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ラーメンを曲として送り出すのは難しい

――ラーメンが食べたくなるエピソードですね。田中さんは、ご自身で監修されたラーメン本「Ra:」(2015年)の付録のCDで、“きみとラーメン”というラーメンソングを歌ってます。曽我部恵一さんをはじめ、岸田繁さん(くるり)、ミトさん(クラムボン)など豪華メンバーが参加していましたが、この曲はどういうイメージで作られたんですか?

田中「あれは曽我部に丸投げしました。ラーメンで曲を書いてくれって。『そんなの無理!』って一回断られたんですけど、もう一回頼んだら、その翌日くらいに弾き語りのデモが届いたんです」

――何か閃いたんですね。

田中「あれ、すごい曲ですよ。普通、歌詞に〈ラーメン〉って出てくるとちょっとコミカルに聴こえちゃうじゃないですか。でも、この曲はグッとくる歌詞になってる。すごく良い曲だなと思いました」

田中貴の2015年の書籍「Ra:」収録曲“きみとラーメン”
 

磯野くん「ラーメンを曲として送り出すのは、すごく難しいですよね。僕らの“R.M.T.T”も直接、ラーメンのことは言ってなくて、〈明日のチャンネーのことなんて忘れろよ〉っていう歌詞はニンニクを入れることだったり、〈ハードめにやってこう〉というのは麺硬めのことだったり」

田中「なるほどね」

――ラーメンソングといえば、矢野顕子さんの“ラーメン食べたい”(84年)という名曲がありますね。“きみとラーメン”のCDには田中さんたちによるカヴァーが収録されていて、清水ミチコさんが参加されていました。

田中「あの曲は歌詞もメロディーも独特ですよね。僕らがやったヴァージョンはそんなにアレンジしてないんですけど、曲のすごさが伝わるんじゃないかと思います。ダメもとで清水ミチコさんに声をかけたら参加して頂けて。『最初は矢野さんのモノマネはやらない』とおっしゃっていたんですけど、がっつりやってくれましたね(笑)」

――ちなみに、ほかに好きなラーメンソングってあります?

田中「う~ん、美空ひばりの“チャルメラそば屋”(1953年)とか。“チャルメラそば屋”を作曲したのはアメリカ人で、チャルメラの音とか入ってるんですよ」

磯野くん「へえ~」

――ロックでラーメンソングがあまりないことを思うと、お二人のラーメンソングは貴重ですね。あと、田中さんはアニメ「ラーメン大好き小泉さん」(2018年)のサントラも手掛けています。

田中「ディレクターの方と昔一緒に仕事したことがあって、僕がラーメン好きっていうのを覚えてくれていたんです。それで誘ってくれたんですよね。言っとくもんだなって思いました(笑)。

磯野くん「この連載もそうなんです。ラーメン好きだと言ってて良かった(笑)。僕、『ラーメン大好き小泉さん』は原作の漫画を読んでたんですよ。だからアニメも実写のドラマも観てました。この作品を通じて〈たいめいけん〉(洋食レストランなどを手掛ける外食企業)がラーメンを出しているのを知って。会社の近くなんで、いつか行ってみたいと思ってます」

田中「確かラーメンの立ち食いコーナーはなくなったんじゃないかな」

磯野くん「えーっ! そうなんですか?」

田中「でも、店のなかで食べられるらしいよ、僕は立ち食いコーナーでしか食べたことないけど。洋食を作るときの端材を、めちゃめちゃ煮込んでスープを作っているみたい」

磯野くん「行ってみたいなあ」

田中「アニメでは〈蒙古タンメン中本〉の白根さん(社長、代表取締役の白根誠)が、自分の役を自分で吹き込んでいるんですよ。ラーメン好きが喜ぶ演出になっていて」

磯野くん「そうなんですか。白根さん、すごく表に出てますよね(笑)」