
原点回帰と初期衝動
――そんななか、6人で初めての作品となったメジャー・ファースト・アルバム『RAWPIG』のお話ですが、さらに迷いなく振り切れた作品になりましたね。
プー「はい。アルバムについての打ち合わせをA&Rの平山さんたちとする少し前に、RyanとMETTYと(カミヤ)サキちゃんでご飯に行って、PIGGSがめざすものの話をしたんですよ。そこで〈焦りすぎて、今より来年のことを考えてたね〉っていう反省があって、〈いまをホントに大事に生きた結果が未来に繋がるから、いまカッコイイって思うものを作らないと先がないよね〉という話をしました。どうしてもネットでパッと流行ってパッと消えてくものも多いけど、〈それって本当にアーティストとして幸せなことなんだっけ?〉っていうのも議題に上がって。それよりは、自分たちのやりたいことをカッコイイって思ってくれる人を、少し時間がかかっても増やしていくことが、PIGGSの成功への最速ルートなんじゃないかって話したので、今回はそういう考えで作った部分も大きいです。焦って〈メジャーっぽいもの〉に意識が行ってたところを、もうファーストの『HALLO PIGGS』の脳みそに戻したのでけっこう攻めてるし、あの時よりは成長したみんなで初期衝動のアルバムを作った感じですね」
――『RAWPIG』という表題の意味は?
プー「剥き出しの豚です(笑)」
KIN「イケてるとか、生とか、素直とか、RAWっていろんな意味があるんですけど、〈6人になったPIGGSで曝け出して、こっからやってやろうぜ!〉みたいなイメージです」
――その収録曲として、Ryanさんと松隈ケンタさんが生配信したセッションから“Route 91665”が生まれましたね。
プー「そうですね。アルバムについて話し合うなかで〈初期衝動〉とか〈原点回帰〉っていう言葉が出ていたので、私の原点のソロからずっとやってくれてた松隈さんに1曲お願いしたいっていう考えをチームに提案して、〈このタイミングでやるのはおもしろいかもね〉ってなったので何年ぶりかに電話してオファーしました。でも、単純に私と組むだけだと過去にやったことと同じだし、松隈さんも〈せっかくPIGGSと組むなら違うやり方で関わりたいから、何か新しいことやろうぜ〉って言ってくださって。それでバーベキューしながら曲を作るとか新しい案をどんどん挙げてって」
――バーベキュー(笑)?
プー「私と松隈さんって流れ的にハッピーなことをやってきてないから、そういうハッピーな案も最初あって(笑)。まあ、流石にバーベキューしながら曲作るのは難しくて、〈Ryanと一緒に曲作ったら楽しそうやね〉って松隈さんから言ってくださったので、どうせならセッションを生配信しようという感じで決まりました」
――仮歌はBIBIさんの担当でしたね。
BIBI「レコーディング自体ほとんどしたことがないので、頭が真っ白になっちゃったんですけど。松隈さんが〈思った通りにやっていいよ〉って言ってくださったので思い切ってできました。その時に松隈さんが〈こう歌うといいよ〉とか〈こういう発音したほうがいい〉って教えてくださったことを後から他のアルバム曲のレコーディングの時にも思い出して、そこで学んだことも活かせたかなって思います。凄い経験をしただけじゃなくて〈この経験がずっと活きてくんだろうな〉って」
――SU-RINGさんはどうでしたか?
