コピーコントロールCDの賛否を巡って
とりわけ日本の音楽産業は2000年以降、迷走していたと言えるでしょう。その象徴とも言える現象が、コピーコントロールCDことCCCDの導入です。海賊版CD-RやMP3の違法アップロード対策として、その名の通りCDから音楽データをパソコンにインポート(取り込む)することができない=MP3にすることができないCDとして2001年に欧米で、2002年に日本で登場したのがCCCD。意図的にディスクにエラーを書き込んでいたことでコピーを防ぐシステムになっていたCCCDは、理論上、音質の劣化を避けられず、多くのリスナーから不評を買う結果に。そもそもエラーだらけのCCCDはCDの規格にも反しており、厳密には〈CDですらない〉円盤だったのです。
アーティストも同様に、従来通りのCDでのリリースを宣言した山下達郎や、ジャケットや歌詞など作品を通して意思を示した奥田民生(“スカイウォーカー”のジャケット)、ECD(『MASTER』のジャケット。日記本「ECDIARY」にはCCCDをめぐる顛末が記述あり)、RHYMESTER(“ザ・グレート・アマチュアリズム”の歌詞)などが、CCCDに対して懐疑的な姿勢を見せました。中にはコピー反対という本来の目的からCCCDを受け入れるアーティストもいましたが、環境やパソコンの機種によってはほんの少し工夫すればCCCDでもコピーできることが明らかになり(2024年現在の光学ドライブであれば、ほとんどそのままコピーできるでしょう)本来のコピーガードという目的も果たせず……。CCCDの登場と2004~2005年における撤退は、CDバブルの終焉を物語る、業界の〈黒歴史〉と言えるでしょう。
握手券付きCD商法の功罪
音楽産業の迷走について語るならもう一つ、避けて通れないのが、2000年代末以降のAKB48などに代表される、いわゆる〈握手券付きCD〉ビジネス。CDにアイドルイベントの握手券、ないし人気ランキングの投票権が付いており、熱心なファンは同じCDを何十枚も購入する……というもので、あまりにも音楽の実際の流行とチャートアクションが乖離するこの商法は、賛否両論でした。ただ〈推し活〉という言葉がここまで広まり、推しのために〈CDを積む〉ことが一般化した現在では、この商法も見慣れたものになってしまい、批判はされつつも当時ほどは異端視されていないかも知れません。
そもそも、前述のタイアップブームの実像(CDが売れなかったら解散!)――音楽そのものよりもメディアや企画を通じて知る、アーティストの人柄やイメージによってCDを買うかどうか決める――を考えれば、既に1990年代やそれ以前から〈握手券付きCD〉ビジネスの萌芽はあったと言えましょう。
かくして2000年代~2010年代と、急速に下降していくCD市場。日本とドイツは(この2国の技術者たちの協力によってCDが誕生したのは前回を参照)それでもCDが細く長く生き残った方ですが、2000年前後のピークを考えれば、盛者必衰の感は否めません。CDの歴史、として総括すればざっとこんな感じでしょうか。
こんなネガティブな感じで終わるの?とお思いでしょうが、底まで来れば上がるだけ。この連載の第1回目でも書いた通り、近年はCDのセールスが初めて微増し、Z世代によるCDリバイバル現象の気運も見え始めており……。レコードやカセットが緩やかに復活したように、1990年代のCDバブルとは別の形で、カルチャーとしてのCDの再発見・再定着を模索し、見守ることが、このCD再生委員会のイシューでございます! そう、CDに刻まれたメロディーは〈永遠〉を約束されているのだから……。
参考文献
クラブハウス「オリコンNo.1HITS500-オリコンチャート1位ヒットソング集-下 1986〜1994」
津田大介「だれが「音楽」を殺すのか?」
■CDセールス関係
https://www.indiespark.tv/music/10-of-the-best-selling-albums-of-the-90s/
https://www.billboard.com/pro/taylor-swift-blackpink-selling-cds-vinyl-price-spikes/
https://www.aei.org/carpe-diem/animated-chart-of-the-day-recorded-music-sales-by-format-share-1973-to-2022/
https://www.oricon.co.jp/news/2034862/full/
■CCCD関係
https://www.asahi.com/tech/apc/041130.html
https://xtech.nikkei.com/it/members/NBY/techsquare/20031204/1/
■MP3関係
https://www.inter-bee.com/ja/magazine/archive/special/detail943a.html?magazine_id=1098
https://www.npr.org/sections/therecord/2011/03/23/134622940/the-mp3-a-history-of-innovation-and-betrayal
■その他
https://www.karaoke.or.jp/03nenpyo/03_02.php
https://www.phileweb.com/interview/article/200909/01/25.html
PROFILE: Kotetsu Shoichiro
ミュージシャン(トラックメイカー/DJ)。90年生まれ、香川県出身。ダンスミュージック全般を手がけ、ラッパーやゲーム音楽、CMなどに楽曲提供の実績多数。2021年にはラッパー・T-STONEへの提供曲“Let’s Get Eat”がBillboard JAPANのTikTok Weekly Top 20で1位を獲得。また2022年にはtofubeatsのアルバム『REFLECTION』収録の“Vibration feat. Kotetsu Shoichiro”へラップで客演し話題を呼んだ。ライター/インタビュアーとしてはミュージック・マガジン、Quick Japan、CINRA、関西ソーカルなど数々の媒体に寄稿。ほか、さとうもか“Lukewarm”“Loop”をはじめ他アーティストのMVなど映像/アニメーションの編集も手がけるなどジャンル/形式に囚われない幅広いスタイルで活動をおこなっている。
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