
三輪眞弘がひらく
ありえるかもしれない、ガムラン
今年のメインテーマともいえる位置づけにある三輪眞弘プロデュースによる〈三輪眞弘がひらく ありえるかもしれない、ガムラン〉。ディレクションを手掛けるのが日本とインドネシアを拠点とするさまざまな国籍メンバーからなるアートコレクティヴKITA、演奏はジャワのガムランをルーツにもつマルガサリが、作曲を担当するのは藤枝守、小出雅子、宮内康乃、野村誠といった面々。
演目は大ホールとブルーローズ(小ホール)の二箇所で上演され、8月27日(日)には大ホールで〈Music in the Universe〉と題し、彼らの新作発表と、民族音楽学者でもあるフィリピンの作曲家ホセ・マセダによる“ゴングと竹のための音楽”が上演される。マセダの本作はガムランと龍笛、フィリピンの竹の楽器、そしてコントラ・バスーンと子供の合唱のための作品で、西洋楽器と日本の邦楽器、フィリピンの楽器、そしてガムランがそれぞれの調性を超えて調和する。どの楽器が主になるわけではなくそれぞれが自立して統合しあう、というコンセプトをもっている。

もうひとつは8月25日(金)から27日(日)までの三日間ブルーローズ(小ホール)で開催される〈En-gawa〉と題された〈プロジェクト型〉のコンサート。〈プロジェクト型〉のコンサートとは何か。そこにはおそらくディレクションを手掛けるKITAが鍵を握っている。KITAとはインドネシア語で〈わたしたち〉という意味である。さまざまな国籍メンバーからなるメンバーを固定しない緩やかな集団という形態をとっており、彼らがオーセンティックなコンサートの形態とは出発点を異にしているのは明らかである。ブルーローズ(小ホール)にガムランが演奏される建屋が設置され(右イメージ図参照)、多様なジャンルのパフォーマンスとガムラン、そして屋台が立ち並び、8月25(金)日と26日(土)夜には〈ガムラン・アセンブリー〉と題した座談会も開催される。
この〈En-gawa〉には幕間がない。はじまりもおわりもなく、常に音楽とともにある空間。音楽が響く空間に満たされているのは張り詰めた緊張ではなく、屋台が立ち並び歓談の声が響くゆるやかな空間である。
もともとサントリーホール自体がドリンクサービスまでを含んだ〈音楽を楽しむ空間すべての演出〉を念頭に設計されているが、この〈En-gawa〉はその原点に大回りして到達した地点とも言えるだろう。