レコード・ストア・デイに、一挙5作品をリリース。

 ジャズ界のインディ・ジョーンズと異名をとる、21世紀の未発表音源の発掘王ゼヴ・フェルドマンが、アメリカのクリスマス商戦の皮切りとなる11月24日のブラック・フライデイに開催されるレコード・ストア・デイに、新たな5タイトルをリリースする。そのプロモーションのために、10月に来日したフェルドマンに、新たな発掘音源について訊いた。

 「今回リリースするのは、ウェス・モンゴメリー&ウィントン・ケリー・トリオの『マキシマム・スウィング』、ビル・エヴァンスの『テイルズ - ライヴ・イン・コペンハーゲン(1964)』、今年逝去したアーマッド・ジャマルの好評を博したシリーズの第3弾『Emerald City Nights - Live At The Penthouse (1966-1968) Vol. 3』、ソウル・ジャズ・ピアニスト、レス・マッキャンの『Never A Dull Moment! Live From Coast To Coast 1966-1967』、ラテン・ジャズ・プレイヤーとしても高名で、今や多くのクラブDJもそのアルバムをプレイしているカル・ジェイダーの『Catch The Groove. Live at The Penthouse 1963-1967』の、5タイトルだ。ジャマル、ジェイダーは、シアトルのジャズ・クラブ、Penthouseのアーカイヴ音源であり、マッキャンのアルバムの一部も同音源と、ニューヨークのヴィレッジ・ヴァンガードでの録音である。5作品とも、アーティストたちのピークの瞬間を捉えた、貴重な記録である」と、フェルドマンは新作を語った。

 「ウェス・モンゴメリーの発掘音源をリリースするのは、2010年から7作を数える。本作は、多くのギタリストに影響を与えた歴史的名盤『Smokin’ At The Half Note』と同じ年に、同じくジャズ・クラブ〈Half Note〉で収録されたラジオの番組用の音源だ。長らくブートレグとして出回っていたが、今回大幅なデジタル修復を施して、オフィシャル盤のリリースが可能となった。また日本のウェス・ファンクラブの徳井由雄氏が提供してくださったテープは、世界初リリースの貴重な音源だ。『マキシマム・スウィング』のタイトル通り、ライヴならではの長くスリリングなソロと、白熱のインタープレイがフィーチャーされている。ライナーには、ギタリストのビル・フリゼールと、マイク・スターンによるウェス讃歌とともに、マーカス・ミラーが憧れていた親戚(父の従兄)のウィントン・ケリーについて、熱く語ってくれた。ポール・チェンバースの体調不良により、ベーシストがチェンバース以外に、ロン・カーター、ラリー・リドレー、ハーマン・ライトが務めているのも、本作を興味深いものにしていると思う」。

 フェルドマンが、最も多く発掘音源をプロデュースしたアーティストは、ビル・エヴァンスである。今回のアルバムで、11作目となった。

 「このアルバムは、今年4月にリリースした『Treasures: Solo, Trio And Orchestra Recordings From Denmark (1965-1969)』に収録できなかった、1964年のデンマークの放送音源である。チャック・イスラエルとラリー・バンカーを擁するエヴァンス・トリオの貴重な記録だ。ビル・エヴァンスの、初めてのヨーロッパ・ツアーの記録でもある」とフェルドマンは、変わらぬエヴァンス愛を語る。

 「シアトルのPenthouseのアーカイヴには、まだまだ貴重な音源が残されている。ヨーロッパの放送局でも、貴重なテープを発見した。来年も、あっと驚くような作品のリリースを多く予定している。ぜひ期待してほしい」。ゼヴ・フェルドマンの冒険は、まだまだ続く。

 


ゼヴ・フェルドマン(Zev Feldman)
ロサンゼルスのResonance Recordsの共同社長を努める独立系レコードプロデューサー。ブルーノート・レコードのアーカイブおよび歴史的録音のコンサルティング・プロデューサーでもある。過去にPolyGram、Universal Music Group、Rhino / Warner Music Group、Concord Music Groupなどに在籍。2016年にダウンビート・マガジンの国際批評家投票で〈ライジング・スター・プロデューサー〉賞を受賞し、その年に26枚もの歴史的なジャズのレコーディングに携わった功績が認められ、ステレオファイル・マガジンからは〈ジャズ界のインディ・ジョーンズ〉と呼ばれた。ビル・エヴァンスやウェス・モンゴメリーなどのジャズアイコンの財団と密接に連携するレゾナンスでの仕事に加えて、エレメンタル・ミュージック、サンセット・ブールバード・レコード、リアル・ゴーンなど、ジャズ、ブルース、ロックをカバーする他のさまざまなレーベルとも関わっている。