チック・コリアとの宝物のようなやりとりを、メッセージとして次世代にも伝えたい
様々な設定でするなか、「ピアノのデュオは好きです。すごく楽しい」。新作 『レゾナンス』発表を前にして、小曽根真は笑顔とともにコメントを返してくる。
チック・コリアと小曽根真、名手二人のデュオ演奏の模様を収めた『レゾナンス』がついに発表される。ソースは、2016年5月に全国11公演を一緒に回ったツアーだ。チックは今年2月に逝去したが、その生前からアルバム発売が準備されており、二人の表現の多彩な襞を伝えんとするかのように2枚組でのリリースとなる。
そんな両者の最初の出会いは、小曽根がまだバークリー音大の学生だった82年。同大が企画したチック・コリア・トリオ公演の1部には学生バンドが出演し、そこでピアノを弾いたのが小曽根だった。そのリハの際、チックは初対面の彼に「自分が誰であろうと何であろうと、思ったことを言っていい」と伝えるとともに、演奏後は「素晴らしかった。自分の音楽を探しながら弾いていたね」と言ったそうだ。
好奇心旺盛なこと、ウィットに富んでいること、そして人に対する態度がとても開かれていることは、この二人が共通している部分であると思える。
「僕は、彼みたいになりたいと思っていました。どうしてそんなに確信を持って次の音を弾けるのかと、チックに聞いたこともありますが、結局、自分と向き合うってことがすごく大切ということでした」
『レゾナンス』は決まりごとなしに重なり合うフリー・インプロヴィゼーション曲、お互いのオリジナル曲、クラシック曲やスタンダードなど、様々なものを収録する。それらは全ツアーの演奏曲から生前のチックから委託され、小曽根が精査して選んだ。
「何も余分なものがない状態から魂が浮いているような所がチックの音楽です。僕は最大限のリスペクトと賞賛を込めて言いますが、チックは器用じゃないんですよ。器用に弾くことができない、いや器用に弾きたくない人間なんです。だからすごく正直で、チック・コリアっていうカラーがあるのです」
とにもかくにも、自由自在。『レゾナンス』には二人のピアノ愛と音楽人生の集積が渦を巻き、それらが澄んだ形でぽっかりと浮かび上がっている。
「もうこれは僕にとってはとてもとても大切な、僕たちにとって宝物のようなアルバムです。メッセージとして次の若い演奏家たちにも伝えていきたいと誇りに思えるものが、ここにできたと思います」
この秋、彼はチックにトリビュートする公演を複数することが決まっている。実は、本来は〈60、80〉という表題で、今年60歳と80歳の彼らが上原ひろみを迎え、3人でツアーをする予定が立てられていた。
LIVE INFORMATION
Tribute to Chick Corea 小曽根真 × 上原ひろみ
2021年9月22日(水)サントリーホール 大ホール
開演:19:00
2021年9月23日(木・祝)サントリーホール 大ホール
開演:14:00
2021年9月24日(金)愛知県芸術劇場コンサートホール
開演:19:00
2021年9月26日(日)兵庫県立芸術文化センター
開演:15:00
https://www.tributetochickcorea.com/
富士山河口湖ピアノフェスティバル2021
小曽根真 60TH Birthday Solo OZONE60 CLASSIC × JAZZ
2021年9月25日(土)山梨 河口湖ステラシアター
開場/開演:13:00/14:00
https://pianofes.stellartheater.jp/
OZONE 60 Special
2021年10月2日(土)福岡 北九州市立響ホール
開場/開演:14:00/15:00
ゲスト:RINA
http://www.kimfes.com/programTop/program/
小曽根真 featuring No Name Horses
トリビュート トゥ チック・コリア スペシャル
2021年10月20日(水)長野 まつもと市民芸術館
開演:19:00
https://www.mpac.jp/event/36687/
2021年10月22日(金)東京・渋谷 Bunkamuraオーチャードホール
開演:19:00
ゲスト:須川展也(サックス)/小柳美奈子(ピアノ)
https://www.bunkamura.co.jp/topics/orchard/4872.html