SU「松隈さんがリモートで繋がってて、歌を聴いてディレクションしてくださる感じだったんですけど。〈自分が聴いてた音楽を作った方が私の声を聴いてる!〉みたいに思って、レコーディングの時からガチガチに緊張しちゃって。でも、歌を凄く褒めてくださったりしたので自分もだんだんノリノリになって歌えたのが嬉しかったです。あと、Ryanさんの歌詞も、2番サビの〈No Give Up ダサくて反吐でたけれど 今じゃ座右の銘だね〉っていうところが特に刺さりました。そこをレコーディングで歌った時に自分のことみたいにハッとして。〈諦めないで〉とか言われると〈何がわかるんだよ!〉とか思っちゃったりするけど、こうやって生きてくなかでも、諦めたら全部終わっちゃうし、上手くいかないことも自分が諦めないことによっていい方向に変えられたりするじゃないですか。変に賢くやるんじゃなくて、どこまでも貪欲に諦めずにやることが生きてくうえで大事だし、ホントに座右の銘だなって歌いながら思いました。だから、歌っててより自分の感情も乗る曲です」

――歌詞でいうとSHELLMEさんの歌う〈揺れてた夢は透明なまんま〉というパートは、BiS“primal.”を連想させるフレーズです。
SHELL「はい。私はBiSさんをあんまり知らないんですけど、そうやって思い出す人も多いだろうなと思ったので、私なりに乗せられる気持ちを考えたんですよ。それで〈上京してきた時、めっちゃ夢持ってたな〉って思って。でも実際は叶わなかったことのほうが多くて、そのうち斜に構えて諦めたり、いま楽しければいいやとか思う方向に自分が変わっていったけど、ホントのホントは昔から叶えたい気持ちは変わってないなって気付いたんですよ、この歌詞が良すぎて。……言葉にするのが難しいんですけど」
――わかりますよ。
SHELL「だから、もっと純粋にがんばりたいって思いました」
BAN「最初はそこのパートが歌いたかったので、歌割が決まった時は悔しかったけど、その前のパートをSHELLMEと一緒に歌うことが〈PIGGSでこの歌を歌っていくんだ〉って捉えられるようになったから、そこは自分でもしっくりきてます。ライヴでも2人で歌った後にSHELLMEが歌って、私はそこで踊るんですけど、一緒に歌う気持ちで踊ってるし、この2サビは好きなところです」
プー「BiSを知らないSHELLMEと、BiSが好きでPIGGSになったBAN-BANがそこを一緒に歌ってるのも意味があると思うんですよね」
――それに続くリード曲“Fleeting”もパンキッシュでかっこいいですね。
KIN「〈すべて曝け出してやってやるぜ!〉みたいな感じのバチバチに攻めたカッコイイ曲です。〈フリーティング〉なんですけど、レコーディングとかライヴでは〈フリチン〉って歌ってて。カッコイイっていう言葉しか出てこない。とにかくカッコイイです」
BAN「最近はツアーで1曲目にやることが多いんですけど。私もみんなも〈やってやるぜ!〉っていうスイッチがグワッと入るような感じがしてます」
――“Route 91665”の映像はスタジオ風景を映したリリックビデオだったので、SUさんとBIBIさんはこちらが初めてのMV撮影になりましたね。
BIBI「はい。撮影が始まったらまず〈好きに動いてみて〉みたいな感じでソロカットの撮影があって、みんながやるのを見ながら〈こんなのできないんだけど!〉って思ったんですけど、監督さんに〈恥ずかしがらずに自由にやってみて〉って言っていただいたので、〈できないのも自分だぞ〉みたいな気持ちでやらせてもらいました。その後は〈誰かが撮ってる合間にGoProを自由に使ってていいよ〉って言ってくださったので、いろいろ好きに撮ってたら、カッコイイ映像の合間にちゃんと使われてて。いろんな場面が入ってて観てくれる人も楽しいんじゃないかなって思います」
SU「曲がかっこいいイメージだから、もっとキメた感じのMVだと思ってたら、ゴーカートを運転してめっちゃ楽しかったり、頭にGoProを付けて撮ったり、旗を振り回したりして遊んでるシーンを自由に撮ったりした、いろんな場面が全部繋がっててめっちゃカッコイイMVになっています。最初に経験させてもらった撮影がこんなに自由なMVで良かったし、メンバーみんなの表情の作り方や見せ方を間近で観て参考になったし、自分の中でも大切な経験になりました」
プー「MV自体は色味とかポップな要素も多くて、いままでのPIGGSにありそうでなかった、オシャレでカッコイイ感じになりました。SUとBIBIがたくさん可愛く映ってて、盛れてます(笑)」