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泣きながら踊るようなアルバム
例えば2022年4月にリリースされた先行シングル“Maybe You’ve The Problem”で歌われているのは、その元交際相手に対してのメッセージ。〈私のせいではなくて、あなたのせい。悪いのはそっちよ!〉と言い放ち、怒りをぶつけながら自身を励ますエンパワーメント・ソングとなっている。「ついつい自分を責めがちだったけれど、よくよく考えれば交際相手がとんでもない奴だった」という彼女。苦々しい体験が綴られている。続いて9月にリリースされた“Million Dollar Baby”も、傷心によるネガティヴ思考を振り払うかのように「彼女は100万ドルの価値ある女の子なの!」と歌って自身を鼓舞する様子が清々しい。
なかにはちょっぴりメランコリックな憂いを帯びたメロディーの楽曲も顔を覗かせる。本人いわく「これは泣きながら踊るようなアルバムなの」とのこと。ロビンの傷心ダンス・アンセム“Dancing On My Own”に近いニュアンスだろうか。かつてマーク・ロンソンが『Late Night Feelings』(2019年)のリリース時に、「最高のダンス・チューンとは、ダンスフロアで聴くと踊らせるが、自宅で聴けば泣けるような曲」と言っていたのを思い出す。だからといってシクシク泣いたり、キックやパンチが弱まるようなエイバではもちろんない。イントロこそソフトに入る曲が増えたかもしれないが、Aメロ~Bメロへと移る頃には、ダイナミックなアッパー系へと変遷。ミラーボールがキラキラ輝き、華やかなダンスフロアが出現する。『Diamonds & Dancefloors』ほど、このアルバムに相応しいタイトルというのもないと思われる。