混乱の中でもがく姿
そのように自身の体験を赤裸々に歌ったり、匂わせワードを散りばめるのは、テイラー・スウィフトの十八番でもあり、オリヴィアもテイラーから多大な影響を受けてきたのは、よく知られているところ。かつてはオリヴィアの成功を一緒に祝ったり、仲良し姉妹のようにも見受けられた2人だが、最近は少し疎遠なようで、確執があるのではないかという噂も囁かれている。前述の“vampire”は、元カレについての曲ではなく実はテイラーを揶揄しているのでは?という説もあり、その件について尋ねられたオリヴィアは、「楽曲の題材が誰かは答えられない」と返答。どの曲に関しても答えない方針だという。
さらには〈裏切られた関係〉について歌われた“the grudge”もテイラーのことを指していると信じるファンは多い。テイラーにインスパイアされた前作の楽曲のクレジット関係のトラブルが引き金となった可能性も指摘されており、一方のテイラーはといえば、最新ツアーのオープニング・アクトにサブリナ・カーペンターを起用。サブリナは“drivers license”で歌われたと言われるオリヴィアのライヴァル的存在。テイラーvs.ケイティ・ペリーの犬猿騒動を思わせる確執の勃発ではないかと噂が噂を呼んでいる。
それらの真偽はともかく、この数年間に体験した彼女の人生に起こった出来事が歌われているのは確か。ようやく今年で20歳を迎えた彼女が、さまざまな人間模様や突然目の前に立ちはだかる壁を乗り越え、突き破り、混乱の中をもがきながら奮闘している姿が、『GUTS』には克明に記されている。Z世代の新たなバイブルの誕生であり、音楽シーンに大きな風穴を開けるのは間違いなさそうだ。
オリヴィア・ロドリゴの2021年作『SOUR』(Interscope)