憂鬱や孤独に苛まれる人が聴いたときに力が湧く、自分を信じたいと思える音楽
――ギターをフィーチャーするといっても表現の仕方はさまざまですけど、具体的にどんなことを考えていましたか?
「ベタすぎて躊躇していた曲調にも、真正面から向き合ってみたいなと思いました。たとえば1曲目の“GUITARHOLIC”は、レニー・クラヴィッツのようにひとつのリフを一気通貫で繰り返しながら、その上にメロディや展開が乗っかっている曲です。ロックの歴史でたびたび登場してきたオーセンティックなフォーマットだけに、前は避けていた手法でした。ただ、今なら既存のものをなぞる感じではなく、自分らしい表現ができそうだったので」
――ギターソロが全曲に入っているのもポイントですよね。
「そうですね。ギターソロは奥が深いというか、歌がないぶん、起承転結が必要だし、リスナーの耳が興味を失わないように、要所で仕掛けを入れる必要もある。と考えた末、今回は各曲で奏法を決めたアプローチをしてみました。
“GUITARHOLIC”ではフィードバック、“Heaven”ではタッピングとアルペジオ、“HEY BLUE”ではワウペダル、“BLACK&WHITE”ではクラシックギターを駆使していたりと、すべてプレイスタイルを変えて弾いています」
――全曲でギターソロの奏法を変えるのはなかなかできないことだと思います。そのアイデアから“Heaven”で新鮮なタッピングが出てきたわけですか。
「直接的なきっかけとしては、スガ シカオさんのサポートギタリストをこの夏やらせていただいたのが大きいです。そこでKAT-TUNに提供された“Real Face”を演奏したんですけど、作曲・編曲(リアレンジ)がB’zの松本孝弘さんで、タッピングがけっこうあったんです。ひさしぶりにタッピングを弾いたらすごく楽しかったし、自分の曲で使ったことはないから取り入れてみようかなって(笑)」
――楽曲のメッセージといった部分でのテーマは?
「私はギターを持つと、強くなれる気がします。普段はない勇気とか誇りが抱ける。ブルーズという音楽をずっと愛してきたことにも繋がりますが、そんな大好きなギターの可能性を最大限に追求し、憂鬱や孤独や疎外感に苛まれている人が聴いたとき、力が湧いてくるような、自分を信じたいと思えるような、パワフルでエネルギッシュな作品を目指しました」
――確かに、憂鬱や孤独が滲む歌詞も今作は多いです。
「自分の足で地を踏みしめて、ひとりで立っていられる人というのは強くてカッコいいと思う。人間の、大人の究極形だと思うんです。それができて初めて人は誰かと愛し合える、共存できるんだろうなって。自分自身との闘いに打ち勝つ強さみたいなものも表現したかったんですよね」
私まだ音楽嫌いになりきれてない
――リード曲の“GUITARHOLIC”は、まさしく中毒のようにのめり込む姿勢があふれているというか、サビの歌詞どおり、自分の本性を引きずり出そうとする振り切ったエネルギーが感じられました。
「人との関係を築く上で、相手に開いてほしいときは、自分から開くようにしています。心理学でいう自己開示ですが、テクニックとしてではなく、自ら開かずに開いてもらおうというのはアンフェアだと思うので。そういう姿勢の表れかな。実際に会話をするときも、こうして曲にするときも、私の繊細さや醜さをどう受け取られるのか怖い気持ちはあるんですけど、まずはちゃんと開いてみる。それが誰かの心をノックできる第一歩なんだろうなと思います」
――あとは、ミニアルバム全編を通して、Reiさん自身が音楽そのものの楽しさをもう一度確かめようとしているような。そんなふうに聴こえる節もあったりします。
「わっ、ありがとうございます。ぶっちゃけ、今年の春頃は人生で初めて音楽が嫌いになっていたんですよ。本当に〈何も聴きたくない〉〈うるさい〉と感じるくらい。長い戦いの末、大切な人を亡くしまして、愛とか友情とか、目に見えない、触れられない、残らないものが、何もかも嘘くさく思えてしまったり。音楽を含め、これまで自分が信じてきたことまで疑わしくなっちゃったんです」
――人知れずピンチな時期があったんですね。それほどのことが起きていたとは……。
「ステージに立つのがやっとな日もありました。でも、友人のためにアルバムを作る機会ができて。偶然だったのですが、そこでだいぶ救われたのかも。〈あっ、私まだ音楽嫌いになりきれてないな〉と思えた。だから、おっしゃっていただいたとおりで、この『XINGS』は自分の音楽愛を再確認するように作った面もすごくあるんです」
――音楽から完全に離れてリフレッシュなどもされたんですか?
「その方法も考えたんですけど、苦しんだあげく、私はより音楽と向き合うほうに行きましたね。自分の原点であるクラシックギターをたくさん弾いてみたり。
オーディエンスやリスナーの方々を喜ばせることがエンタテイナーに不可欠だとは理解しつつも、まずは純粋な気持ちに立ち返りたかったので、シンプルにギターを弾いて〈ああ、このメロディきれいだな〉となる感情を確かめるとか。音楽家として致命傷を負った状態だし、どうにか大切なものをもう一度取り戻さなきゃと思ってました」
――だからこその爆発力や渇望感がありますよね、『XINGS』には。今の話を踏まえて聴くと、作品の深みがさらに増しそうです。
「(笑)。自分が味わった経験も、曲にメッセージとして表れている気がします。やっぱり人生と全力で向き合えば、誰しも苦悩と闘う瞬間が少なからずあると思うんですよね。ギターがどんなことがあっても私のそばにいてくれたように、『XINGS』が聴く方にとってそういう存在になったら嬉しいです」