デトロイトのプロデューサーによる初作。ロバート・グラスパー『Black Radio』のデトロイト版をめざした内容で、そのグラスパーのピアノが艶やかに鳴るスロウや、ニコラス・ペイトンがトランペットを吹いた穏やかなブラジル風味の曲が聴きもの。ただ本作の肝はそんなわかりやすいゲスト陣ではなく、かの地伝統のソウルに軸足を置きながら、広い視野でR&B、ヒップホップ、ジャズを繋ぐ試みだ。バーナード・ライトや故ドン・ブラックマンらの伝説たち、アンプ・フィドラーフランク・マッコムなどの実力派、アーニー・アイズレーの娘アレックスら新世代の担い手……これらすべてが、ブランドンによるジャジー・ソウルを共に紡いでいく美しい光景は、新たな、ではなく連綿と続いているソウルの地平を示す。大作。