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あらゆる枠からすこしズレたロカの歌

No. 18でストリートに立ったロカは、〈ファドはポルトガル民謡と言われていますが、ブラックアフリカ、セファルディムユダヤ、そしてアラブのにおいもする海洋国家ならではのマージナルな音楽で、あらゆる枠からすこしズレた人々の音楽だとかってにわたしは思っています〉と、思いを込めて語っている。これは、ロカのファドへの愛情の吐露であり、なおかつロカというシンガーの自己紹介でもあるのだろう。

そのように、「ROCA」はファドへの強い愛にあふれている。ここからファドという音楽に出会うのは、とても素敵なことだと思う。だが、ロカの歌は、ファドという〈枠からすこしズレ〉てしまってもいる。この記事で紹介した音楽から、そんなロカの歌の響き、そのサウダージを想像してもらえたら幸いだ。

 

■参考文献
田中勝則、アマリア・ロドリゲス『ファドの貴婦人』ライナーノーツ〈ファドの女王さまが若い時代に残したウイウイしい名唱の数々〉、2004年8月1日
田中勝則、アマリア・ロドリゲス『カフェ・ルーゾのアマリア・ロドリゲス』ライナーノーツ〈ファド復興のキッカケになった1955年のライヴ・アルバム〉、2010年5月2日

 


BOOK INFORMATION
いしいひさいち「ROCA 吉川ロカ ストーリーライブ」
発売日:2022年8月1日初版発行
フォーマット:A5判本文144ページ
価格:1,000円(税込)
https://www.ishii-shoten.com/honnmaru/rocaw09.html​