(上から)キムポム、フォー・ペンズ

台湾のインディーバンド、フォー・ペンズ(Four Pens 四枝筆)と韓国のピアニスト/シンガーのキムポム(Kimpomme 김뽐므)によるW来日ツアーが9月に開催される。

フォー・ペンズはソングライターのビボ(Bibo)とシンガーのカンダス(Candace)、キーボードのサニー(Sunny)によって2011年に結成。キングス・オブ・コンビニエンスやザ・バード・アンド・ザ・ビーを彷彿とさせる、美しくも切ないインディーポップサウンドが特徴だ。台湾と日本を拠点に活動しており、これまでにLampや君島大空、曽我部恵一など、数多くの日本人ミュージシャンと共演を果たしている。

対する、キムポム(本名:キム・ジヘ)は韓国ソウル出身でバンド、ハビー・ヌアージュ(Ravie Nuage 하비누아주)のボーカリスト/コンポーザーとしても活動。バンドは2013年にフジテレビで放送されていたオーディション番組「ASIA VERSUS」にも出演を果たしている他、自身は坂本龍一や映画「リリイ・シュシュのすべて」をフェイバリットに挙げるなど日本文化への理解も深い。静かながらもエモーショナルなその音楽は、青葉市子や寺尾紗穂にも通ずる世界観を感じさせる。

フォー・ペンズとキムポムはいずれも日本のレコードショップ/レーベル、fastcut recordsから日本独自の企画盤や日本盤をリリースしており、今回のW来日ツアーも同レーベルが企画と制作を行っている。そこで今回、フォー・ペンズとキムポムに加え、fastcut recordsのオーナー、森川氏も交えてインタビューを行い、3者の関係性や、両アーティストのこれまでの経歴や音楽性に迫る他、森川氏には彼らの魅力や、神戸、加古川、名古屋、東京を巡る今回のW来日ツアーの見どころについても語ってもらった。


 

フォー・ペンズ
2014年。日本のバンド、Wallflowerと台湾・台北の海辺のカフカ(海邊的卡夫卡)にて行ったライブの様子

fastcutはなぜフォー・ペンズとキムポムの作品をリリースした?

――fastcut recordsとしてフォー・ペンズをはじめてリリースしたのが2014年と聞きました。出会った経緯について教えてください。またアジアの音楽にはその頃から注目されていたのでしょうか?

森川「既にたくさんの特筆すべきアジアのインディーバンドが登場していた時期でした。最初にリリースしたのは日本のWallflowerというバンドです。そして、Wallflowerが台湾のバンド、マニック・シープ(Manic Sheep)と共演したのをきっかけに、台湾などアジアの現代進行形の音楽シーンについて少しずつ知るようになりました。

フォー・ペンズをはじめて知ったのは、YouTubeで公開されていた楽曲“New day and New me 明天的自己”の路上でのアコースティックセッション動画でした。オーガニックな演奏がシンプルなコード進行で高揚していく雰囲気は、ジャンルこそ違えど、プライマル・スクリームの“Movin’ On Up”をはじめて聴いた時のような衝撃を受けました。

フォー・ペンズの2013年の“New day and New me 明天的自己”のセッション動画

それですぐにネットで彼らの連絡先を探して、コンタクトを取り、ビボと意気投合。彼らの初期のEPをまとめた日本編集盤『One Day』を2014年にリリースすることになります」

――最初、森川さんから連絡が来た時、フォー・ぺンズの皆さんはどう感じましたか?

サニー「その頃は大学生だったので、ライブがあれば演奏してといった形で、特に先のことまでは考えず、マイペースに活動していました。そんな中、森川さんから連絡が来た時は、日本からそんな連絡が来ることが信じられず、怪しんでしまいました(笑)。

日本での活動を見据えていたわけでもないのですが、このように森川さんとの関係が始まり、日本での活動も活発化していきました」

――キムポムさんについてもまずはネットで楽曲を聴いて、そこから連絡をとって、といった形だったんですか?

