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Jitwam “Brooklyn Ballers”

天野「インドで生まれ、オーストラリアで育ち、現在はブルックリンを拠点にしているジットワムは、ハウスミュージックの注目プロデューサーです。2010年代前半から楽曲を発表している彼は、2016年にムーディーマンが手がけたDJミックスの名物シリーズ『DJ-Kicks』に楽曲“Keepyourbusinesstoyourself”が収録されたことで名を広めました。その後、2作のアルバムをリリースしています」

田中「ジャジーなダウンビートからネオソウルまで楽曲に幅のある彼ですが、今回は黒いグルーヴが堪らないディープハウスを展開しています。推進力に溢れたビート、抒情的なロックギター、ソウルフルなコーラス、さらにパワフルなラップボーカルが重なって、めちゃくちゃかっこいい! これ、クラブでかかっていたら絶対にShazamするやつでしょう!」

 

Lala Lala “Memory”

天野「シカゴを拠点にしているリリー・ウェスト(Lillie West)のソロプロジェクト、ララ・ララ。彼女は音楽的にどんどんおもしろくなっていきますね。デビュー当初はドリームポップ/ローファイポップなサウンドでしたが、昨年リリースしたアルバム『I Want The Door To Open』では音響派/エスノポップ的なサウンドに接近。今年初の楽曲となるこの“Memory”は、エレクトロニカやアブストラクトを採り入れています」

田中「早回しの声ネタやアナログな質感のビートなど、2000年代のアンダーグラウンドラップっぽいなと思ったら、共同プロデュースにフォッグのアンドリュー・ブローダー(Andrew Broder)、さらにブローダーとはハイミーズ・ベースメントで活動をともにし、ホワイ?として人気を博したヨニ・ウルフ(Yoni Wolf)がいくつかの楽器の演奏で参加しているそう。ものすごく納得。2022年は、2000年代の音楽の掘り起こしが進むと言われていますが、アンチコン~レックスあたりのサウンドも再評価されるのでしょうか。このあたりの動向も含めて興味深い1曲でした」

 

The Range “Ricercar”

田中「レインジことジェイムズ・ヒントン(James Hinton)が、ニューシングル“Ricercar”をリリース。ブルックリンを拠点にするレインジは、米ペンシルバニア州ストラスバーグ出身のDJ/プロデューサーで、ボルチモアクラブから影響された作風で知られています。ファーストアルバム『Nonfiction』をドンキー・ピッチ(Donky Pitch)から2013年に、セカンドアルバム『Potential』をドミノから2016年にリリースしていて、いずれも高く評価されていますね」

天野「寡作ですが、ツアリスト(Tourist)とコラボレーションした2020年のシングル“Last”はちょっと話題になりましたね。そんなレインジが、ひさしぶりにニューアルバム『Mercury』を7月11日(金)にリリースするとのこと。こちらは同作からのセカンドシングル“Ricercar”ですが、曲名はバッハの伝記を読んでいて知った〈リチェルカーレ〉に由来するそうで、次に続く曲を準備する前奏曲のようなものを意味しているのだとか。DJプレミアに影響されてテイマー・ブラクストンの“My Man”(2017年)をサンプリングした、というエピソードもおもしろい。Bモア的な野卑さのあるアッパーなファーストシングル“Bicameral”もいいですし、新作が楽しみです」