風呂も入らずノーメイクで駆けつける
――それでは、いよいよサイン会について聞かせてください。情報を知ったのは何時頃だったんですか?
「11時20分にポストを見て、〈ヒエ!〉と声が出ました。ソニーミュージックさんが出してくださった情報を、もう三度見くらいして。私は自転車で行けば渋谷まで早くて10~15分くらいのあたりに住んでいるんですけど、あの日は大雨だったので、とりあえずダメもとでタクシーを呼びました。タクシーアプリの〈GO〉って追加料金を払えば優先配車ができるので、もちろん課金しましたね。それを使っても普段はあまり来ないんですけど、あの日はたまたまスムーズに来てくれて。
11時20分に知ってワタワタワタと上着を着て、財布と携帯を掴んで、25分くらいにタクシーが来てくれたんです。タワーレコードさんに着いたのは40分ちょうどくらいでしたね」
パンイチでオンライン会議してたのでズボンひっかけてスポブラにコート羽織って前締め切るという痴女寸前スタイルでタクシーに飛び乗りましたどうかお願いします
— BEYONCE JPN (@BeyJapan) March 29, 2024
雨でタクシー来ないので980円追加しました
――ということは、見た瞬間には行くと決めた?
「見た瞬間でしたね。よく見たら〈11時から配布〉って書いてあるから、もう間に合わないかもと思いながらも、とりあえずガムシャラに行ったら少なくとも後悔はしないかなと思いました(笑)。
普段はお金をかけて現地に行って、やっと偶像崇拝ができるみたいな感じじゃないですか。それが、ご本人がリアルに来る、しかもサイン会も10何年ぶりだし、そもそもアジアにいらっしゃらない方なので。バケーションで来てくださっているだけでもありがたいのに、それが民草の前に現れるとはっていう(笑)。ちょっとでも迷っている隙があったら、ダメだった時に後で必ず後悔すると思ったんですよね。とりあえず服を着て、詳細を読むのは後でいいから、とにかく行かねばって感じでした。
私、前の日は夜中まで仕事をしていて、在宅勤務なので誰にも会わないからそのまま寝ちゃったんですよね。それでお風呂も入らずに朝起きて、顔洗って歯磨きした状態で、パンイチスポブラ一丁だったところに〈やべえ! ビヨンセだ!〉ですよ。〈Renaissance World Tour〉の頃にビヨンセがティファニーのミューズをされていたので、稼いだお金を全てティファニーに突っ込んでいた時もあってビヨンセとおそろいのピアスやネックレスも持っているんですけど、サイン会の詳細を読んでいなかったから整理券を貰ったらタワーレコードから出られないのを知らなくて(笑)。お風呂も入らず、髪の毛も洗わず、化粧もせず、ちいかわの靴下を履いてビヨンセに会いに行ったんですよね。ティファニー付けて、ツアーTシャツ着て、うちわも持って行きたかった……。後で自分の写真を見て本当に恥ずかしかったです(笑)」
神が降りてきた
――会場に着いた時はどんな心境でしたか?
「もうダメかもって思っていたので、なるべく期待しないように〈フフン〉と静かにタクシーを降りてですね。そうしたら入口の前に、〈ビヨンセのサイン会はこちらです〉という看板を持った係員さんがいてくださって。売り切れていると思っていたんですけど、まだ完売と書いていなかったので、〈これもしかして、行け、行け、行け、行け、行けるのか?〉と思いながらサササササって近付いて。〈あの、ビ、ビ、ビヨンセ、ビヨンセはありますか?〉みたいなことを言ったら〈中のレジへどうぞ〉と通されて。騒ぐとほかの方がすぐに検知して〈何? 何?〉みたいになっちゃうから、なるべく気配を消して騒がないように、静かにヌルヌルヌルヌルと店内に入りました。つまずいてコケている間に配券が終わってしまうかもしれないから、精神を落ち着かせて歩みを確かめながら向かって。
そうしたらレジの並びのところの入り口、〈最後尾はこちらです〉のところに立っていらっしゃった方が、まだ分厚いチケットの束を持っていたんです。それをこうやって(目を見開いて)見ながら〈まだある? まだある?〉とヌルヌルヌルヌルっと行ったら、手前で〈はい、そこでお待ちください〉とバイーンって止められました。ここで態度が悪いということでBANを食らっては、最後の最後で会えないと思って〈はい、わかりました。なんでも聞きます〉と大人しくしていました(笑)。なるべく落ち着いて冷静に、期待はせずに、でも歩みは一番早く行かなければと精神を研ぎ澄ませていましたね」
取れた、、、、 pic.twitter.com/oHbm1XXcvH
— BEYONCE JPN (@BeyJapan) March 29, 2024
――それで実際にサイン会に行けたわけですけど、会場で待っていて、ビヨンセがついに現れた時はどんな気持ちでしたか?
「また例の興奮しすぎて忘れてしまうアレで、もはやよく覚えていないんですよね。ただ、距離が近すぎました。アメリカに行ってもやっと肉眼で数センチの〈お洋服が見える〉みたいな感じでしか会えない人だったのが、あれだけ距離が近いのは信じられない気持ちでしたね。しかも、ステージでがっつり作り上げている時じゃないビヨンセを見ることってなかなか叶わないのに、それが生でいるんですよ。ちょっと何も考えられなくなっちゃいましたね。〈ああ?! おお?!〉って感じです。とりあえずこっちを向いてくださっていて、どうやら目が合うらしいっていう(笑)。意味がわからなかったですね。
会える推しではない……というか、ビヨンセは私にとって推しですらないんですよ。信仰対象なので。神がふわっと浮いているところに民衆がワーって手を伸ばしている宗教画の状態がビヨンセとビーハイブ(ビヨンセのファンの愛称)の構図で、よくアメリカのファンの方が画像を上げているんですけど、それで神がふわーって降りてきたら〈ギィヤァァァァァァァァァー!〉ってなるじゃないですか(笑)。
日本のファンである私にとって〈そういうものですらないのです〉って感じだったのに、でもご本人と目は合うから、叫び手を振り、愛を伝えてはおりました」