森川「そうですね、最近だとApple Musicなどのプレイリストで新しい音楽に出会うことが多いんです。それでキムポムの音楽を知って、調べてみたら、彼女のバンド、ハビー・ヌアージュの活動も知って。そこからソロになり今はこういった静かな音楽を作っているという、そういう活動歴もいいなと思って。それですぐに連絡したんです」

――キムポムさんの音楽を聴いた時に、森川さんが感じた魅力を教えてください。

森川「彼女のファーストEP『Dear J』を聴いた時、ボーカルを活かすべく、最小限に抑えられた音数や、往年のトリップホップをクロスオーバーさせたような立体的な音響、シガー・ロスにも影響を受けた幽玄なコーラス、そこに彼女の韓国語による歌が組み合わさって、どこにもない独自の音楽を作り出していると思いました」

キムポムの2020年のEP『Dear J』収録曲“Dear J 여인에게”

――キムポムさんもいきなり森川さんから連絡が来て、驚きましたか?

キムポム「かなり驚きました(笑)」

森川「キムポムは少し繊細そうな感じもしたので、探り探りコミュニケーションを取ってましたね(笑)」

フォー・ぺンズ
2015年。日本ツアーで電車移動中

宇多田ヒカルからボン・イヴェール、原住民音楽までフォー・ぺンズのルーツ

――フォー・ぺンズについて言うと、個人的にはキングス・オブ・コンビニエンスやザ・バード・アンド・ザ・ビーなど、欧米のフォークポップ/インディーポップを彷彿とさせ、洋楽的な音楽性のバンドだと感じていました。実際はどんなアーティストを好んで聴いているんですか?

ビボ「その2組は私のお気に入りです。影響としてはやっぱり欧米のフォークミュージックが大きくて、すぐに思い浮かぶのは、ルーシー・ローズやボン・イヴェール、オブ・モンスターズ・アンド・メン、アンガス&ジュリア・ストーン、アイアン&ワインといったアーティストたちです。日本だとクラムボンやROTH BART BARONが大好きで、曽我部恵一さんの作品も愛聴してます」

カンダス「私の音楽の趣味は時期によって変わりますが、一度気に入るとその作品にどっぷりとハマることがよくあります。質問の中で言及されていた2組も夢中になっていた期間があり、何度も繰り返し聴いていました。それ以外だとmiaouやCornelius、トクマルシューゴが好きで、最近だとSTUTSにハマっています。

あとはチェン・チーチェン(陳綺貞)やジェイ・チョウ(周杰倫)、ウェイ・ルーシュエン(魏如萱)といった台湾のアーティストや、スフィアン・スティーヴンス、リトル・ジョイ、ファイスト、The xxなど、欧米のフォークミュージックやエレクトロニックミュージックも好きですね」

サニー「私はクールでカッコイイ女性が大好きで、台湾だとティジー・バック(Tizzy Bac)やサンデー・チャン(陳珊妮)、海外ではビリー・アイリッシュやテイラー・スウィフト、宇多田ヒカルなどがお気に入りです。彼女たちの音楽に夢中になっていた時期があります。一つのことに集中して、それを完璧に仕上げるような、輝いている人々が好きなんです。

台湾のシンガーソングライター、イージー・シェン(Easy Shen)も大好きで、彼からはしばらくの間、ジャズピアノを学んでいました。彼は音楽や人生に関して多くのアドバイスをしてくれる、私の恩師です。台湾原住民の音楽、例えばスミン(Suming 舒米恩)やイリー・カオルー(以莉高露)も好きです。

2016年に神戸に住んでいた時、周りの友人の影響でテニスコーツやCornelius、青葉市子、cero、サニーデイ・サービスなどが好きになりました。今でもテニスコーツを聴くと、その頃のことが思い出されます。本当に不思議な感覚です」

――2021年にリリースされたフォー・ぺンズ待望のファーストアルバム『And I believe in eternal 我也相信了永久』からは、今3人が言及したようなアーティストたちの影響が感じ取られます。fastcut recordsでも本作が販売されていますが、本作の魅力について森川さんの考えを聞かせてください。

