたもや新境地を拓いたマニックスのワン・アンド・オンリーな軌跡が浮かび上がるだろう。

MANIC STREET PREACHERS 『The Ultra Vivid Lament』 Columbia/ソニー(2021)

Photo by Dean Chalkley
 

“(It’s Not War)Just The End Of Love”(2010年作『Postcards From A Young Man』収録)

実に10枚目のスタジオ・アルバムであり、40代に突入して取り組んだ最初の作品『Postcards From A Young Man』を、彼らは〈マスコミュニケーションへの最後の挑戦〉と位置付けて、幅広い訴求力を備えた作品制作を目指した。90年代後半になって名実共に国民的バンドの座に就き、2000年代を通じてその地位を維持したマニックスだが、ここにきてロックの影響力の後退を感じていたのだろう。先行シングルだったこの曲では、年齢を重ねても、若い頃の自分を突き動かした怒りや情熱は薄れていないことを再確認している。ジェイムズ・ディーン・ブラッドフィールド(ヴォーカル/ギター)はそんなニッキーの歌詞にうっすらと敗北感を察知し、それを消し去るべくスタジアム仕様のコーラスを添えて思い切り輝かしい曲に仕上げ、新たなチャプターのスタートに相応しい1ページを開いた。

 

“Some Kind Of Nothingness”(2010年作『Postcards From A Young Man』収録)

メジャー・デビュー・シングル“Stay Beautiful”(91年)から続いていた連続全英トップ40入りを逃したという点では、この『Postcards From A Young Man』からのサード・シングルは苦い後味を残したかもしれないが、2010年代以降のマニックスが積極的に行なったコラボレーションの成功例として特筆せずにいられない。エコー&ザ・バニーメンのイアン・マッカロクをゲストに迎え、ストリングスとクワイアーで彩った喪失の歌は、明らかにリッチーへのトリビュート。リッチーとジェイムズとショーン・ムーア(ドラムス)にとって人生初のライブ体験はほかでもなく、3人で一緒に観たバニーメンのライブだった。

 

Rock ‘N’ Roll Genius”(2011年のベスト盤『National Treasures』に日本限定ボーナス・トラックとして収録)

メジャー・デビュー20周年の2011年、全シングル曲をコンピレーション『National Treasures』にまとめ、翌年にかけてグレイテスト・ヒッツ・ツアーを敢行した3人。これを記念して録音したニュー・シングル“This Is The Day”(ザ・ザが83年に発表した楽曲のカヴァー)のB面に収めたのが、自嘲と自負が入り混じるこちらの1曲だ。〈俺はロックンロールの天才/笑うなよ/俺はマジだから〉と人を食ったようにうそぶくのは、キース・レヴィンばりのギターを聴かせるジェイムズではなくニッキー。2012年5月に来日した際には、ステージでちらっと歌ってくれたものだが、こんな言葉を真顔で口にできるミュージシャンは、音楽界広しと言えどもそうそういない。

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