
(左から)山本啓、堀川達、川上優、景山奏
デモから感じたロイ-RöE-の曲に対する強い愛
──NABOWAの皆さんはロイさんにどんな印象をお持ちでしたか?
山本啓(NABOWA)「曲をいろいろと聴かせていただいて、まず声にすごく特徴があって、一回聴いたら忘れられない、すごい歌い手の方だなって思いました。
それで一緒に作品を作ることになり、“おまえはパラダイス”のデモを聴かせていただいて。おもしろいアイデアがいっぱい詰まっていたので驚きましたね。特にレイヤーの重ね方に曲に対する強い愛を感じて、作曲家としても尊敬できるなって。あと、僕はロイさんくらいの年の時に、ここまでのデモを作るなんて絶対できひんかったので、すごいなと思いました(笑)」
堀川達(NABOWA)「僕もデモを聴いて、〈若いのにすごいな。おじさんもう曲作るのやめようかな〉って思ったくらい衝撃でしたね。ロイさんは中学を卒業してすぐに曲作りを始めたって聞いて、僕はその頃何してたんやろう?って思いました(笑)」
川上優(NABOWA)「僕らのデモって結構曖昧な状態であることが多いんですけど、ロイさんのデモは完成度がすごく高くて。もう曲ができあがっているような状態だったので、あとはそれに沿って湧いてくるアレンジを形にすることができましたね」
景山「デモのロイさんのアイデアをどれだけ活かして、生楽器をどれくらい足すかっていうことを考えて進めていったんですけど、最初からかっこいい曲なので、あまりやりすぎないように、っていうことは心がけました」
──“おまえはパラダイス”は歌が際立つスローテンポの曲で、ロイさんの曲の中ではど真ん中ではないと思うんですが、元々どういうイメージで作った曲なんですか?
ロイ「普段は色々と構成を練って作ることが多いんですが、この曲は珍しく歌詞から作った曲なんです。シンプルでアコギが似合って、弾き語りでもできるような曲というイメ―ジで。
だから、アレンジが活きる曲だなと思ったので、NABOWAさんにお願いするのがぴったりだなって。そうしたら、アレンジの妙も聴こえるし、歌も聴こえるすごく良い塩梅にしてくれました。私じゃ絶対できないアレンジだと思ったので、お願いできてすごく良かったなと思います。私はいつもパソコンで遊びながらアレンジする感じなので、同じ打ち込みの人より生楽器を弾ける人にお願いすることが多くて。NABOWAさんは、私のそういう部分を大いに補ってくれました。
やっぱり曲を聴いてくれるリスナーの方には〈これ、おいしいので食べてください〉って言いたいんですよね。だから〈ここはもっとこうすれば化けるのに〉って思われないように、できるだけ曲をメイクアップして出したいと思ってるんです」」
一筋縄ではいかない2組
──歌詞については、誰かとの関係性についてのものにも聴こえますし、自分自身の中での葛藤や逡巡にも聴こえるなと思ったのですが。
ロイ「18歳の頃に“おまえはパラダイス”っていう言葉だけをメモってたんです。その言葉から、いろんな言葉を連想してパズルみたいに組み合わせていって書きました。
私は岡崎京子先生の漫画が好きなんですけど、岡崎先生の作品って、主人公の女の子がかわいいんだけど口が悪くて〈おまえ〉って言ったりするんですよね。そういうギャップがいいなと思ってて。それで、そういうギャップがあるムーディーな曲を作りたいなと思って書いた歌詞ですね」
#6「おまえはパラダイス」
— ロイ -RöE- (@RoEofficial_) September 23, 2021
元々18歳ぐらいの時に歌詞作っててそれをちょいと前に掘り起こしてギターで作った。編曲するにあたってイメージがあって大好きやった@nabowa にお願いして演奏もしてもらって夢が叶った曲😭わたしのパラダイスだ。バラードっていうのも珍しい。 pic.twitter.com/CtfDcTQVrl
山本「冒頭の〈わけ合う酸素と静寂〉っていう言葉がむちゃくちゃ綺麗やなって思って。そこからどんどんイメージが広がっていきますよね。その綺麗さと〈おまえ〉っていう言葉のコントラストも良いし、声とも合ってる。歌詞の意味はロイさんにしかわからないと思うんですけど、僕はすごくロマンチックに感じました。あと、あからさまじゃない表現を大切にされてる感じがします。僕も漫画をよく読むんですけど、ちょっと影のある漫画が好きで、そういう共通点も感じました。そういうことを感じながらフレーズを練っていきましたね」
ロイ「語感や字面を優先して歌詞を決めてるんですよね。だから、伝えたいことがあって書くっていうより、この言葉が使いたいから書く、そこからどういう思いを連想するか、という作り方で。それこそ恋愛ソングとかストレートなバラードで自分のことを書くのは恥ずかしくて(笑)」
川上「〈おまえはパラダイス〉っていうタイトルを聞いて僕が思い浮かべたのは向井秀徳さんなんです。向井さんも、〈貴様〉って言葉を使ったり、ロイさんが今言ったみたいに、まっすぐな歌詞を書かないイメージがあるので。
でもそう考えると、NABOWAもド直球な曲をあまり作りたがらないというか、そういう方向性にいったとしてもメンバーの誰かが恥ずかしくなってやめることが本当に多いんですよね。直球な曲が良い/悪いの話じゃなくて、バンドとしてそういうマインドっていうか。そういう面でも、ロイさんの曲は一筋縄ではいかないし、歌詞もすごく好きですね」
ロイ「ありがとうございます。ツイートみたいに簡潔でわかりやすい日本語の歌詞が恥ずかしくて苦手なんですよね(笑)。でも向井さんの歌詞はそうではなくてアートを感じるので、自分もそういう歌詞を書きたいなって思ってます」
山本「今話を聞いてて思ったのが、“キッチンへようこそ”の歌詞も決してわかりやすいわけじゃないということ。だから思考回路が似てるのかもしれないですね」
ロイ「〈♪おいしくてスパイシーな話もあるよ~〉って歌詞が特に好きです」
山本「ありがとうございます(笑)」