森川「レーベルで最初にリリースしたザ・スターレッツ(The Starlets)やスウェーデンのクリアキン(Kuryakin)も彷彿とさせて、有名なところでは、ベル・アンド・セバスチャンやカメラ・オブスキュラなどの初期の作品、あとはアイアン&ワインのようなシンガーソングライターにも通じるテイストを感じており、台湾フォークの傑作となったのかと思っています。

2019年の来日ツアーの時、ビボとアルバムの制作や方向性について話したことがありました。彼は、アルバムの中で一つの大きな物語を完成させたいと話していて、ずっと〈構成が難しい〉と話していたのを覚えています。

結果的には、ビボの内面性が大きく反映された、儚くも美しい映画のような仕上がりとなりました。メンバーが30代に入り、若さを失いつつも、その先に見えたアーティストとしての風景が表現されています。アルバムの物語に秘められた人生の短さや、尊さ、愛するものを失うこと、希望など、さまざまな感情が込められているように思えます」

フォー・ペンズの2021年作『And I believe in eternal 我也相信了永久』

 

キムポム
自宅スタジオで撮影されたライブクリップより

K-Popだけではない韓国インディーやフォークのシーン

――フォー・ペンズが聴いている、あるいは影響を受けたアーティストの話によって、その音楽性もより理解できたかと思います。キムポムさんのプロフィールには影響を受けたアーティストとしてシガー・ロスやサラ・マクラクラン、坂本龍一などの名前が挙げられていましたが、韓国で影響を受けたアーティストはいますか?

キムポム「韓国で影響を受けたアーティストはたくさんいますが、代表的なところだとチョ・ドンイク(조동익)、キム・ユンア(김윤아)、イ・ソラ(이소라)を挙げたいと思います。 特にチョ・ドンイク(jo dongik 조동익)さんの『憧れ(동경)』と『blue pillow』は人生で一番好きなアルバムです」

チョ・ドンイクの2020年作『blue pillow』収録曲“blue pillow 푸른베개”

――組んでいるバンド、ハビー・ヌアージュは2013年にフジテレビで放送されていたオーディション番組「ASIA VERSUS」にも出演するなど、国内外での注目度も高かった。そんな中でも、ソロ活動を始めた理由はあるのでしょうか?

キムポム「色々なサウンドを模索したかったですし、1人で作業するのにも慣れているので、バンドとは別の音楽がやりたいと思ったんです」

ハビー・ヌアージュの2013年のEP『겨울노래』収録曲“고백”

――キムポムさんの音楽は〈コンテンポラリーフォーク〉などと表現されることもありますが、実際そういった形容詞はしっくりきていますか?

キムポム「自分の作りたい音楽を作っているだけで、ジャンルは分かりませんね。けどフォークではないと思います(笑)。ただ、韓国では紹介される時、ジャンルの選択肢が少なく、〈フォーク〉に分類されてしまうことは多いです」

――韓国でも日本同様、フォークミュージシックが隆盛を極めたような時代もあったのでしょうか?

キムポム「韓国にもフォークミュージックはたくさんありましたし、80年代から90年代にかけて隆盛を極めました。以前は私よりも上の世代の音楽だったのですが、最近は若い世代もその頃のフォークミュージックを聴いているようです」

――正直な話、最近は〈韓国の音楽〉と聞いて、K-Popをイメージしない人はいないと思います。とはいえ、韓国にももちろん、ロックやヒップホップ、R&B、ジャズ、ワールドミュージックなどさまざまなジャンルの音楽があります。〈K-Popだけではないよ〉といった気持ちもあるのでしょうか?

キムポム「K-Popが私たちの活動の妨げとなるようなことはないですが、他と比べて〈大きすぎる〉という感覚はありますね。なので、むしろ今回、日本ツアーの機会が巡ってきたことを光栄に思います。韓国音楽の違った側面を知ってもらえますし」

――森川さんにもそういった気持ちはあるのでしょうか?

