コラム

〈Red Bull Music Academy Tokyo 2014〉

シーンに介入するためのメソッド

1UP: Cart Diggers Live

 

“We love to witness when things happen”

 音楽のトレンドの情報交換をしていると、なんとなく最近、聴かなくなった音楽や耳にしなくなったジャンルの話題が多くなることがある。そんな時、誰もが口にする「あれは終わったよね」というフレーズ。なんともいやな響きだが、一通り味わったという征服感に満たされる瞬間なのだろう、口にしている当の本人はまんざらでもない。しかし本当に当の音楽が終わったのかどうなのか全く分からないし、いまや世界中で音楽は演奏され聴かれている。誰かが聴かくなったことが全体にどんな影響を与えているのかどうか、もはや誰にも分からない。もちろんその逆も然りだが、むしろどんな音楽も誰かがどこかで聴いている時代になったのだ。

 最近、そのことを痛感する出来事があった。それがRed Bull Music Academy Tokyo 2014の開催であり、このイヴェントが公式HP上で無料(!)公開している、ドキュメンタリー・フィルム『DIGGIN’ IN THE CARTS』の発見だった。このドキュメンタリーは、ゲーム・ミュージックの歴史、その魅力と影響を、開発初期から遡り現在に至るまで、クリエイターや関係者、またその影響を受けてきたクリエイターたちへの取材を通じ、明らかにする映像作品だ。いくつかのエピソードに分けられて公開されている。会社員としてゲームの音楽にコミットしてきたクリエイターたちの創り出した音が、ゲームマーケットの拡大によって、世界中のゲームファンの耳を刺激し、そのサウンドが今のミュージック・クリエイターを育ててきたことが見て取れる稀な作品だが、何よりも面白いのはクリエイターたち自身が先輩クリエイターのことを意識し、常に変化する技術的環境下でさらにゲーム音楽の可能性を広げることを、それぞれが課題として取り組んでいたことだ。あらためて面白くすることが可能性を保証する、というポピュラーの原則を再確認したドキュメントでもあった。

 そして、この大好きな音楽の面白さの秘密を辿り、一線で活躍するクリエイターやプロデューサーと過剰な想像と現実的な問題を抱えてシーンに介入しようと試みるクリエイターが一堂に会す場所、それがレッドブルの世界で開催するRed Bull Music Academyだ。ゲーム音楽のドキュメント同様、ポピュラーミュージック(ジャズ以外)では、世界的にみても稀な企画だ。今年は念願かなっての東京開催となる。世界から参加者を募集し、講師となるクリエイターを集めアカデミー実施期間中、東京都内各所でレクチャー、ワークショップ、コンサート、イヴェントが開催される。そもそもは尊敬するクリエイターを呼んで、話を聞いてみようというシンプルなスタイルだったようだ。カウチに腰掛けて、カウチ目線で話をきこうというリラックスした雰囲気の中、熱い議論がかわされる。一線を引かないクリエイティブの出会いは、東京では何を残し、生むのだろう。

 

RedBull sings Tokyo body electric “tokyo is becoming tokyo”

 下欄のイヴェント・カレンダーを観ると、このレッドブル・ミュージック・アカデミーのとてつもない規模が分かるだろう。アカデミー開催期間中、東京はレッドブルが走らせる乗り物になったかのようだ。イヴェントは音楽のライヴ・イヴェント、エキシビション、トークショー、カルチャーフェアと呼ばれる催事で構成されて便宜的に10月を一学期、11月を二学期と呼んでセメスターで分けている。イヴェント初日は“土俵入り”で最終日は“千秋楽”とタイトルされ、初の東京開催を印象づける。

 ライヴは、いわゆるベニューを使った音楽のギャラリーの企画展示のようでもあり、ベニューをホワイトキューブ化したエキシビションのようでもある。エレクトロのグルーブ、チルなどなどを垣間みる絶好の機会だろう。個人的な意見で恐縮だが、音楽イヴェントの中では、前述したドキュメンタリーに因みゲーム音楽のクリエイターを集めたイヴェント”1Up; Cart Diggers Live” (11/13)、新宿のカラオケ館を使ったカラオケ・イヴェント!?“Lost in Karaoke”(10/22)、ノイズ系アーティストが朝まで付き合い、面倒みてくれるらしい“Wails to Whispers”(10/17)に注目している。大友良英真鍋大度らのトークショーも楽しみだ。即興を語る人、数学で表現する人の言葉を聞いてみたい。

test pattern [n°6] - Ryoji Ikeda

 

 今回の初の東京開催を記念し公開が決まったというのが池田亮司の“test pattern [n°6]:Ryoji Ikeda”だ。11月5日~9日まで展示、入場料はなんとワンコイン、500円だ。彼がかつてレーベルのディレクターを務めたスパイラル・ホールでの開催となる。ほぼ一ヶ月もの間、東京ではエレクトロに関連した音楽の海に浸される。ストリートからハイアートまで、ゲームからカラオケまで、壮大な電子音の波にもまれる。レッドブルが何故、これほどまでにある種の音楽にこだわるのか疑問に感じる人もいるだろうが、それはやはり今がそういう時代なのだからとしか言えない。音響系という音楽ジャンルを世界に送り出した東京でも、もしそんなことに距離を感じる自分がいるなら、この機会に波に飛び込んでみてはいかがなものか。東京がこんなに東京になることもそうないだろうし、こんなにもたくさんの波形を楽しめる次のチャンスはいつくるのか誰にもわからないのだし。

