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中山美穂の音楽センスが濃く反映された傑作の数々

そして師走に飛び込んできたショッキングな訃報。中山美穂が54歳の若さで旅立ってしまった。あゝなんてことだ……と、悲しさと悔しさが込み上げてきて、どうにもならない状態に陥ってしまったという人を多く目にしたものだ(歌手活動を精力的に展開し、ちょうどコンサートを開催中だった)。アイドルシンガー〈ミポリン〉がどれほど日本中から愛された存在であったのか。テレビで数多く流される追悼番組などを観て改めて知ったという若い人もたぶん少なくないんじゃないだろうか? そんな向きには、アイドル全盛期に生み出された眩さいっぱいのヒットソングだけでなく、彼女の音楽センスが濃く反映されている80年代後半から90年代にかけてリリースされた作品群にぜひ目を向けてもらいたい。

中山美穂 『All Time Best』 キング(2020)

入り口は、山下達郎のライブツアーにコーラスで参加していたキャリアも知られるCINDYが手掛けた楽曲が中核を成す8作目『angel hearts』(1988年)あたりがいいのではないだろうか。メロウバラード“Sweetest Lover”やエレクトロファンク“Too Fast, Too Close”などいわゆるブラックコンテンポラリーのテイストが注入されたアダルトなポップチューンが揃っていて、ミポリンのクールな美しさを魅力的に惹き立てている。なおこの前後のアルバムは傑作揃いなので、どれを手にとっても確かな満足感が得られることを保証しておこう。

中山美穂 『angel hearts』 キング(1988)

音楽制作への意欲が顕著に表れているということでは、大貫妙子作の“メロディー”がオープニングを飾る『De eaya』(1991年)も優れた作品だ。マンボチックな“Crazy moon”などエスニックなサウンドアプローチを多用しながら浮世離れしたファンタジックな世界を描出してみせる大貫のプロデュース能力には目を瞠るものがある。

中山美穂 『De eaya』 キング(1991)

その他にも、小悪魔的なウィスパーボイスで妖しく迫る“♡ Smoke”(1996年作『Deep Lip French』収録)、シンガーソングライター的な雰囲気を纏った“Pure White”(1994年作『Pure White』収録)などあちこちのアルバムに珠玉の名曲が隠れているのでぜひいろいろと掘り起こしてみて、あなただけのカッコいい中山美穂を見つけ出してほしい。

中山美穂 『Deep Lip French』 キング(1996)

中山美穂 『Pure White』 キング(1994)

 


PROFILE:桑原シロー
1970年、三重県尾鷲市生まれ。音楽ライター。2000年代半ば、タワーレコードが発行するフリーペーパー「bounce」の編集業務に携わり、退社後、フリーランスの音楽ライターとして活動。雑誌/ウェブを中心に記事を執筆。インタビュー、ライナーノーツ執筆などを行なう。ロック、ジャズ、歌謡曲など幅広い音楽ジャンルに精通し、映画、芸能、お笑いの分野にも活動範囲を広げている。2014年から、日本のディープサウス、熊野在住の異能のギタリストのマネージャーも務めている。