アルバムで辿るアンプ・フィドラーの歩みの一部

もともとMrフィドラーの2作目として進められてきたフシもあるソロ初作。全体を包むのは血縁も地縁も含めたファミリーの輪で、兄のバブズからPファンク、ディラ、ムーディーマンらが参加。当時のネオ・ソウル的な見せ方もありつつ、その根源にあるファンクが本人の身近なハウスやヒップホップと融合したヴァイブの心地良さは極上だ。

初作の流れを継承したセカンド・アルバム。継続参加したラファエル・サディーク色の“Faith”にてレトロでネオな始まりを見せ、ジャズやファンクの要素を溶いたエクレクティックなソウル作品に仕上がっている。コリーヌ・ベイリー・レイが客演したほか、ランドルフやアンドレス、D12のMrポーターまで幅広い仲間たちも要所で助力。

当時のストラットで名物企画となった新録コラボ・シリーズ〈Inspiration Information〉の第1弾として、大御所スライ&ロビーと手合わせした夢の共演作。キングストンにて3日で録音されたそうで、アンプのセルフ・カヴァー“I Believe In You”も含めてスライっぽいユルさと繊細なリズムが気持ち良く漂うレイドバックした逸品。

ソロでは10年ぶりとなった3作目は良い意味でローカル感を増し、地元のキーマンという自身のスタンスも絡めながら、モータウン~Pファンク~ハウス~ビートダウンといったデトロイトの音楽史をグルーヴィーに出し入れしてみせたような雰囲気だ。女性トリオのデイムス・ブラウンも初登場してソウルフルな華やぎを持ち込んでいる。

ムーディーマン主宰のマホガニーから届けた4作目は、引き続きハウスやヒップホップも内包したモーターシティ・ソウルの粋を聴かせる濃厚な内容に。スラム・ヴィレッジのT3も交えた“Return Of The Ghetto Fly”をはじめ、ディラやワジード、アンドレス、兄のバブズ、そしてムーディーマンとの安心感のあるコラボが並んだ佳作だ。

エルザイ作品などで絡んできたデトロイトのファンク・バンド、ウィル・セッションズとガッチリ組んだタッグ作。アンプはシンセ/ピアノを弾きながら歌唱を担い、さまざまな時代のスタイルを自在に繰り出すクールなバンドにしっくり馴染んでいる。往年のガールズ・グループのようなデイムス・ブラウンのコーラスも存在感抜群。
アンプ・フィドラーの参加作をごく一部紹介!
左から、キャット・ミラーの86年作『Cat』(Solar)、シールの94年作『Seal』(Warner Bros.)、マクスウェルの96年作『Maxwell’s Urban Hung Suite』(Columbia)、デトロイト・エクスペリメントの2003年作『The Detroit Experiment』(Ropeadope)、ジョン・アーノルドの2003年作『Neighborhood Science』(Ubiquity)、ギャラクティックの2007年作『From The Corner To The Block』(Anti-)、ナット・キング・コールの2008年作『Re: Generations』(Capitol)、トライブの2009年作『Rebirth』(Planet E)、ベースメント・ジャックスの2009年作『Scars』(XL)、バロジの2010年作『Kinshasa Succursale』(EMI)、エルザイの2011年作『Elmatic』(Jae B. Group)。下段左から、ラファエル・サディークの2011年作『Stone Rollin’』(Columbia)、Jディラの2012年作『Rebirth Of Detroit』(Ruff Draft)、ホセ・ジェイムズの2012年作『No Beginning No End』(Blue Note)、ミシェル・ンデゲオチェロの2014年作『Comet, Come To Me』(Naïve)、オマーSの2016年作『The Best』(FXHE)、ファンカデリックの2017年作『Reworked By Detroiters』(Westbound)、パーラメントの2018年作『Medicaid Fraud Dogg』(C Kunspyruhzy/Pヴァイン)、ヴィヴィアン・セッサムズの2018年作『Life』(Ropeadope)、アンドレスの2019年作『Andrés IV』(Mahogani Music)、デイムス・ブラウンの2023年のシングル“Glory”(Defected)、イラJの2023年作『No Traffic』(BBE)