ゴシップの絶えないクリス・ブラウンだが、〈活動歴10年〉などの意味も持つというタイトルにある種の潔さも窺わせる2年ぶりの新作は、ポップス~EDMに寄った近年の路線からR&Bに軌道修正したというもの。ディプロらが制作した序盤の曲こそ前作~前々作のムードを引き継ぐも、アッシャーとのスロウ・ジャム“New Flame”あたりからヴォーカル濃度を高め、R・ケリー曲の一節を引用してトレイ・ソングスと戯れた後にR本人との共演曲を登場させるなど、狙いはあきらかだ。ケンドリック・ラマーが絡む秋色なソウルやブランディやジェネイ・アイコとの合体も含め、ポップスターとしての煌めきをキープしたまま、これまでにない凄みで迫る重厚な作品。MJ節が眩しい“Fine China”などはデラックス盤で。