森川「そうですね、最近の韓国ではK-Pop以外の音楽も盛り上がりを見せていて、ヒョゴ(HYUKOH)やアドイ(ADOY)、セソニョン(SE SO NEON)といったバンドや、ワールドワイドに活躍し、日本でも人気のDJ、ペギー・グー(Peggy Gou)などが頭角を現しています。しかしながら、キムポムの音楽と出会い、静かでいてエモーショナルな音楽に惹かれるようになりました。

彼女と同じくハビー・ヌアージで活動していたチョン・ジンヒ(Jeon Jin Hee 전진희)、素晴らしい歌声の男性シンガーソングライター、キム・ヒョンチャン(Kim Hyunchang 김현창)、そしてfastcut recordsから12月にリリース予定の女性アーティスト、ホ・フェギョン(Heo Hoy Kyung 허회경)など、今年だけでもたくさんのアーティストを見つけていて、日本でも少しずつ紹介していけたらと思っています」

ホ・ホイギョンの2022年のシングル“Baby, 나를(Hug Me Tight)””

チョン・ジンヒの2023年作『아무도 모르게(Without Anyone Knowing)』収録曲“우리는 보고 싶다 말하지 못하고(with 이영훈)”

キム・ヒョンチャンの2022年作『long to be the garden』収録曲“Sunny(살아내기)”

キム・ヒョンチャンの2020年作『내 파랑은 항상 검정에 무너져왔어요(My Blue Has Always Been Shattered By The Night)』収録曲“아침만 남겨주고(Nothing But Morning)”
キムポム
ファンミーティングの様子

とても近くてとても違う国、日本

――フォー・ペンズは森川さんとの出会いによって、予期せず日本との繋がりが生まれた訳ですが、日本が活動の〈拠点〉にまでなったのはすごいですね。

ビボ「日本でのツアーやアルバムリリースが多かった、というのはありますね。そして、日本で受け取るたくさんの愛が私たちを日本に向かわせるのだとも思います。

ただ、森川さんや日本のファンたちが、中国語で歌う私たちを気に入ってくれるのは、ありがたいことであると同時に、不思議でもあります」

カンダス「日本での反響が増えることが、拠点とし続ける原動力でもあります。人は理解してくれる人のために生きていると思うし、バンドもそうなのかもしれませんね(笑)」

サニー「森川さんはもちろん、日本での初ツアー時やワーホリ中に知り合った人々のおかげで、日本を拠点に活動できています。この数年で私の日本語能力も向上し、森川さんとはビジネスはもちろん、雑談までするようになりました。

私たちは日本のマーケットを特にターゲットとして意識しているわけではありません。ただ、日本には私たちを信じてくれる人たちがいるんです」

――キムポムさんは日本での活動を視野に入れていたりしましたか?

キムポム「念頭に置いていたわけでも、計画していたわけでもないのですが、個人的に日本の文化が大好きなので、ずっと願っていたことでした。まずは、日本のリスナーに会えることへの期待が大きいですね。とても近い国でありながら、とても違うとも感じる日本で、自分の音楽をどう受け止めてもらえるか気になります。そして、日本の良い、若手のミュージシャンを知りたいですね」

 

フォー・ペンズ
2017年。兵庫・加古川で行われたfastcut recordsの10周年記念イベント〈Overdose of Joy〉にて

春と夏のフォー・ペンズ、秋と冬のキムポム、2組のハーモニー

――フォー・ペンズとキムポムさんの音楽は、静かながらもブレない芯を感じさせます。今回ツアーを組むのにあたって、日本のアーティストとの共演ではなく、このような台韓のカップリングになった理由についても教えてください。

森川「コロナ禍の影響で、フォー・ペンズのアルバムがリリースされた2021年は、来日公演ができなかったので、ミュージシャンの入国制限が解除されるのを待っていました。

今年に入り、キムポムをリリースすることになり、この2組でツアーをすれば、お互いの今後の創作やパフォーマンスに良い効果を与えてくれると思ったんです」

――両者によるコラボレーションも進んでいるんですよね?

森川「はい、キムポムが作曲した英詞のコラボレーション曲“Another Season”はとても素晴らしい仕上がりとなりそうです。キムポムらしい存在感のある歌とピアノに、フォー・ペンズが会心のアレンジを施してくれています。この曲がツアー全体のハイライトになり、良い来日ツアーになると今から期待しています」

Fastcut Records · Kimpomme feat Four Pens 四枝筆 - Another Season
キムポム feat. フォー・ペンズのコラボレーションソング“Another Season”

――今回のツアーの見どころは何でしょう?

