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鬱屈としていた学生時代の自分への回答“つまらん”

──「アルバムには1曲遊んでいる曲を入れる。Nujabesやマセーゴみたいなオリエンタルな曲」ということもおっしゃってましたけど、それが“つまらん”ですか?

「そうですね。“つまらん”はマセーゴの“Mystery Lady”にめちゃくちゃハマっていた時期に作った曲で、ビートやトラックに“Mystery Lady”の影響が出ていますね。

リフのループ感はNujabesの感じ。Nujabesはずっと好きで、“samurai”とかアルバムの各曲にNujabesの影響がちらばっていますね。

“つまらん”は、メロディと歌詞の一部は小学6年生の時に作ったものを復活させました。この曲はいろいろな人に聴いてもらいたいっていうことより、自分がやりたいようにやる感覚を優先して作っています。アルバムに入れるか迷ったんですが、新曲5曲の内1曲はたくさんの人に聴いてもらうことを意識した曲ではない方が、他の4曲が際立っていいんじゃないかと思って入れることにしました」

──“つまらん”は自己嫌悪の曲に聞こえました。

「どうなんですかね……。暗いですよね(笑)。小学生や中学生の時に歌詞を書いていた古い手帳を引っ張り出してきて、〈最初に作った曲ってこれか〉と思って中村さんにメロディを聴かせたら、〈いい曲になりそう!〉と言われて。AメロとBメロはほぼ当時の歌詞のままなんですが、〈なんでこんなに暗いんだろう?〉と思いました(笑)。歌い出しの〈現実、夢に成り去って今に成っていた〉という歌詞は〈ませてるなー〉って。サビの歌詞は作り直しました」

──虚無感というか厭世的が漂っている歌詞ですよね。

「(笑)。かっこつけていたのかなと思います」

──ご自身の記憶では、どんな子供だったのでしょうか?

「本当に厨二病だったと思います(笑)。他人にあまり期待していないし、自分にも期待していない。〈人間ってどうせ〉〈人生ってどうせ〉みたいな気持ちがすごく強くて、冷めていましたね。その小中高時代の自分に答えをあげるぞっていう気持ちでインディ時代の曲は作っていたんですが、“つまらん”はその原点のような歌詞だなと思いました」

──一方、加筆したという〈I say, 愛してるって素直になれてれば良かった〉から始まるサビは、小学生では書けない歌詞かもしれません(笑)。

「書けないと思います。今の自分なりの答えを混ぜながら完成させました」

──昔の歌詞にあるようなマインドとは大きく変わりましたよね。

「そうですね。londogというチームもできましたし。インディ時代は本当にお金がなかったんですが、少しずつ余裕が持てるようになって。お金がないと、人ってめちゃくちゃ余裕がなくなるんですよね(笑)」

──心が荒みますよね。

「そう。めちゃくちゃ荒んでいたインディ時代からメジャーデビューさせていただいて、ようやく最近精神的にも余裕がある曲を作れるようになったかな。でも、〈まだちょっと暗いな〉みたいな感じですね」

──心が豊かになった変化がダイレクトに歌詞に出ていますよね。

「そうですね。お金がなくて荒んでいたり余裕がなかったりしたのも、小学生時代からの暗いマインドも自分のアイデンティティなので、メジャーにいってそういう部分が変わったら曲が作れなくなるんじゃないかなという不安があったんですが、〈よく考えたら、幸せを少しずつ感じられるようになった状況を曲にしても全然いいじゃん〉と思ったんです。私は基本的にマイナー調の曲が好きなんですが、〈いつかすごく明るい曲も作れるようになったら実は楽しいんじゃないか〉と思って、変化を楽しみながら作るようになりました」

 

アメリカへ旅立つワクワクを詰め込んだ“good morning”

──“つまらん”のような原点を表す曲がありながらも、1曲目のリードトラックの“good morning”はとてもポップな曲ですよね。

「確かにポップですね。いろいろな人に聴いてもらえるような爽やかで明るい雰囲気の曲を作ろうと思って頑張りました」

──序盤は影があるのですが、中盤のハミング調のコーラスで一気に明るくなる印象があって。

「嬉しいです。スティーヴ・レイシーの“Bad Habit”のコーラスがとても好きで〈いいな〉と思っていて、“good morning”はテンポ感も“Bad Habit”っぽいのでハミングパートを入れました」

──人間や世界といった大きいテーマを歌ってる曲でもありますよね。

「そうなんですよ。〈SXSW〉への出演(2024年3月15、16日)を控えていて、〈アメリカに行くぞ〉って思っていた時に作った曲だし、スティーヴ・レイシーはLAのアーティストだし。初めてアメリカに行くので、〈どんな景色が見られるんだろう?〉〈どんなことが学べるんだろう?〉と思ってワクワクしながら作ったから、大きいテーマになってますね」

──壮大さがありながら、a子さんの根深いパーソナリティとも繋がっている歌詞になっていることについてはどう思いますか?

「やっぱり歌詞を書いていてどの曲についても思うのが、結局小中高生時代の不安や暗いところで悩んでいたことに対する答えを入れちゃうなってことなんですよね。“good morning”も〈アメリカ、ワクワク〉みたいな歌詞なんですが、どうしてもその頃のことと繋げちゃうんです。あとで聴いて、〈(過去と現在が)混ざっているな〉と思いました」

──〈明るい朝日を見ててよ/いつも奪うばかりの僕らだけど〉という歌詞があって、地球環境に対する人間の罪みたいな要素も入っているように感じたのですが、それについてはいかがでしょう?

「その辺はジャミロクワイやレディオヘッドの曲を聴き直しながら改めて歌詞を読んでいて、自分自身が今抱えている世界に対する疑問に通じるなと思って、そういう方向性で書いてみました」

──また、〈赤いルージュ〉というワードもひとつのキーになっていますよね。

「大好きな漫画に〈口紅をつけるところから女の子はスタートする〉みたいなセリフがあって、〈赤いルージュっていいな〉と思って入れました。小説や漫画を読んで自分が気に入ったワードを常にメモっているんです」