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同じ考えを持った人

 アルバムはアウトロも含めて全15曲で構成され、全曲のプロデュース/ミックスはピートが担当。己の王道を行くバウンシーなサンプリング・ビーツはいつもと変わりなく、ざらついた音像をNY作法の温かいグッド・ヴァイブで満たすものだ。そんな音世界とコモンの相性の良さはアレサ・フランクリン“Day Dreaming”を用いた冒頭の“Dreamin’”からも明白で、オーセンティックながらもノスタルジーに沈まない粋な感覚は不思議とフレッシュに響いてくる。

 「コモンとの仕事は新鮮な息吹を与えてくれた。俺たちは素晴らしいプロジェクトを作り上げたんだ! コモンは素晴らしいソウルの持ち主で、俺と同じ考えを持った人と繋がるのは簡単だった」(ピート・ロック)。

 「ピートはヒップホップと音楽史上もっとも偉大なクリエイターの一人で、彼と一緒にアルバムを作るのは夢だったんだ。一緒になって彼のレコードやMPCのビートに囲まれたとき、ヒップホップの中にソウル・ミュージックでずっと好きだった精神を感じて、なぜこのアートフォームの一部になりたかったのかを思い出した。彼のビート、プロダクション、スクラッチは、僕がただ自由にラップできるように導いてくれた。まるで家にいるような気分だったよ」(コモン)。

 柔和なループにカニエの“All Fall Down”をあしらった“Chi-Town Do It”、ロリータ・ハロウェイのディープな声ネタを効かせた“This Man”、カーティス・メイフィールド版の“We've Only Just Begun”をパーカッシヴに用いた“We’re On Our Way”……と、コモンの地縁で繋いだネタ選びにも膝を打ったりもしつつ、美しい流れは紡がれていく。そのなかでヒップホップへの愛と敬意が橋ネタ一発で明快に描かれるのは先行シングルだった“Wise Up”で、「出自となるブーンバップの精神を感じるけど、同時に前向きで新しい感じもする。新しい光を放ちながらもヒップホップのファミリーに直接語りかける曲だから、これを最初のジョイントにしたかった」(コモン)という通りの荒々しい息遣いがピートのターンテーブル捌きからも伝わる最高の仕上がりだ。

 そうやって大半の曲では主役が1対1の関係で物語を進めていくが、助演のパフォーマンスも作品に欠かせない煌めきを与えている。馴染みのビラルが“So Many People”に参加し、“A GOD(There Is)”では映画「リスペクト」でアレサを演じたジェニファー・ハドソン(コモンと交際中でもある)が登場するのもおもしろい。さらに、雨ネタに陽光ネタを浴びせる構成の“When The Sun Shines Again”には唯一の客演ラッパーとしてポスデヌス(デ・ラ・ソウル)が登場。ジャジーなネタに合わせてPJが歌う“Everything’s So Grand”も終盤を鮮やかに彩っている。

 そのように懐かしさを超える普遍的な良さを備えた『The Auditorium Vol.1』は幅広い層を魅了しうる内容かもしれない。多数決的な話題作や話のタネとして纏うための音楽もいいが、少なくとも、そもそも自分自身がどんな気分になりたくてこういう音楽を聴いてきたのかを改めて考えれば、これこそが望んでいた完璧なもののように感じられるという人は多いはずだ。そういう人なら、きっとアルバム表題を見てレジェンドたちの今後にも期待してしまうことだろう。

 「もちろん〈Vol.2〉もありえるけど、ピートと僕にはたくさんの可能性がある。これは僕たちがもっと創作していくスタートだと信じているよ」(コモン)。

コモンが客演した近作を一部紹介。
左から、ロバート・グラスパーの2022年作『Black Radio』(Loma Vista)、キーヨン・ハロルドの2024年作『Foreverland』(Concord Jazz)、レイラ・ハサウェイの2024年作『Vantablack』(SoNo)

ピート・ロック関連の近作を一部紹介。
左から、ピート・ロック&ザ・ソウル・ブラザーズ名義の2020年作『Petestrumentals 3』、ピート・ロックの2022年作『Return Of The Sp-1200 V.2』(共にTru Soul)、『Petestrumentals 4』(Vinyl Digital)、客演したブランディ・ヤンガーの2023年作『Brand New Life』(Impulse!)

左から、ジェニファー・ハドソンの2021年作『Respect』(Epic)、デ・ラ・ソウルの2016年作『And The Anonymous Nobody』(A.O.I.)