森川「キムポムがはじめてフォー・ペンズの曲を聴いた時、〈フォー・ペンズの音楽は春や夏のようで、私の音楽は秋や冬のよう〉と話しました。違う季節感を持ったアーティストでありながら、同じように静かな音楽を奏でています。耳を澄ませて、2組の静かでいて、エモーショナルな演奏を聴き、その季節感を感じ取ってもらいたいですね」

――今回のツアーを組んだのは森川さんですが、フォー・ペンズとキムポムさんが音楽的に共感し合えるからこそ実現したことだとも思います。まず、フォー・ペンズはキムポムさんにどのような印象を抱きましたか?

ビボ「キムポムの曲を聴いた後、私たちの間につながりがあるのを強く感じました。私が共感する部分は、優しく悲しみの感情を伝えるところだと思います。感情を激しく伝えるのではなく、ゆっくりと伝える方法なんです」

サニー「キムポムとはじめてのオンラインミーティングが終わった時、皆が去り、画面に私と彼女だけが残ったんです。そこで、〈もう少し話そう〉となり、言語の壁があったにも関わらず、翻訳ソフトを使い、15分ほど話しました。彼女も私たちと同様、善良な人であることを強く感じました!」

――キムポムさんフォー・ペンズに対してどのような印象を抱きましたか?

キムポム「彼らの音楽からは日差しのようなものを感じました。ただ明るいというよりは、どこか寂しさが深く染み込んだ日差しというか。暗い部屋でうずくまった後、仕方なく外に出ると、暖かい日差しが顔を照らす時のあの感覚。そして〈チーム〉という感じが強かった。一緒にいるということの調和。彼らのハーモニーが好きです」

キムポム
ソウル・弘大にあるGAONでのソロコンサート〈Atomosphere〉の様子

自分の音楽は流れていってほしい

――フォー・ペンズとキムポムさんの音楽は美しくも、どこか切なさや悲しさのようなものが感じられますし、そこに共鳴していることが分かりました。特に歌詞にはその感覚が顕著に表れているのかなと。例えばフォー・ペンズはアルバム『And I believe in eternal 我也相信了永久』の収録曲“Love is the kindest curse 愛是最善良的詛咒”で愛を呪いに例えていますし、キムポムさんも楽曲“나무”で愛によって傷つく辛さを歌っています。音楽とのいい意味でのギャップがあり、聴く方としてはハっとさせられます。

ビボ「私たちの音楽は、じっくりと時間をかけて聴き、理解する必要があります。中には真剣に私たちの音楽を聴いてくれるファンもいて、非常に感動的な反応を受け取ったこともあります。歌詞のインスピレーションは私の日常生活や感情から来ています。これらはすべて、私が実際に経験して考えたことです」

フォー・ペンズの2021年作『And I believe in eternal 我也相信了永久』収録曲“Love is the kindest curse 愛是最善良的詛咒”

――キムポムさんの歌詞は、日本語の対訳を読んだ限りの印象としては、言葉数が少なく、受け手が自由に想像を膨らませる余地があるというか、〈less is more〉な美意識も感じました。

キムポム「私は自分自身のことを、言葉をうまく組み立てるのが苦手な人間だと感じています。自分の気持ちを言えないことが多いので、メモを取る習慣があるんです。そして、口で読みながら推敲を楽しみます。本当に言いたいことを音楽で伝えている感じですね。言葉は多ければ多いほど力を失っていくものだと思います」

キムポムの2022年のシングル“나무 (Love Poem)”

――また、キムポムさんの楽曲は音数が抑えられていて、声と言葉が際立つよう、細心の注意を払ってミックスされているようにも感じました。アンビエント的な要素もありつつ、歌には存在感もあり、そのバランスの妙もあるのかなと。サウンドメイクの面でどんなこだわりがありますか?

