清水真広(梅田NU茶屋町店)
2022年を代表する邦楽作品。とにかく作品の内容が良すぎてアナログ盤を買いました。尖ったプロデューサーとコラボした楽曲は、海外音楽メディアの年間ベストにも選出されるなど国内外で評価が高い作品です。アナログは白いジャケットケースも特別感があり、重量盤ならではの重みも良いです。初回入荷は予約で直ぐに完売してしまいましたが、再プレスされたことで今は手に入れることができる状況です。購入を検討されている方はお早めに!
梶原颯人(渋谷店)
UKでネクストブレイク必至な若きシンガーソングライター、ジェイコブ・スレーター(ex-デッド・プリティーズ)による新プロジェクト、ワンダーホース。待望のデビューアルバムがドロップ。昨年、フェリックス・ホワイト(ex-マッカビーズ)主宰の〈ヤラ!〉(ウィリー・J・ヒーリーetc.)からシングルをリリースして以降、めきめき注目度は上昇。アルバムリリース後にはフォンテインズ・D.C.やピクシーズのオープニングにも大抜擢。
かつてロンドンのアンダーグラウンドパンクシーンに存在したデッド・プリティーズの崩壊後、しばらくメンタル不調に入ったジェイコブ。その時の悲痛な胸の叫びや、若さゆえに自分で消化しきれなかった怒りや悲しみを、作曲というプロセスと通して浄化。デビュー作とはいえども、その完成度は驚くもので、デッド・プリティーズが当時展開していた若気の至りのような荒々しさは良い意味で消え、一人の詩人として一層深みを増したジェイコブの成熟っぷりが見える感動の一枚に。アルバム全編を通して一切捨て曲無しな完璧な作品。今年はとにかくこのアルバムを聴きまくりました……。(おすすめ:①②③⑥⑦)
小嶋千夏(TOWER VINYL)
こういう場では、レコードショップのスタッフとして〈知る人ぞ知る〉な作品を紹介したいものだけれど、大好きなバンドが最高のアルバムを作ってくれたので、もうこれしかないです! USインディーロックの雄、スプーンの記念すべき10作目『Lucifer On The Sofa』! ミニマルな構成でありながらマキシマムなロック火力を放つ“The Hardest Cut”、ダウンテンポな力強いピアノロックバラード“Satellite”などなどなど、トラディショナルだけどモダン、さりげなくスタイリッシュで驚くほどキャッチーというスプーンらしさがストレートに顕現した、無駄がなく不足もないパーフェクトなロックアルバム! 2月のリリース当時は〈ヤバイ〉〈カッコいい〉〈好き〉しか言葉を発していなかったように思います。買ったばかりのレコードを電車に置き忘れ、果ての駅まで回収しに行った思い出も含めて、2022年最も身に刻まれた一枚です!
塩谷邦夫(TOWER VINYL)
SUNNY & THE SUNLINERS 『Mr. Brown Eyed Soul Vol. 2』 Big Crown/BARRIO GOLD/MUSIC CAMP(2022)
チカーノソウルといえば、のサニー・オスーナ! 5年前にリリースされて大喝采を浴びたベスト盤の第2弾が今年の夏に出たんです。バックのサンライナーズ(サングロウズ)ともども昔から大好きな人達。とはいえもともとは全米ヒットの“Talk To Me”しか知らずでした。
時は流れ……あれは20代後半のこと。90年代も後半になった頃、レアグルーヴ系のミックスCDかCD-Rかなにかで今にして思えば多分“Should I Take You Home”や“If I Could See You Now”あたりを耳にしてあらためてカッコイイ!と。このあとコンピ『East Side Story』シリーズが始まるんですけどほとんど収録してくれなくて。そして2017年のベスト盤発売で皆喜びが爆発したわけです。
で、今回もBARRIO GOLD/MUSIC CAMPがまたまたイイ仕事やってくれました。日本語ZINを付けてくれるとは。感謝サマーでした。
天野龍太郎(Mikiki編集部)
あいかわらず中古盤はあまり買っていないのですが、今年も新品のヴァイナルをそこそこ買いました(輸入盤が高くて困る!)。といっても、再発盤が中心。なかでもよかったのは、フリーボ『すきまから』、ジョン・ブライオン『Meaningless』(水色の盤がかわいい)、裸のラリーズの再発盤3タイトル(丁寧な作りで、CDよりアナログの音のほうが好きでした)、そしてファーカト・アル・アード 『Oghneya』の4つ。
ファーカト・アル・アードの『Oghneya』(79年)は、もともとは知る人ぞ知る激レア盤。私が初めて聴いたのは去年か一昨年に、たまたまYouTubeでだったのですが(ランタンパレードの清水民尋さんも絶賛していたことは、あとから知りました)、もうぶっとんでしまって、何度も何度も聴いてしまって。そのコメント欄に、今回のリイシューを行ったレーベルのハビビ・ファンクが思わせぶりな投稿をしていたので、再発を心待ちにしていたんです。そんな経緯でようやく手に入れられました(ジャケットはオリジナルのままのほうがよかったな~)。
『Oghneya』は、ジャズやサイケデリックロックなどの要素が取り入れられた、当時のレバノンにおいては異色の作品(といっても、レバノンの音楽のことはあまり知らないのですが)。特に色濃いのはブラジル・ミナス音楽からの影響で、〈レバノンのアルトゥール・ヴェロカイ〉と呼ばれるのも納得のサウンドです。とにかく優美でうっとりしてしまうのですが、中近東的(どこか演歌的)な旋律とアラビア語の響きがそこにまた独特の味わいを添えていて、親近感とともに、聴いたことのない不思議な感覚の両方に襲われます。すごい! というわけで、生涯の愛聴盤リストに新たな一枚が加わりました。
バンドのメンバーであるイサム・ハジャリ(Issam Hajali)の『Mouasalat Ila Jacad El Ard』が同じハビビ・ファンクから2019年にリイシューされているので、『Oghneya』を気に入った方にはこちらもおすすめです。