吉田一郎とBOBOが阿吽の呼吸で生み出す強固なグルーヴ
――“GUITARHOLIC”“Heaven”“Spy Baby”には、吉田一郎(ベース)さんとBOBO(ドラムス)さんが参加されていますが、お2人とのやりとりで印象深かったことなどは?
「このトリオ編成は初めてでした。別々で共演経験はあったんですけど、今回いっしょに作れたのが嬉しかったです。TK(from 凛として時雨)さんやVaundyなど、お2人は最近、同じ現場でやる機会が多いみたいで、もう阿吽の呼吸ですよね。ベースとドラムが強固なグルーヴを生み出してくれると、ロックはものすごくカッコよくなる。それを目の当たりにできたのも大きかったなと思います」
――特に“GUITARHOLIC”“Heaven”は、骨っぽいグルーヴで。
「とにかくカッコいい2人の演奏は、爆アピールポイントのひとつです。アレンジの相談も乗ってもらったし、守破離と言いますか、スケール(音階)をどのくらい保ってどのくらい崩すかみたいな音楽的な会話もたくさんしました。
一郎くんは水曜日のカンパネラの詩羽さんのソロ作をプロデュースされていたりするので、夜な夜な長電話して私のアーティストブランディングについてのディープな話を聞いてもらったりもしました」
――ファンタジー感が強い世界観の“Spy Baby”は、どういう流れで生まれてきた曲なんでしょう?
「過去にリリースした“Lonely Dance Club”“ORIGINALS”のように、ジプシージャズやロカビリーの影響が出てます。ただ、差別化は図りたかったので、テンポをグッと落とすどんでん返しな展開を入れつつ、スローブルーズ的なギターソロを弾いてみました。
曲の主人公がスパイになったのは、サウンドが映画『007』っぽかったからです(笑)。他の楽曲とのバランスを加味すると、物語性が高い歌詞にしたいなとも思って」
――何かと緻密に考えてらっしゃいますね。
「悲しきかな、凝り性なので(笑)。前作の『VOICE』は1~5曲目までが長調で、6~7曲目が短調になっていて、今作の『XINGS』は1~5曲目までが短調で、6~7曲目が長調になっていて、短長をテレコにしてあります」
――それは気づかなかったです! もしかして、ジャケット写真の鏡っぽいアートワークも?
「対になる作品をイメージしているのと、私がギター、そして自分自身と向き合うという意味も込めています。他にも、ギターに見立てた衣装を着たりとか。いろいろ仕掛けもあったほうが、聴いてくださる方も楽しいんじゃないかと思いまして」
ビジョンやアイデアが豊富なMONJOEとの初コラボ
――MONJOE(DATS)さんとの初コラボレーションについてもお聞きしたいのですが、お2人の出会いというのは?
「2018年にGLIM SPANKYの主催イベントで、DATSと対バンさせていただきました。その後しばらくご縁はなかったのですが、ロックと初めて真正面から向き合うような今回の方向性で作るにあたり、私としてはいなたいサウンドで聴かせたくはなかった。
プログラミングやトラックメイキングにおいて、今の感覚を持っている人に頼みたくて。打ち込みとかクラブミュージックに明るいだけじゃなく、音楽の歴史にも造詣が深い人。リファレンスを伝えたときに話が通じるほうがいいじゃないですか。その観点でMONJOEくんにお願いしました。会っていない期間に、彼が手がけたNumber_iの楽曲、バンド以外のソロ作品を聴いていたのも大きいかな」
――MONJOEさんがアレンジとトラックメイクで参加されたのが、“Heaven”“BLACK&WHITE”“Good Job!”です。実際にコラボしてみての手ごたえを聞かせてください。
「想像していたとおり、MONJOEくんはビジョンやアイデアが豊富にありました。それでいて、私の存在と楽曲をちゃんと尊重してくれたのが嬉しかったです。自分の作風に染める感じではなく、2人ともカッコいいと思えるものを作ろうという姿勢がありがたくて。ほぼ同世代で、話しやすい人柄なのもよかったなと。
MONJOEくんとの曲は、ハイファイでモダンな音色を入れてくれたりして、絶妙なバランスで成り立っていて。生々しくて臨場感のあるギターと歌、整頓されたシャープな打ち込みのコントラストが印象的です」
――さっき話に出ましたけど、“BLACK&WHITE”のクラシックギターで弾いているソロもいいですよね。
「音楽愛を再確認するためにも、自分のルーツであるクラシックギターをどこかに入れたかったんです。
“BLACK&WHITE”はけっこうバキバキした曲なんですけど、そこからいきなり水中にドボンと入るような浮遊感が欲しくて。ボン・イヴェールみたいなドリーミーな雰囲気を、MONJOEくんにリクエストしました。ストリングスもうまく添えてくれて、いい塩梅になったなと思います」
――“Good Job!”は、ダブルベースやピアノ、トランペットなどが入った賑やかなアレンジになりました。
「途中でリミックス的な手法を取っているんですけど、ジプシージャズとかを打ち込みに混ぜたようなこの感じはスウィングハウスって言うらしいです。そこにラップを乗っけてみたり、MONJOEくんにスクラッチで遊びを入れてもらったり、ジャズギター風味のソロを弾いたり。ローリング・ストーンズっぽさもあるし、ハイブリッド。作っていて楽しかったです。
歌詞の内容も〈マテリアルなものがそんなになくとも、自家発電で気分がいい〉っていうゴキゲンな曲なので」