キムポム「実は自分の音楽が人の耳に留まることを望んでいないんです。流れていってほしい。だから、声を楽器のように乗せるようにしているんです。そして、その曲にふさわしいミニマルなサウンドを実現しようと努力しています」

――キムポムさんの拠点はソウルという大都会です。けど不思議とその音楽からイメージする世界は木や空、動物など自然の風景だったりして、それも面白いなと。都会特有の孤独感とか寂しさが表現されていたりもするのでしょうか?

キムポム「ソウルはいつも人が多くて騒がしくて、心の中に怒りがあるので、その気持ちを音楽として美しく表現したいと思っているんです(笑)。

〈木〉や〈川〉といった自然の存在は大きく変化しないので、それがインスピレーションにもなっています。なのでいつも公園に行ったり、歩いたり、散歩したりしてます」

 

フォー・ペンズ
​2019年。ホン・アンニ (洪安妮)と愛知・名古屋のTT” a Little Knowledge Storeにて

2組の音楽性が引き立つ会場を回るツアー

――今後は日本のアーティストとのコラボレーションも期待できるのかと感じます。フォー・ペンズは先月、haruka nakamuraさんによる楽曲“Summer Tragedy 夏季悲歌”の素晴らしいリミックスもデジタルリリースされました。これはどう実現したんですか?

森川「2014年に、フォー・ペンズとWallflowerが台北の海辺のカフカ(海邊的卡夫卡)で共演した時、本楽曲をはじめて聴き、彼らの魅力が引き立った名曲だと感じました。

そして演奏中、haruka nakamuraさんの楽曲“Lamp feat. Nujabes”のビートが頭の中に浮かんだんです。その後、シングル曲として“Summer Tragedy 夏季悲歌”のレコーディングを進めていくうちに、haruka nakamuraさんにリミックスをお願いしたいと思い、オファーを出したところ実現しました」

フォー・ペンズの2016年のシングル“Summer Tragedy 夏季悲歌”

フォー・ペンズの2023年のシングル“夏季悲歌 (haruka nakamura Remix)” 

haruka nakamuraの2013年作『MELODICA』収録曲“Lamp feat. Nujabes” 

――キムポムさんは今後、日本あるいは海外のアーティストとのコラボレーションは考えていますか?

キムポム「その願望はとても強いですね。日本でやりたいことの1つが、コラボするアーティストを見つけることです。日本には良いフォークミュージシャンがたくさんいると聞きました」

――キムポムさんも今回の来日ツアーを契機に、日本のアーティストとのコラボレーションが実現するといいですね。今回のツアーは、フォー・ペンズとキムポムさんの音楽性や世界観を知ることで、演奏もさらに楽しめそうです。

森川「そうですね、今回のツアーでは音楽を楽しんでいただきたいのはもちろん、会場にもこだわっていて、彼らの音楽性が引き立つ場所を選びました。明治〜大正時代に建築されたコロニアルスタイルの洋館〈旧グッゲンハイム邸〉(兵庫)や、ピアノアトリエの〈Fluss〉(東京)など、静かな音楽に耳を澄ませるのに最適の雰囲気を提供しています。是非、足を運んでいただきたいです!」

キムポムの2022年のライブ動画

フォー・ペンズの2018年の旧グッゲンハイム邸でのライブ動画

 


LIVE INFORMATION
Kimpomme & Four Pens Japan Tour 2023

■兵庫・神戸公演
2023年9月3日(日)兵庫・神戸 旧グッゲンハイム邸
開場/開演:19:00/19:30
出演:Four Pens 四枝筆/Kimpomme (Piano)
前売り/当日:5,000円/ 6,000円(いずれもドリンク代別)

■兵庫・加古川公演 ※中止
2023年9月5日(火)兵庫・加古川 ON THE HILL
出演:Four Pens 四枝筆/Kimpomme (Electric Piano + VST)
開場/開演:18:30/19:00
前売り/当日:4,500円/5,500円(いずれもドリンク代別)

■名古屋公演
2023年9月7日(木)愛知・名古屋 Live lounge Vio
開場/開演:18:30/19:00
出演:Four Pens 四枝筆/Kimpomme (Electric Piano + VST)
前売り/当日:5,000円/6,000円(いずれもドリンク代別)

