まったくの無名でありながら、昨年ヨーロッパにてデビューを果たした日本のバンドがいた。しかも、イタリアのメロディック・デス・メタル界の鬼才、エットレ・リゴッティディサルモニア・ムンディ)をプロデューサー兼エンジニアに、ゲスト・ヴォーカリストとして同バンドのクラウディオ・ラヴィナールを迎えるという、超強力布陣での制作である。そして、エットレが主宰するレーベル=コロナーからリリースされた彼らのファースト・アルバム『FASCINATING VIOLENCE』は、ワールドワイドな通販サイトのハード・ロック/ヘヴィー・メタル・ランキングで1位を獲得するという快挙を成し遂げたのだ。 

GYZE FASCINATING VIOLENCE Coroner/ビクター(2013)

 そんなセンセーショナルなデビューを飾ったのがGYZE(ギゼ)。Ryoji(ヴォーカル/ギター)、Shuji(ドラムス)の篠本兄弟が、札幌にて前身バンドを結成。その後、拠点を東京へ移し、Aruta (ベース/ヴォーカル)が加入して現編成となった、メロディック・デス・メタル・バンドだ。このたび、上述のアルバムの国内盤がリリースされることになったのだが、これが噂通りの超良盤! 1曲目の“DESIRE”から、圧倒的な攻撃力に満ちた全13曲が収録されている。

 超絶テクのギター、極太なベース、重く襲い掛かるドラム、グロウルし続けるヴォーカルなど、全パートがとことんブルータル。そして、それらを押しのけるかのように轟く、強烈なまでにロマンティックなギター・ソロ。これがとにかく気持ち良く、無条件で拳を突き上げたくなる昂揚感に満ちている。特に“TRIGGER OF THE ANGER”の獰猛さは、圧巻の一言だ。

 そんな破壊性を持ちながら、“DESPERATELY”や国内盤ボーナス・トラックの“FUTURE TERROR”などにおけるメロディーライン、そして各曲のギター・リフのキャッチーさはとにかく秀逸。どことなく日本的な旋律とも言える“REGAIN”は、メタラーに限定しないロック・キッズやV系が好きな人にもハマる一曲だろう。

 これまで〈メロデスかぁ……〉と、なんとなく気後れしていたリスナーも、この作品から聴きはじめてみるといいかもしれない。メロディックかつ激しいサウンドを好むならば、必ずや心を射抜かれる一枚に仕上がっている。なお、現在バンドはセカンド・アルバムを鋭意制作中とのこと。そちらの続報も待たれるところだ。

 

▼関連作品

ディサルモニア・ムンディの2009年作『The Isolation Game』(Coroner)
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