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ダブを通じて知ったエンジニアの重要性

――そもそもダブという手法があなたに与えた衝撃は、どんなものでした?

「僕の音楽にとって、という意味? うーん。大きな影響としては、エンジニアの仕事にもっと光を当てるようになったこと。エンジニアをひとりのミュージシャンとしてとらえ、単にバンドの音楽を記録するだけでなく、クリエイティブな役割をもっと与えること。

ダブを知る前の僕は、そんなふうに音楽の作り方を考えたことがなかった。僕らはバンドで演奏し、エンジニアはそれを録音するというプロセスを、それぞれ別ものと見なしていたんだ。でも、ダブミュージックでは、音楽はミュージシャンとエンジニア両方の貢献が必要で、それがすべての真実だとも言える。

そうやってエンジニアの貢献に気がついて、その観点から音楽に接するようになると音楽がより深くわかる。モータウンサウンドや他の優れたソウルミュージックのサウンドには、それを作り出したエンジニアの存在があるのに、彼らはミュージシャンのように尊敬されることがなかった。ジャマイカ音楽では、リー・スクラッチ・ペリー、キング・タビー、ジョー・ギブスといったエンジニアたちを頼りに多くのリスナーがレコードを探しているし、実際に彼らの仕事ぶりがあのサウンドを成立させている。

〈シンプルさが大事〉と言うと、簡単に音楽を作れるように聞こえるから嫌なんだけど、本当にすごいジャズミュージシャンがブルースを演奏しているとき、弾きまくったり、たくさんの音を重ねたりして目立ちたがる必要はない。1音か2音で凄みを表現できるから。マイルス・デイヴィスが良い例だよ。少ない音数でも、背後にある意図のおかげで多くのことが表現できる。それと同じような学びが、ダブミュージックにもあると思うんだ」

 

不完全な音楽にアイロンをかけて整える必要なんかない

――ジャズとダブの比較、面白いです。今日選んでもらった5枚のレコードは、いずれも1970年代から1980年代の作品でした。音楽にまつわるテクノロジーがどんどん先に進んでいく現代にあっても、まだ若いリスナーが過去から学ぶものは多いと思いますか?

「もちろん。それをいちばん感じるのは、ボーカルについてだね。コンピューターが登場する前、ボーカリストはパフォーマーとして歌の世界を演じきらなくてはならなかった。昔もある程度はテープで編集できただろうけど、レコーディングするときは最初から最後まで全部歌って、パフォーマンスとして満足しようとした。今みたいにデータ上でちょっとずつ置き換えたり修正したりするんじゃなくてね。今ではAuto-TuneやMelodyneのような、声を完璧にするために使われるソフトのせいで、かつてあったような些細な部分でのオリジナリティがすべて失われてしまって、みんな似たように聴こえてしまう。

ただひたすら歌い演奏するプロセスは、音楽の訓練でもあるんだ。それを積み重ねていくことが音楽に大きな影響を与える。さらには、演奏がうまくいかず、ちょっとしたミスに思えるような部分が、人によってはその演奏でいちばん好きなところになったりもする。そういう発見は、ダブからのもうひとつの学びだよ。キーを少しずらしてディレイをかけると、正しく歌ったときよりも素晴らしい音になることがある。歌い間違えた音だとしても、ダブの手法なら最高の部分に変えることもできるんだから。

そういう完全と不完全の共存は、すべての音楽においてとても重要なことだよ。コンピューターを使えば、その不完全な部分をすべてアイロンにかけて整えることはできる。僕は完璧主義者なところがあるから、ついついその誘惑に負けてしまいそうになる。でも、僕がダブから学んだもっとも大事なことは、そんなふうに整える必要なんかないということだった、

僕の好きなタイプのダブのレコードには、失敗したような音がたくさんある。現代のミキシングエンジニアに聴かせたら、きっと〈ここを修正しよう〉とか言い出すだろうね。でも、僕はそうは思わない。その間違った音から生まれるサウンドこそが最高だから。

僕が過去の音楽から受け取っているのは、不完全であることの良さだ。今は僕らは音楽にアイロンをかけているけど、本当はそうする必要なんかない。現代の音楽すべてがそうすべきだと言ってるんじゃないよ。でも、古い音楽から影響を受けて、昔のやり方に魅力を感じている人間もまだいるということさ」

 


RELEASE INFORMATION

JOE ARMON-JONES 『Sorrow』 Aquarii(2024)

リリース日:2024年12月6日
品番:AQU010
価格:3,590円(税込)

TRACKLIST
1. Sorrow (feat. Liam Bailey)
2. Sorrowful Dub*
3. Sorrowful Horns (feat. James Mollison)
4. Sorrowful Rhodes
*Vinyl Exclusive Track