Bialystocksのライブで思い知らされたボーカリスト甫木元空の魅力
『Tide Pool』リリース時のインタビューでも曲のイメージの源泉として話していた、ミュージカル映画の幕開けを思わせるSEが鳴り響いて、Bialystocksが出番を迎える。
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ステージには甫木元、菊池に加えて、サポートメンバーの朝田拓馬(ギター)、越智俊介(ベース)、小山田和正(ドラムス)、佐々木詩織(コーラス)、オオノリュータロー(コーラス)の総勢7人が並んだ。専任のコーラスが2名もいるところなど、ライブバンドとしてはかなり豪華な大所帯と言っていいだろう。ちなみに、この顔ぶれでのライブはこの日が初めてとのこと。
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Bialystocksといえば、ジャズやフォーク、カントリー、ロックなどが心地よい違和感を残したまま混ざりあう音楽性や、時折ドラスティックに跳躍する楽曲構成など、多面的なサウンドやソングライティングにフォーカスされがちだが、この日痛烈に思い知らされたのは甫木元のボーカリストとしての魅力だ。ほんのりハスキーな歌声でソフトなタッチの発声によって色気を放つ中低音域を歌っていたところから、絞り出すように甲高い声を放った時の輝きったらない。“Nevermore”でのラストサビに突入する際の疾走感や、“またたき”のミュージカル調に駆け上がっていくブレイク、さらには“I Don’t Have a Pen”でのシャウトなど、声の力に鳥肌が立つ場面が幾度もあった。それは、甫木元よりも少しハイトーンな声の菊池と2人のサポートによる重層的なコーラスワーク、そしてジャズとポップスの交点で活躍し高いスキルを持つ3人のプレイが、見事に歌を彩った成果でもあるだろう。
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Bialystocksというアートフォームが拡張する過程を記録する場
本編では、ファーストアルバムより以前に発表された“Emptyman”や“Winter”も含め、過去の楽曲を満遍なく演奏したが、アンコールではリリースされたばかりの新曲であるミディアムバラッド“差し色”を披露。甫木元の師・青山真治のように過ぎ去っていった人々を、ウェットになりすぎずに送り出す曲として朗らかに歌われたこの曲は、ドラマティックな起伏に揺さぶられた本編から一変し、ゆっくりと観客を日常に帰すような見事なエンドロールだった。
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“差し色”のアウトロが続く中、甫木元は最後に次のような言葉を残した。
「Bialystocksだけではなく、他の音楽・映画・演劇も含めて、その場所でしか経験できないことを、みんなで楽しんでいける日々になればいいなと思います」。
本編のMCでも、会場のWWWからほど近くにある、かつて制作した映画を上映したという映画館ユーロスペースについて触れられていた。前述のインタビューでも、ゆくゆくは音楽を映像と混ぜた表現やお互いの得意な領域をBialystocksに持ち込むことの可能性を語っていたが、この日の彼らのライブには、自身の音楽がさらなる広がりを獲得することや新たな交わりを得て次に繋がっていくことへの期待と執着、意志が強く感じられた。
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〈音楽交流紀〉は、Bialystocksというアートフォームが徐々に拡張していく過程を記録していくリアルな場所と時間になるのかもしれない。当日発表された、優河 with 魔法バンドをゲストに迎える〈音楽交流紀 2〉への期待も高まる。
SETLIST
■グソクムズ
1. 街に溶けて
2. すべからく通り雨
3. 駆け出したら夢の中
4. 夏が薫る
5. 夢が覚めたなら
6. 濡らした靴にイカす通り
7. 夏の知らせ
8. グッドナイト
9. 朝陽に染まる
■Bialystocks
1. Nevermore
2. 花束
3. コーラ・バナナ・ミュージック
4. またたき
5. All Too Soon
6. Emptyman
7. Winter
8. I Don’t Have a Pen
9. Over Now
10. 光のあと
11. 夜よ
ENCORE
1. 差し色
LIVE INFORMATION
Bialystocks Live 2022 “音楽交流紀 2”
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2022年7月9日(土)東京・渋谷 WWW
開場/開演:17:15/18:00
出演:Bialystocks
ゲスト:優河 with 魔法バンド
前売り:4,000円(税込/自由/ドリンク代別)
チケットURL:https://w.pia.jp/t/bialystocks-2022-2/
受付期間:2022年5月15日(日)23:59まで
YATSUI FESTIVAL! 2022
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2022年6月18日(土)東京・渋谷エリア
出演:Bialystocks/グソクムズ ほか
イープラス:https://eplus.jp/yatsuifes/
https://yatsui-fes.com/
RELEASE INFORMATION
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リリース日:2022年14月15日
配信リンク:https://lnk.to/sashiiro
TRACKLIST
1. 差し色
PROFILE: Bialystocks
2019年、ボーカル・甫木元空監督作品、青山真治プロデュースの映画「はるねこ」の生演奏上映をきっかけに結成。ソウルフルで伸びやかな歌声で歌われるフォーキーで温かみのあるメロディーと、ジャズをベースに持ちながら自由にジャンルを横断する楽器陣の組み合わせは、普遍的であると同時に先鋭的と評される。2020年、大型フェス(〈METROCK 2020〉)への出演が決定。2021年、ファーストアルバム『ビアリストックス』を発表。収録曲“I Don’t Have a Pen”はNTTドコモが展開する〈Quadratic Playground〉のウェブCMソングに選出されている。2作目の全国流通EPとなる『Tide Pool』には、すでに話題になっている先行シングル“光のあと”“All Too Soon”他全5曲を収録。
PROFILE: グソクムズ
東京・吉祥寺を中心に活動し、〈ネオ風街〉と称される4人組バンド。はっぴいえんどを始め、高田渡やシュガーベイブなどから色濃く影響を受けている。「POPEYE」2019年11月号の音楽特集にて紹介され、2020年8月にはTBSラジオにて冠番組「グソクムズのベリハピラジオ」が放送された。2014年にたなかえいぞを(ボーカル/ギター)と加藤祐樹(ギター)のフォークユニットとして結成。2016年に堀部祐介(ベース)が、2018年に中島雄士(ドラムス)が加入し、現在の体制となる。2020年に入り精力的に配信シングルのリリースを続け、2021年7月に“すべからく通り雨”を配信リリースすると、J-WAVE〈SONAR TRAX〉やTBSラジオ〈今週の推薦曲〉に選出され話題を呼び、その後同曲を7インチシングルでリリース。そして12月15日に待望のファーストアルバム『グソクムズ』をリリース。デビュー作にして〈第14回CDショップ大賞2022〉に入賞した。