音楽と映像、2つのアートをライブで混ぜ合わせる

冒頭から全くMCを挟まず、これまで発表してきた全曲を披露する勢いでライブは進行していく。その間には計3回、映像作品を挟むことでMCの代わりとなる役割を果たしていたのも、これまでのライブとの大きな違いだ。

1度目は“光のあと”が終わったタイミングで、『はだかのゆめ』のワンシーンが流れ、主人公ノロの「生きているものは死んでいて 、死んでいるものは生きているようだ」というセリフと、焚き火の音が会場を漂う。そして静かに“フーテン”の演奏が始まっていく。2度目は“ごはん”と“灯台”の間に電車が走り去る映像が流れ、“灯台”の演奏が始まってもしばらくバンドに映像が投影されたままだった。

どちらも場面をシームレスに切り替えるような、なんとも心地よい演出である。これまでのライブでは、2人の素朴な人柄が伝わってくるたどたどしいMCもまた魅力だったが、音楽と映像をライブで混ぜ合わせるための新たな試みのように感じた。結果として甫木元がこれまで体験してきたことや沸き上がった感情から、生と死の距離について考えを巡らせていくという、2つのアートフォームに共通したテーマが伝わってきたようにも思える。

 

華々しいのにどこかさりげないメジャーデビューの発表

怒涛の16曲を披露して本編が終了。アンコールの拍手に応えるように、スクリーンが降り、3回目の映像が流れる。そこで告知されたのが、ポニーキャニオン内〈IRORI Records〉からのメジャーデビューと、11月30日にファーストアルバムリリース、そして2023年に東名阪を周る初ツアーの開催という盛りだくさんの発表だった。

この日一番の拍手が沸き起こると甫木元と菊池の2人だけで再登場し、アルバムに収録される予定の新曲“日々の手触り”を初披露。ステージ背後の暗幕が開き、東京のオフィス街の夜景をバックに菊池のピアノと甫木元の歌だけがやさしく鳴り響いている。華々しいのにどこかさりげないというところもBialystocksらしいメジャーデビュー発表だった。

ここで初めて2人が口を開き、この日を迎えられたことの感謝を2人が述べる。菊池が言葉数少なく、すぐさまメンバー紹介に移行してしまう拙さもなんだか愛おしい場面だった。

そして最後に、甫木元の父親が亡くなった時に作られた、Bialystocksの初めての曲であるという“夜よ”を演奏。MCで甫木元は「別れや旅立ちを歌っているけれど、明るく〈今後ともよろしくお願いします〉と大切な人に伝える曲です」と前置きしており、何度も〈さよなら〉〈Say goodbye〉と歌われるところも、この夜を締めくくりとしてぴったりだった。

その後、メンバーが退場していき、ステージには甫木元だけが残る。物販の案内と、改めて映画も公開される旨をぎこちなく伝えてそそくさと去り、終演となった。

 

第一章完結を告げる集大成的ライブ

『Tide Pool』リリース時のインタビューで甫木元が「ゆくゆくは自分の映像と混ぜた表現をしてみたり、それぞれの領域をこのバンドに持ち込むこともできれば」と発言していたことを、終演後に思い返していた。この日のライブでの幕間映像や、「はだかのゆめ」の音楽をBialystocksで担当するなど、早くも映像と音楽は共鳴し始めているじゃないか。全て出し切り、次のステップに早くも着手し始めている。そんなBialystocksの第一章完結を告げるような集大成のライブだった。

 


SETLIST
1. All Too Soon
2. 花束
3. またたき
4. Emptyman
5. 光のあと
6. フーテン
7. コーラ・バナナ・ミュージック
8. あいもかわらず
9. Winter
10. ごはん
11. 灯台
12. Thank You
13. I Don’t Have a Pen
14. Over Now
15. 差し色
16. Nevermore

ENCORE
1. 日々の手触り
2. 夜よ

 


RELEASE INFORMATION

Bialystocks 『タイトル未定』 IRORI/ポニーキャニオン(2022)

リリース日:2022年11月30日(水)
タワーレコード特典:音源ダウンロードコード付きポストカードTYPE-A

■初回限定盤(CD+Blu-ray)
品番:PCCA-06165
価格:4,950円(税込)

■通常盤(CD Only)
品番:PCCA-06166
価格:2,970円(税込)

TRACKLIST
CD
後日発表

Blu-ray ※初回限定盤のみ付属
後日発表

 

Bialystocks 『日々の手触り』 Bialystocks(2022)

リリース日:10月5日
配信リンク:https://lnk.to/hibinotezawari

TRACKLIST
1. 日々の手触り

 

MOVIE INFORMATION
はだかのゆめ

■ストーリー
四国山脈に隔たれた高知県。いまだダムのない暴れ川の異名をもつ四万十川。太平洋に流れ出るその川の流れと共に、生きてるものが死んでいて、死んでるものが生きてるかのような土地で老いた祖父と余命をそこで暮らす決意をした母、それに寄り添う息子、ノロ。嘘が真で闊歩する現世を憂うノロマなノロは近づく母の死を受け入れられずに死者のように徘徊している。そのノロを見守るように寄り添うおんちゃん、彼もまたこの世のものではないのかもしれない。息子を思う母、母を思う息子がお互いの距離を、測り直していく、母と子の生死の話。

監督・脚本・編集:甫木元空
出演:青木柚/唯野未歩子/前野健太/甫木元尊英
プロデューサー:仙頭武則/飯塚香織
撮影:米倉伸
照明:平谷里紗
現場録音:川上拓也
音響:菊池信之
助監督:滝野弘仁 
音楽:Bialystocks
製作:ポニーキャニオン
配給:boid/VOICE OF GHOST
2022年/日本/カラー/DCP/アメリカンビスタ/5.1ch/59分
©PONY CANYON
https://hadakanoyume.com/

2022年11月25日(金)より東京・渋谷シネクイントほか全国順次公開

 

LIVE INFORMATION
Bialystocks Tour 2023

2023年1月21日(土)大阪・梅田 Shangri-La
2023年1月22日(日)愛知・名古屋 TOKUZO
2023年2月18日(土)東京・恵比寿 LIQUIDROOM

■チケット
オフィシャル1次先行受付中:https://w.pia.jp/t/bialystocks-oat/
受付期間:2022年10月2日(日)20:00〜2022年10月10日(月・祝)23:59

 


PROFILE: Bialystocks
2019年、ボーカル・甫木元空監督作品、青山真治プロデュースの映画「はるねこ」の生演奏上映をきっかけに結成。ソウルフルで伸びやかな歌声で歌われるフォーキーで温かみのあるメロディーと、ジャズをベースに持ちながら自由にジャンルを横断する楽器陣の組み合わせは、普遍的であると同時に先鋭的と評される。2020年、大型フェス(〈METROCK 2020〉)への出演が決定。2021年、ファーストアルバム『ビアリストックス』を発表。収録曲“I Don’t Have a Pen”はNTTドコモが展開する〈Quadratic Playground〉のウェブCMソングに選出されている。2022年、2作目の全国流通EPとなる『Tide Pool』を発表。同作は、話題になった先行シングル“光のあと”“All Too Soon”他全5曲を収録。同年4月には“差し色”がテレビ東京ドラマ25「先生のおとりよせ」のエンディングテーマに起用され、初のドラマ主題歌を担当した。同年10月に初のワンマンライブ〈第一回単独公演 於:大手町三井ホール〉を開催。