〈ギター・スリンガー〉の異名よろしく、弾丸並みのスピード感を湛えた豪快な速弾きや、刃物のように切れ味鋭いスライド・プレイで、半世紀に渡って聴き手の心をヒットし続けてきたジョニー・ウィンター。その男の辞書に〈迷い〉や〈怯み〉といった類いの言葉は存在しない。そう、いつだってアクセルは全開だ。突然の別れから1か月ちょっと、メソメソするのは彼の流儀に背くもの。ならば、いまこそフルヴォリュームであの轟音ブルースを浴びようぜ!

  俺は死ぬまで旅を続けて、ブルースを演奏し続けるぜ──かつてインタヴューでそう豪語していたジョニー・ウィンター。まさかその言葉通りに最期を迎えるとは。それもこんなに早く、こんなに突然に。

 7月16日、世界を駆け巡ってのツアー中に、滞在先のチューリッヒで客死。享年70。そういう運命だった、ブルース人生を全うした、と考えて納得しようとしても、やはり無念である。何しろ2011年4月、東日本大震災直後に奇跡の復活~初来日公演を成功させ、翌年には2度目の、今年4月には3度目の来日を果たしたばかりだ。ニュー・アルバム『Step Back』のリリースが決定した矢先の訃報。日本にだって、まだこれから何度も来てくれるのでは、と思っていたのだが……。

JOHNNY WINTER 『Step Back』 Megaforce/ソニー(2014)

  

 しかし、ジョニーを思い出すのに、そんなぐずぐずした感傷は似合わない。ジョニーの音楽は常にフルスロットル。ブルースでもロックンロールでも、持てる力を振り絞って全力疾走する。こう見せよう、こう聴かせようという計算や打算とは程遠く、あるのは、俺はこうするんだという意思、これがいいんだという確信のみ。彼のパフォーマンスは常に饒舌で、時には〈熱い〉を通り越して〈暑苦しさ〉を感じさせるほどだ。そのエネルギーの放出ぶりには、迷いもブレもまったくなく、聴き手はただ爽快になるのである。

 メジャー・デビュー時のキャッチコピー〈100万ドルのブルース・ギター〉はあまりにも有名。しかし、ジョニーを〈ブルースマン〉と呼ぶのには抵抗がある。強烈なロックンロールも演っていたから? いや、かといって〈ロックンローラー〉と呼ぶ気もしない。ブルースだろうが、ロックロールだろうが、区別なしでギターをブッ放し、唸るように歌ってきたのがジョニーだからである。その音楽には、大きく〈ジョニー・ウィンター〉というレッテルを貼るしかなかった。