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やはり神は偉大

――ビヨンセは一人一人にファンサービスをしっかりとされていたと評判でしたが、そこに関しての記憶はありますか?

「後で写真を見たら、私に微笑み返してくださっていたことはわかりました(笑)。自分が何を喋ろうと思っていたかは覚えています。

私の番が近くなって呼びかけたら特大ファンサをしてくれました *BEYONCE JPN

壇に上がる前はなるべく気合を入れてスンって顔で行ったんですけど、〈次は私だ〉となったら〈うう、神様が。ありがたい。こんな人間があなた様の前に〉みたいになってしまって。鼻水と涙でグチョグチョの状態で、うう~って言いながら壇に上がりました。私の前の方は〈ダンスをやっているんです〉と言ってキメキメに踊っていてちゃんとされていたのに、私はこんな汚い、ボロボロな格好で鼻水垂らしながら、へっぴり腰でヨタヨタヨタって壇上に上がって(笑)。上がったら〈あ、挨拶から始めなきゃ〉と思って、〈Hello, how are you? It’s pleasure to meet you〉とか言ったんですけど、こんな泣いている人間から言われたら〈お前がHow are you?だよ〉って感じですよね(笑)。ビヨンセは〈ん?〉みたいな顔をされていて、〈あ、引かれた。終わった〉と思いました。その後、〈私は“Run The World (Girls)”で命をいただいて、今ここに来ているんです。『On The Run II Tour』も行って、『Renaissance World Tour』も行きました。日本にもあなたのファンがめちゃくちゃいるんです。本当に今日は来てくださってありがとうございます。最高です〉みたいなことを言ったと思います」

へっぴり腰の私です(恥ずかしい) *BEYONCE JPN

――それで、ビヨンセからは何かお声がけはいただいたんですか?

「〈ありがとうね〉みたいなことは言ってくださっていたんですが、どちらかというと〈うん、うん〉って話を聞いてくださっていた印象が強いですね。ほかの方とのやりとりを見ていても、みんなが思い思い喋って、〈そうなの。ありがとうね〉ってしっかりと聞いてくださっている印象でした。傾聴力に優れた方なんですよね。こんなよくわかんない汚いグチャグチャな人間が来ても、〈うん、うん〉って話を聞いてくださって、本当に優しいなと思いました。優しいというか、やはり神は偉大ですね。

それで私の話を聞いてくださりながら、何かありがたいサインを(ポスターに)してくださって。ちょっと後ろを向いたらライトがめっちゃ眩しくて、何も見えなくなってカメラのある方向に〈ええ~ん〉と泣きながら降りて帰りました(笑)。ほかの方が〈いい匂いがした〉とかすごい仰っていたんですけど、私は泣いていて鼻水を垂らしてたのもあってか、何も匂わなかったんですよね。握手の手の感触とかも何も覚えていなくて。手を握っていただいた、ハグをしていただいた、その時のお召し物はレザー生地だった、あぁ素晴らしいって感じだけでした。〈ワーッ!〉ってなりましたね」

Jay-Zもファンサービス *BEYONCE JPN

 

〈不眠セ〉になっています

――今回のサイン会は新作アルバム『COWBOY CARTER』のリリースと同日でしたよね。アルバムのご感想を聞かせてください。

BEYONCÉ 『COWBOY CARTER』 Parkwood/Columbia(2024)

「ご本人が〈これまでで一番いいアルバムかも〉っておっしゃっていたじゃないですか。ファンとしては全てが一番いいアルバムで、〈今回も最高峰でございます〉っていうボジョレー・ヌーヴォーの気分なんですけども、ビヨンセ本人が〈これが最高かも〉と言っていた意味が若干わかった気がしました。

今回、自分の彼氏とか友達とか、普段はヒップホップを聴かないような人たちからも〈このアルバムだけはいけるかも〉っていう声をよく聞いていてですね。今回は刺さる層、レイヤーが多いんだろうなと思います。あと、私はカントリーも好きなんですよね。そのカントリーにビヨンセが挑まれて、どの曲も最高で、もう最高ですしか言うことがないですね。

ただ、サイン会がありがたすぎてまだ思い出しちゃうので、あの後の数日はまだじっくり新作アルバムを聴けていなかったんですよね。興奮して眠れなくなっちゃうので。サイン会当日も2時間しか眠れませんでした。ほかの行かれた方も〈最近眠れていないです〉って言っているんですけど、私もですよ(笑)。〈不眠セ〉になっています」

――不眠セ。

「不眠セになっているんですけど、最近ようやく落ち着いて、新作をありがたく拝聴し始められたところです。色々なバックグラウンドがあって、そういうのに詳しい方が解説をされているのを読みながら聴いていきたいと思います。

ビヨンセのアルバムってどれもメッセージ性が強くて、米国の社会文化学みたいなところを掘り下げて学べるんですよね。そういった意味でも造詣が深くて、噛み締めても噛み締めてもまだまだ味が出る素晴らしいアルバムだなと、いつもながらに思っています」

――今回のアルバムについては本人が〈これはカントリーアルバムじゃなくてビヨンセアルバムだ〉と言っていましたが、実際にカントリー云々というより〈ビヨンセ力〉みたいなものでねじ伏せている印象を自分は持ちました。この〈ビヨンセ力〉ってどういうところから生まれていると思いますか?

「ビヨンセのアルバムって、毎回めちゃくちゃ考え込まれて作られているじゃないですか。なので、自分で英語の記事を読んで調べたり、ライターの方の解説を読んだりしていて思うんですけど、一種の念を感じるんですよね。歌詞だとか、歌い方だとか、ライブのステージでの彼女のパフォーマンスだとか、全てからそれが出ている。彼女の念の強さ、思いの強さこそが〈ビヨンセ力〉として出てくるのかなと思います」