■東京・渋谷公演 *配信チケットあり
2023年9月8日(金)東京・代官山 NOMAD
開場/開演:18:30/19:00
出演:Four Pens 四枝筆/Kimpomme (Electric Piano + VST)
前売り/当日:5,000円/ 6,000円(いずれもドリンク代別)
配信チケット予約:3,000円(https://twitcasting.tv/dy_nomad/shopcart/244831

■東京・新宿公演 *配信チケットあり
2023年9月9日(土)東京・新宿 真昼の月 夜の太陽
開場/開演:18:30/19:00
出演:Four Pens 四枝筆/Kimpomme (Piano)
前売り/当日:5,000円/ 6,000円(いずれもドリンク代別)
配信チケット予約:3,000円(https://twitcasting.tv/mahiru20101106/shopcart/244914

■東京・世田谷公演
2023年9月10日(日)東京・尾山台 Fluss
開場/開演:18:30/19:00
出演:Four Pens 四枝筆/Kimpomme (Piano)
前売り/当日5,000円/6,000円(ドリンク持ち込み可)

企画・制作・招聘:fastcut records
https://fastcut.jp/feature/kimpomme-four-pens-japan-tour-2023/

 

■2023年8月30日追記
2023年9月5日(火)に兵庫・加古川のON THE HILLで開催される予定だった公演は中止になりました。また、9月3日(日)に兵庫・神戸のグッゲンハイム邸で開催される公演の時間が変更されました。〈開場/開演:18:30/19:00〉としていましたが、〈開場/開演:19:00/19:30〉に変更になります。さらに、韓国のアーティストの表記について、正しくは以下のようであることが判明したので、こちらも修正してくださいとのことです。本文でHeo Hoy Kyung 허회경のカタカナ表記を〈ホ・ホイギョン〉としていましたが、正しくは〈ホ・フェギョン〉でした。お詫びして訂正させていただきます。 *Mikiki編集部

 


PROFILE: KIMPOMME 김뽐므
本名、キム・ジヘ。韓国・ソウル出身のシンガーソングライター。ソロ活動以前はバンド、ハビー・ヌアジュのボーカリスト/コンポーザーとして活動。2020年にEP『여인에게 女性に』をリリースしソロキャリアをスタート。着実にリリースを重ねている。2023年5月にfastcut recordsより日本独自企画のアナログレコード『안개속에서 霧の中で』をリリース。今回が初めての来日公演となる。

PROFILE: FOUR PENS 四枝筆
日本のインディーミュージックファンにもその名を知られる台湾のインディーバンド、フォー・ペンズ。2011年春、ソングライターのビボを中心に、シンガーのカンダス、キーボードのサニーの3名で結成。バンド名の四枝筆(Four Pens)の由来は、メンバーの名前の組み合わせによるもの。台湾と日本を主な活躍の舞台として幾度も日本ツアーを敢行し、Ann Sally、haruka nakamura、Lamp、miaou、市川和則(羊毛とおはな)、君島大空、曽我部恵一ら優れた日本のミュージシャンとの共演も果たしている。また、インディーレーベル、fastcut recordsより日本盤CDやレコードのリリースもおこなっている。彼らは欧米のインディーフォークと日本のインディーポップが融合した独特なサウンドを紡ぎ出す。日常における葛藤や回顧を描いた曲が多く、透き通った演奏と暖かい歌詞、時には躍動的なピアノ、またある時にはエレクトロニックサウンドも少し交えた様々なフォー・ペンズの顔を映し出すが、そのどれもが聴く者をそよ風の様に優しく包み込む。

PROFILE: fastcut records
兵庫県加古川市のレコードストア、インディペンデント・レーベル。2010年にザ・ペインズ・オブ・ビーイング・ピュア・アット・ハーチのファーストアルバムが第2回CDショップ大賞洋楽部門の準グランプリを受賞。永く聴き続けていくことができるタイムレスなメロディを持ったアーティストの作品をリリースしている。また海外アーティストの招聘企画も定期的に行っている。