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動いている時間のなかで足場を見つけ出すこと

〈見えないルール〉の熱狂が過ぎ去ったあと、ようやくこの日最初で最後のブレイクが訪れた。開始からとうに1時間は経過している。短いMC、ドリンクの補給、ギターやベースのチューニング。普通のバンドのライブでは当たり前の息をつく光景が、とてつもなく貴重なものに感じられた。

そして、こうも思った。あのままノンストップで最後までいくことも今のオウガならできるだろう。だが、それだとこの時間が〈ライブ〉ではなく〈作品〉になってしまうかもしれない。彼らがやろうとしているのは、ある時間で停止してしまう〈作品〉を作ることじゃない。動いている時間のなかで、自分の足場をしっかりと見つけ出すことは静止ではなくむしろ自ら動いていることでしか実現しえないのだから。

ブレイクを経て、“ロープ(Long ver.)”が始まった。そこからアンコールの“動物的/人間的(Album Ver.)”に至るまではもう、音を浴びているだけで至福で、もはやあの場にいた誰にとってもどんな言葉も不要になった。

 

到達点のような熱狂の一夜も〈続き〉に過ぎない

終演後の楽屋で出戸学や馬渕啓に、あれほどストイックなビートの連続で痛めつけられて歓声を上げるなんて、オウガのお客はみんなMっ気があるんじゃないかと冗談めかして話した。もちろんそれは、オウガの攻めがそれほど強かったという本心から出た言葉だった。

それを聞いて、出戸はこう言って笑った。

「いや、俺らがSでお客さんがMなんじゃなく、いちばん勝浦(隆嗣)さんがSなんですよ。俺らもMなんです」。

確かに、この日の主役は勝浦の叩き出すストイックなビートだった。そして、そのステディーなビートがマシーンではなく、明らかにヒューマンなものだと感じさせるのが、彼のドラムの個性そのものだと痛感した。

そして、バンドと観客の関係で言えば、今夜のオウガがあれほどのストイックなアレンジでの楽曲をぶつけながらもその場にあの熱狂と歓喜があったことは、まぎれもなく彼らの継続がなしえた成果だった。

10年経ってここまできたと彼らは振り返る。彼らの進む方向が一気に明確化したアルバム『homely』(2011年)は驚きの高評価を以て迎え入れられた作品だったが、ライウブでその変化が受け入れられるまでには時間を要した。「何をやってもシーンとしていた」と、出戸は当時を思い返して言った。もしかしたら、この夜の熱狂はバンドにとってのひとつの到達点だったのかも。

だが、そんな事件も、オウガにとってはあくまで〈続き〉の一夜に過ぎないんだろう。そういえば新曲は、これからも無数に現れる〈続き〉を感じる曲だった。

 


LIVE INFORMATION
OGRE YOU ASSHOLE LIVE 2023 TOKYO/OSAKA
2023年3月4日(土)大阪・梅田 Shangri-La
開場/開演:18:00/18:30
前売り:4,500円(ドリンク代別/スタンディング)
オフィシャルHP2次先行:2023年1月6日(金)10:00~2023年1月16日(月)23:59
受付URL:https://eplus.jp/oya23-hp/
一般発売:2023年1月21日(土)10:00~
e+/チケットぴあ[P:233-731]

2023年3月18日(土)東京・渋谷 Spotify O-EAST
開場/開演:17:30/18:30
前売り:4,500円(ドリンク代別/スタンディング)
オフィシャルHP2次先行:2023年1月6日(金)10:00~2023年1月16日(月)23:59
受付URL:https://eplus.jp/oya23-hp/
一般発売:2023年1月21日(土)10:00~
e+/チケットぴあ[P:233-439]
お問い合わせ(SMASH):03-3444-6751