フランツ・フェルディナンドが5年ぶりにリリースする新作『Always Ascending』と連動したMikiki独自の特集企画。第1回はデビュー当時のポストパンク/ニューウェイヴ・リヴァイヴァル・シーンについて、第2回は優れたリミックスによってニュー・エレクトロ・ムーヴメントとの蜜月を過ごした時代についてのコラムだったが、第3回はファン待望の本人たちへのインタヴューだ。「過去は過去だよ」と力強く言い切ったフランツの現在に迫った。 *Mikiki編集部

2002年にグラスゴーで結成されたフランツ・フェルディナンドが2000年代のUKロックを象徴する存在であるという意見に異論はないだろう。アレックス・カプラノス(ヴォーカル/ギター)、ボブ・ハーディー(ベース)、ニック・マッカーシー(ギター)、ポール・トムソン(ドラムス)の4人は、ダフト・パンクがリミックスしたことでも知られる“Take Me Out”といったキャッチーなヒット・ソングを量産しつつ、サード・アルバム『Tonight: Franz Ferdinand』ではダブのアプローチを取り入れるなど、変化することも忘れなかった。こうした商業性とクリエイティヴィティーの両立は、どこかデヴィッド・ボウイを連想させるものだった。
そんなフランツに関する最近のニュースで驚いたのは、2016年にオリジナル・メンバーのニック・マッカーシーが脱退したことだ。正直に告白すると、シャープなギター・サウンドでバンドの屋台骨を支えてきた功労者が抜けることで、息の合ったバンド・アンサンブルを失ってしまうのではないかという疑念が生じた。それは、2017年5月にジュリアン・コリー(キーボード)とディーノ・バルドー(ギター)を迎えて5人編成になったというニュースを聞いても、頭の片隅にこびりついていた。
しかし、筆者の杞憂は鮮やかに吹き飛ばされてしまった。5人編成としては初のアルバム『Always Ascending』を聴いたからだ。フィリップ・ズダールにプロデュースを託した本作は、フランツ史上もっともカラフルな作品であり、多くのアイデアが最高のポップネスに結実した充実作である。フレンチ・ハウスを想起させる“Feel The Love Go”では今まで以上にダンサブルなサウンドを鳴らす一方で、“Slow Don’t Kill Me Slow”はしっとりしたバラード・ナンバーに仕上がるなど、多彩な音楽性が際立っている。
そんな『Always Ascending』はフランツの新たな船出を告げる盛大な祝砲にふさわしい、ポジティヴなエネルギーで満ちている。それは、アレックスとジュリアンに話を訊いた今回のインタヴューからも伝わるだろう。
ここから新しい歴史を築いていくんだ!
――最新作『Always Ascending』は、さまざまな要素が溶け合ったカラフルな作品になっていて、素晴らしいアルバムだと思いました。こうした作品になったのはなぜでしょうか?
アレックス・カプラノス「僕らは今、とても充実しているし、何か新しいことをしたいとも思っていたんだ。前作『Right Thoughts, Right Words, Right Action』は活動開始から10年のタイミングで作ったもので、ひとつの締めくくり的な意味合いもあったから、今回は新たな方向性を示したかった。ここから新しい歴史を築いていくんだ!という意気込みがあったからね」
ジュリアン・コリー「それには僕が新メンバーとして入ったことも関係していると思う。アルバム制作を通して、互いにできることを知っていく過程は楽しかったし、それがそのままアルバムに反映されているのかな。みんなで演奏することの喜びが表れている」
――ディーノは『Always Ascending』レコーディング後の加入でしたが、ジュリアンはレコーディングにも参加したんでしたよね。
アレックス「ジュリアンはこれまでの僕たちになかった新鮮な視点を与えてくれる。彼がミャオ・ミャオ(Miaoux Miaoux)名義で残した作品も、僕たちは好きだったんだ。だから、ミュージシャンとして優れているのも知っていた。それに人柄も良いしね」
――今作ではプロデューサーにフィリップ・ズダールを迎えているのも興味深いです。
ジュリアン「フィリップは、今回プロデュースを任せたい人のリストで上位にいた。彼がミックスで参加したビースティー・ボーイズの『Hot Sauce Committee Part Two』や、プロデュースを手掛けたフェニックスの作品群は僕たちも好きだからね。フレッシュかつ鮮やかで、躍動感がある素晴らしいサウンドを作れるというのも任せた理由のひとつなんだ」
アレックス「フィリップはエレクトロニック・ミュージックをやってきた人で、DJでもあるから、ダンスフロアを熟知している。僕たちとしては踊れるサウンドを作りたかったし、そのためにもフィリップはうってつけの人物だと思った。ロックンロールの生々しいサウンドにも理解があるしね」
――フィリップと組んだ影響がもっとも出ているのは、9曲目の“Feel The Love Go”だと感じました。彼がメンバーであるカシアスや、初期のダフト・パンクに通じるフレンチ・ハウスの要素があるからです。
アレックス「確かに“Feel The Love Go”は、フレンチ・ハウスの要素を取れ入れた曲になっている。でも、それを打ち込みではなく生演奏でやっているのは大きな違いだ。今回のアルバムはエレクトロニックな側面が強いけれど、それをグループとして生演奏でやるということを追求しているんだ」