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©Harry Borden

――本作はダブの魅力を多くのリスナーに伝える作品になっていると思います。

エイドリアン「だといいな。ただ俺としては〈ダブ〉という言葉はやたら安易に使われていて、いまやちょっと陳腐になってしまっている気がするんだよね。ダブの技術を使って何かを作ることは、単にダブ・アルバムを1枚作る、ということ以上の作業なんだ。それは大掛かりな再編集を伴うものだし、さまざまな流派を起源とするテクニックもたくさん用いる。この作品は〈実に美しいリワーク〉という印象かな」

ブリット「鋭い指摘だと思う。ひとつの歌が持ちえる異なるアイデンティティーの数々――それに俺は魅了されていて、常に興味を抱いてきた。だから、自分たちのアルバムをこうして正真正銘の作家に再解釈してもらえて、本当にゾクゾクする体験だったよ」

エイドリアン「ありがとう。『Lucifer On The Sofa』は、一日中大音量で流してエンジョイできるアルバムだったよね。でも、夜が更けるとそれが『LuciferOn The Moon』に変容しているわけ」

ブリット「ハッハッハッ(笑)!」

エイドリアン「だから、朝と夜の顔を持つ2作というかね。スプーンのファンとOn-Uのリスナー両方に、本作をじっくり聴いてもらえたらいいなと思う。俺たちはとても満足しているよ。まさに〈魔法のコラボレーション〉だったんだ」

スプーンの2022年作『Lucifer On The Sofa』(Matador/BEAT)

スプーンの近作。
左から、2010年作『Transference』(Merge)、2014年作『They Want My Soul』(Loma Vista)、2017年作『Hot Thoughts』(Matador)

エイドリアン・シャーウッド関連の近作。
左から、エイドリアン・シャーウッドの2022年作『Dub No Frontiers』(Real World)、ホレス・アンディの2022年作『Midnight Rocker』、同作のダブ盤『Midnight Scorchers』(共にOn-U Sound)、実娘デニス・シャーウッドの2020年作『This Road』(Evergreen)