ハウスとロックを組み合わせてa子にしか作れないサウンドを
──アルバムには“ベージュと桃色”という曲がありますが、a子さんの歌詞には色にまつわる言葉が度々出てくるイメージがあります。自覚はありますか?
「“ベージュと桃色”は単に自分の特に好きな色をふたつ並べただけなんです。小説を読むのは苦手なんですが、単語だけをバーッと見るのが好きで、ある時〈赤と青〉という単語が飛び込んできて、〈何々と何々〉っていいなと思って歌詞に使おうと決めました。
あまり深く考えずに“ベージュと桃色”にしたんですが、その後調べたら、ベージュは良い意味合いがある色で、桃色は悪い意味合いで使われることがあるということを知って、〈桃色から最後はベージュになれる〉という流れで歌詞を書きました」
──“ベージュと桃色”はアップテンポなキャッチーな曲ですよね。
「この曲は工藤静香さんの“メタモルフォーゼ”にハマっている時に、中村さんに〈この年代(1991年頃)のアイドルっぽい曲が作りたいです〉と言って作りました。急にハウスが始まる構成もすごく好きで、〈高橋洋子さんの“残酷な天使のテーゼ”も急にハウスが始まるよね〉という話になって、その2曲をリファレンスに作ったんです」
──歌詞ではちょっとやけくそな恋愛感情が描かれていますが、そこも“メタモルフォーゼ”の影響ですか?
「そうですね。そういうイメージはありました」
──“天使”には〈ピンクの花〉というワードが出てきますが、この曲は珍しく四つ打ちですよね。
「インディ時代の曲はテンポが遅い曲ばかりだったっていうこともあって、“天使”で初めて早い四つ打ちの曲を作りました。〈エイサップ・ロッキーの“Sundress”のイントロをやりたい〉って中村さんが言い出して、全体的なビートは“Sundress”をリファレンスにしています。あと、ペギー・グーの“Starry Night”にもハマっていて、あのハウスの感じをやりたくて。Dメロは“ベージュと桃色”と同じで、“残酷な天使のテーゼ”のハウスになる展開を参考にしました。
長い音楽の歴史の中でジャンルは出尽くしていますが、いつかa子にしか作れないサウンドを作るのが自分たちの目標なんです。〈このジャンルとこのジャンルを組み合わせると、今まで聴いたことのない聞こえ方がする〉というものをやりたくて。それで、ハウスとロックを組み合わせてうまくポップスにできるかということにチャレンジしたのが“ベージュと桃色”と“天使”ですね。
他にもジャスティスやダフト・パンクを聴いてフレンチハウスを勉強しつつ、ハウスとロックの組み合わせに今も挑戦中です」
Y2Kサウンドと現代の恋愛模様を奏でる“miss u”
──一方、“ベージュと桃色”と“天使”が続く中盤の流れの前に収録されている新曲“miss u”は、ロックバンド感が強い曲ですよね。
「“miss u”は、ふんわりと90年代や2000年代初期のサウンドをやりたいと思って。具体的には、ピンクパンサレスやNewJeansがやっている2000年代初期の感じとトミー・リッチマンがやっている90年代の感じ。
あと、最近ではビリー・アイリッシュの新しいアルバム(『HIT ME HARD AND SOFT』)のMVも90年代の雰囲気を出していて、音楽シーンがローファイ志向からそういう流れにだんだん変わっていっている感じを意識して、思いっきりそういう方向性のサウンドをやってみました。JUDY AND MARYの“そばかす”もリファレンスにしつつ、ドラムを今っぽくしたくてオリヴィア・ロドリゴの“bad idea right?”の音作りを意識しました」
──終盤の派手なソロの変わった音はギターですか?
「ギターですね。オリヴィアの“bad idea right?”にああいうかっこいい音が入っていて、真純や中村さんと〈これ、何の音だ?〉〈シンセ? ワーミー?〉という話になり、オリヴィアのいろいろな動画を見ていったらワーミーであることがわかったんです。真純がオルタナティブロック的なソロを弾くのが得意なので弾いてもらいました」
──音の手触りとしては結構陽気ですが、歌詞では恋愛における嫉妬や憎悪や喪失感が歌われているように思いました。
「〈とりあえず90年代だ!〉と思ってすぐに神保町の古書店に行って、90年代のファッション誌や悩み相談が載っている雑誌をたくさん買って、時代感を感じながら、自分の好きなワードや世界観を集めていきました。
でも、サビにはちょっと今の感じを入れることを意識して。オリヴィアの曲みたいにうまくいかない恋愛の歌詞にしようかなと思ったんですが、友達の子からうまくいっていない恋愛事情の話を聞いたので、それをモチーフにしました。その子に〈歌詞にしていい?〉って聞いたら、ちょっと嬉しそうに〈いいけど〉って言っていたので(笑)」
──〈かわいい人と一緒になれば良いじゃない/幸せにはなって欲しくもないの〉という歌詞が特に生々しいなと。
「(笑)。うまくいかなかったんだなって思っていただければと」