追記:開催後、アカデミーの拠点となる場所はスタジオとして引き続き運営されることが決まっている。スタジオのある建物は建築家隈研吾が手がけた。アカデミーはインフラを東京に託し、次はどこに向かうのだろう。

 

EVENT INFORMATION

RED BULL MUSIC ACADEMY PRESENTS
10/12 Dohyo-Iri(土俵入り)  11/14 Senshu-Raku(千秋楽)

 

MUSIC EVENT

【Dohyo-Iri】
○10/12(日) 22:00 AIR
○出演: Kerri Chandler, Ossie, Mickey de Grand IV

【Red Zone】
○10/14(火) 22:00 HARLEM
○出演: Just Blaze, Marley Marl, Zebra Katz, DJ KOYA

【Dorian Concept Live】
○10/16(木) 20:00 WWW
○出演: Dorian Concept Live with Tokyo Secret Strings Quartet, Om’Mas KEITH, TOKiMONSTA

【Wails to Whispers】
○10/17(金)
WAILS: 20:00-24:00 / 出演: 不失者暴力温泉芸者
WHISPERS: 24:00-05:00 出演: Robert Rich, 灰野敬二 with Hurdy Gurdy SuperDeluxe

【EMAF Tokyo 2014 (Day 1)】
○10/18(土) 15:00 Liquidroom
○出演: Luke Vibert, Lone, Addison Groove, Holly Herndon

【EMAF Tokyo 2014 (Day 2)】
○10/19(日) 15:00 Liquidroom
○出演: James Holden, Matthewdavid, Untold

【DBS - with MALA & COKI】
○10/18(土) 23:30 Unit
○出演:: MALA & COKI (Digital Mystikz), GOTH-TRAD, LAO

【The Garden Beyond】
○10/20(月) 19:30 東京国立博物館/法隆寺宝物館
○出演: DJ KRUSH,太鼓: 小田洋介,尺八: 森田柊山

【Terabyte Transfer】
○10/21(火) 19:00 Secret Warehouse
○出演: Xosar, Alejandro Paz, Palms Trax, La Mverte, Olefonken

【Lost In Karaoke】
○10/22(水) 20:00-23:00 ○オンライン生中継 - カラオケ館 新宿店
○出演: Seiho, tofubeats, Moodman, Yoshizawa Dynamite.jp, D.J.April

【No Requests】
○10/24(金) 23:00 Womb
○出演: Special Request, Randall, dBridge

【Sinewave Sunday】
○11/2(日) 22:00 ORIGAMI
○出演: Mathew Jonson , Benji B, Toll Crane

【6852: Stratovolcanic Vinyl】
○11/4(火) 22:00 Aoyama Hachi, Aoyama Oath, Aoyama Tunnel
○出演: Ben UFO B2B DJ Nobu, emufucka, Pleasure Cruiser

【Harmonics & Heartbreak】
○11/6(木) 20:00 Galaxy - Gingakei
○出演: WIFE, Kadhja Bonet, Plasma Rüby

【Back To Chill - with The Body】
○11/6(木) 23:00 clubasia
○出演: The Body , GOTH-TRAD,BERSERKER

【No Sleep Til Zanzibar】
○11/7(金) 22:00 Legato
○出演: Tony Humphries, Floating Points, DJ Nori

【The Roots Commandment: Tokyo In Dub】
○11/8(土) 23:30 Unit
○出演: Jah Shaka, Fat Freddy’s Drop, Cojie from Mighty Crown

【Chaos Conductor】
○11/11(火) 19:30 ホール新世紀
○出演: EYヨ(BOREDOMS)、大友良英、2014 Red Bull Music Academy参加者

【Scales Of Infinity】
○11/12(水) 19:00 開演 白寿ホール
○出演: Lubomyr Melnyk, Hildur Guðnadóttir

【1UP: Cart Diggers Live】
○11/13(木) 19:00 Womb
○出 演: Rustie vs Yuzo Koshiro,大久保博,井上拓

【Senshyu-Raku】
○11/14(金) 24:00 Liquidroom
○出演: Carl Craig, Floorplan , Pépé Bradock

 

TALK EVENT

【A Conversation With Otomo Yoshihide】
○10/23(木) 18:45 学校法人・専門学校 HAL東京 コクーンタワー Aホール
○出演: 大友良英

【A Conversation With Daito Manabe】
○11/5(水) 18:45 3331 Hall 
○出演: 真鍋大度

 

EXHIBITION

【test pattern [n°6] : Ryoji Ikeda】
○11/5(水) - 11/9(日) 11:00-23:00(最終入場時間 22:30), 11/7(金) & 11/8(土)24時間○Spiral Hall - Spiral 3F ○作品: Ryoji Ikeda Installation

 

CULTURE FAIR

【Culture Fair (Day 1)】
○11/8(土) 12:00 - 20:00 Ba-Tsu Art Gallery
○出演: Mimu MerzNischay ParekhWatercolours

【Culture Fair (Day 2)】
○11/9(日) 12:00 - 20:00 Ba-Tsu Art Gallery
○出演: Laura J MartinSummerDaniel Limaverde

 

www.redbullmusicacademy.jp/jp/events

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