台湾のインディーバンド、フォー・ペンズ(Four Pens 四枝筆)と韓国のピアニスト/シンガーのキムポム(Kimpomme 김뽐므)によるW来日ツアーが9月に開催される。
フォー・ペンズはソングライターのビボ(Bibo)とシンガーのカンダス(Candace)、キーボードのサニー(Sunny)によって2011年に結成。キングス・オブ・コンビニエンスやザ・バード・アンド・ザ・ビーを彷彿とさせる、美しくも切ないインディーポップサウンドが特徴だ。台湾と日本を拠点に活動しており、これまでにLampや君島大空、曽我部恵一など、数多くの日本人ミュージシャンと共演を果たしている。
対する、キムポム(本名:キム・ジヘ)は韓国ソウル出身でバンド、ハビー・ヌアージュ(Ravie Nuage 하비누아주)のボーカリスト/コンポーザーとしても活動。バンドは2013年にフジテレビで放送されていたオーディション番組「ASIA VERSUS」にも出演を果たしている他、自身は坂本龍一や映画「リリイ・シュシュのすべて」をフェイバリットに挙げるなど日本文化への理解も深い。静かながらもエモーショナルなその音楽は、青葉市子や寺尾紗穂にも通ずる世界観を感じさせる。
フォー・ペンズとキムポムはいずれも日本のレコードショップ/レーベル、fastcut recordsから日本独自の企画盤や日本盤をリリースしており、今回のW来日ツアーも同レーベルが企画と制作を行っている。そこで今回、フォー・ペンズとキムポムに加え、fastcut recordsのオーナー、森川氏も交えてインタビューを行い、3者の関係性や、両アーティストのこれまでの経歴や音楽性に迫る他、森川氏には彼らの魅力や、神戸、加古川、名古屋、東京を巡る今回のW来日ツアーの見どころについても語ってもらった。
fastcutはなぜフォー・ペンズとキムポムの作品をリリースした?
――fastcut recordsとしてフォー・ペンズをはじめてリリースしたのが2014年と聞きました。出会った経緯について教えてください。またアジアの音楽にはその頃から注目されていたのでしょうか?
森川「既にたくさんの特筆すべきアジアのインディーバンドが登場していた時期でした。最初にリリースしたのは日本のWallflowerというバンドです。そして、Wallflowerが台湾のバンド、マニック・シープ(Manic Sheep)と共演したのをきっかけに、台湾などアジアの現代進行形の音楽シーンについて少しずつ知るようになりました。
フォー・ペンズをはじめて知ったのは、YouTubeで公開されていた楽曲“New day and New me 明天的自己”の路上でのアコースティックセッション動画でした。オーガニックな演奏がシンプルなコード進行で高揚していく雰囲気は、ジャンルこそ違えど、プライマル・スクリームの“Movin’ On Up”をはじめて聴いた時のような衝撃を受けました。
それですぐにネットで彼らの連絡先を探して、コンタクトを取り、ビボと意気投合。彼らの初期のEPをまとめた日本編集盤『One Day』を2014年にリリースすることになります」
――最初、森川さんから連絡が来た時、フォー・ぺンズの皆さんはどう感じましたか?
サニー「その頃は大学生だったので、ライブがあれば演奏してといった形で、特に先のことまでは考えず、マイペースに活動していました。そんな中、森川さんから連絡が来た時は、日本からそんな連絡が来ることが信じられず、怪しんでしまいました(笑)。
日本での活動を見据えていたわけでもないのですが、このように森川さんとの関係が始まり、日本での活動も活発化していきました」
――キムポムさんについてもまずはネットで楽曲を聴いて、そこから連絡をとって、といった形だったんですか?
森川「そうですね、最近だとApple Musicなどのプレイリストで新しい音楽に出会うことが多いんです。それでキムポムの音楽を知って、調べてみたら、彼女のバンド、ハビー・ヌアージュの活動も知って。そこからソロになり今はこういった静かな音楽を作っているという、そういう活動歴もいいなと思って。それですぐに連絡したんです」
――キムポムさんの音楽を聴いた時に、森川さんが感じた魅力を教えてください。
森川「彼女のファーストEP『Dear J』を聴いた時、ボーカルを活かすべく、最小限に抑えられた音数や、往年のトリップホップをクロスオーバーさせたような立体的な音響、シガー・ロスにも影響を受けた幽玄なコーラス、そこに彼女の韓国語による歌が組み合わさって、どこにもない独自の音楽を作り出していると思いました」
――キムポムさんもいきなり森川さんから連絡が来て、驚きましたか?
キムポム「かなり驚きました(笑)」
森川「キムポムは少し繊細そうな感じもしたので、探り探りコミュニケーションを取ってましたね(笑)」