チックのアルバム『Now He Sings, Now He Sobs』を聴いた時、この音楽を導くプロセスにある仏教哲学が作用していたことに気づかせてくれたのは油井正一の書いたライナーノートだった。以来、チックの音楽がその時々にどんな美意識を表現するためのどんな方法を模索しているのか、彼の言葉にそのヒントを求める習慣がついた。ある時は彼の詩集だったり、内藤忠行が撮影したポートレイトに写った本、リターン・トゥ・フォエヴァーといったタイトルからも。今回はじめて、音楽するための知恵が体系的な形で表現された。具体的でシンプル。Make musicに〈音楽する〉という訳語を思いついた訳者に感謝。Let’s Make Music with this one!