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達成感みたいなもの

 一方、熱っぽいビートに乗せて〈泣くな頑張れ 私〉と自分自身を奮い立たせる“ポジティ部入部”は、いままであまり見たことのないUruの一面。自己啓発ソング!

 「もともとすごくネガティヴな思考回路の持ち主なので、気を抜いていると陰の沼にハマりそうになるんです(笑)。でも、歌を歌っている以上、そのような曲ばかり歌っていられないし、誰かの背中を押せるような曲もいつかは作ってみたいと思っていました。自己啓発ソング、確かにそうですね! 昔は毛嫌いしていた自己啓発本を最近よく読んでいるのですが、2年前くらいから自分のなかでパラダイムシフト的な旋風が巻き起こっているのかもしれません」。

 また、こちらも曲名からしてユーモラスな“脱・借りてきた猫症候群”は、YOASOBIのコンポーザーとしても活躍するAyaseとのLiSA × Uru“再会”以来となるコラボレーション(なお、初回限定の〈カバー盤〉には同曲のセルフ・カヴァーが収録)。Uruの作詞による〈ですます調〉の歌詞も特徴的な、楽しくほのぼのとしたナンバーだ。

 「〈Uruといえばバラード〉というイメージを少し変えられるような、ライヴでも手拍子をしながら楽しく聴いていただけるような曲をリクエストさせていただいたのですが、耳にも頭にも残る弾んだリズミカルな曲を作ってくださって嬉しかったです。メロディーを聴いているうちに、〈内なる叫び〉をボソボソと放っているような詞にしたいなというインスピレーションが湧いてきて、難しい言葉を使わずに自分に向けて話しているような話し言葉で書いていきました。でも、日記を書いていると、無意識に誰かに万が一見られても大丈夫なように書いてしまうという心理のように、ひとりごとなのに誰かに届いていてほしいというような、めんどくさい感情をリアルに閉じ込められたなあと」。

 そして“ハクセキレイ”は、アコースティック・ギターを軸にストリングスやピアノがこれ以上でもこれ以下でもない絶妙な加減で絡んでくるナンバーで、シンプルさゆえに彼女の声の響きも非常に際立つ。

 「もちろんアルバムの全曲が好きなのですが、この“ハクセキレイ”は特にたまらなく好きです。もともとあまりサビの印象が強くない曲というか、穏やかなのにクセのある曲が好きなのですが、ある日ボーッと外を眺めていたときに見た鳥たちの光景にすごく癒されて、ちょうど担当させてもらっていた作品の主人公と重なってすごく妄想が膨らんで一気に書けた曲です。アレンジもリヴァーブの程度や、後ろでループしているピアノのパターンだったり、デモの雰囲気をそのまま活かしてもらったり、注文をたくさんしてしまいました。歌詞に没入して聴いてほしくもあり、曲を流しながら読書をしたり雰囲気を楽しんでもらいたい曲でもあり、とにかく、好きです」。

 『モノクローム』から『オリオンブルー』、そして『コントラスト』――アルバム・タイトルでその進化を表してきたUru。今作を作り終えての手応えも、もちろん……!

 「またひとつ〈Uru〉を表現できるアルバムが出来たのではないかなと達成感みたいなものは感じています。これを引っ提げての……って、このワードを使ってみたかったんですけど(笑)、春からのツアーでは、皆さんと曲を同じ場所で共有できるのが楽しみです。〈求められているもの〉と〈自分が表現したいもの〉って、いつでも必ず合致するわけじゃないけれど、それらを良い形でまとめることのできた一枚なのかなとも思っています」。

関連盤を紹介。
左から、wacciの2022年作『suits me! suits you!』(エピック)、優里の2022年作『壱』(ARIOLA JAPAN)、YOASOBIの2021年作『THE BOOK 2』(ソニー)

Uruの作品。
左から、2017年のアルバム『モノクローム』、2020年のアルバム『オリオンブルー』、2020年のシングル『Break/振り子』、2021年のシングル“ファーストラヴ”“Love Song”、2022年のシングル“それを愛と呼ぶなら”(すべてソニー)