イギリスがロックダウン中にスタートさせたプロジェクト〈Quarantine Sessions〉が日本限定CD化!
新型コロナウィルスの流行によりライヴ活動が制限され、新作リリースの延期も相次ぎ、当初はとても歓迎できる状況ではなかったが、そうした状況下でも自宅やスタジオ等プライヴェートな空間から作業風景やライヴの配信が行われたり、制作に打ち込み新曲を次々と発表するアーティストも現れたりと、皮肉にもアーティストをより身近に感じられる機会も増加した。
TOM MISCH 『Quarantine Sessions』 Beyond The Groove/BEAT(2021)
そのような環境から多くの良質な音楽や企画も誕生したが、その代表例となる筆頭が、昨年3月ロックダウンの最中にトム・ミッシュが開始したプロジェクト〈Quarantine Sessions〉で、時折ゲストも交え、自身のギターとループを巧みに操るシンプルな構成でカヴァーを中心に演奏を披露してきた。そしてこの話題の企画が遂に銀盤化が実現。元々ベッドルームで制作をしてしまうような才人だけに、簡素なセットでも聴きごたえは十分で、曲の完成過程を垣間見るような感覚もファンには嬉しいだろう。そのシンプルさは人々を陶酔させるトムのギターをダイレクトに届ける効果もあり、至福の時間も約束してくれるのだ。
感情が高ぶる恍惚のギターで彩るニルヴァーナ“Smells Like Teen Spirit”、繊細かつ切ないギターの響きが物憂げな印象をもたらすソランジュ“Cranes in the Sky”、温かみのあるギターが宙を舞うジェイムス・ブレイク“The Wilhelm Scream”の他、どの曲もこれぞトム・ミッシュと喝采したい甘く切ないアレンジ。マルコス・ヴァーリ“Parabéns”ではリモートでマルコス本人が参戦して新旧メロウ・サウンドの伝道師が邂逅。またスペイシーなシンセとトムの野太いギターで始まるオリジナル曲“Chain Reaction”では盟友ジョーダン・ラカイが囁くような歌唱で好アシスト。あまりに聴きどころの多い企画となっている。
このCDにはネット上で公開された全8曲に加え、未発表のジャクソン5“I Want You Back”の軽妙なファンク仕立てのカヴァーが収録されているのもポイントだ。