
電子音を伴って生々しさを増すアンサンブル
上記のような背景もあってか、この日のパフォーマンスからは、いつにも増してバンドの演奏とPAオペレーションの不可分な関係性が際立って聴こえてきたように思う。


『自然とコンピューター』の収録内容からも察される通り、近年のOGRE YOU ASSHOLEは、ステージ上でも積極的にシンセサイザー等の電子機器を導入しているのだが、まずはそれらが発するサウンドの存在感と迫力に圧倒される格好となった。アルバム収録曲“君よりも君らしい”をはじめとして、後半で立て続けに披露されたEP『家の外』からの楽曲に至るまで、少し前に床置き式から吊り下げ式に変更された名機FUNKTION-ONE(スピーカー)から繰り出されるアナログシンセサイザーの野太いサウンドは、これまでにWWWへ幾度となく通った私の記憶を振り返ってみても、出色というべき生々しさを伴っていた。


本来であれば、ロックバンドという形態においては、マシーン(電子音)の活躍度の上昇と比例して、アンサンブル総体の生々しさは減じてしまいそうなところだが、近年のOGRE YOU ASSHOLEの〈生〉演奏は、むしろそれとは逆にどんどん生々しさを増していっている印象がある。この日のWWWの音響システムで彼らの演奏に触れ直してみてそのことを強く再認識させられたし、もちろん、電子音を伴わないバンドだけの演奏パートでも、同様の印象はより一層深まるばかりだった(“また明日”や“真ん中で”といった古くからのレパートリーが、そうして〈生々しさ〉を増したアンサンブルを得て蘇る様子も、古くからのファンにとってはたまらない瞬間だったはずだ)。

鋭く深く観客に訴える〈曖昧〉と〈混濁〉
昨年のアルバムリリース時に私が行ったインタビューに対し、出戸学と勝浦隆嗣の2人は、ライブ演奏に臨むにあたって、仮に演奏し慣れた曲の場合であってもその中にわざと曖昧なパートを設け、更にはバンドの演奏が混濁しても無理に辻褄を合わせようとしなくなったと語ってくれた。


この日の4人のパフォーマンスも、まさにそうした〈曖昧〉や〈混濁〉が顔を覗かせる瞬間が少なからずあったように思う。特定のフレーズのループと、削ぎ落としたメロウネスの響きを、もうそれ以上行ってしまったら瓦解してしまうのではないかというギリギリの領域まで持っていく中で、かろうじて保たれていた曲の輪郭が曖昧になり、いつしかそれが肉体内部のエネルギーとともに外へと向かって溶け出していくようなスリル……彼らのライブでしか体験できないあの感覚が、この日は一層の鋭さと深度を持って私の身体を侵してくるのを感じることができた。と同時に、バンドの演奏を耳と身体全体で受け止めながら、コンソールの後ろで当意即妙のオペレーションを行う佐々木と中村の〈パフォーマンス〉こそが、そうした感覚をより一層増幅している事実も改めて体感できたのだった。

〈自然/コンピューター〉という対立の外へ
各種の楽器を介したバンドの〈生〉演奏と、マイクが捉える空気の振動、各種マシーンの発する電子音、それら全てをミックスしてスピーカーへと送り出すアナログコンソールの存在と、それを操るオペレーター。そして、そこに出現する音を体感する私達オーディエンス。こう書くだけでも、ライブパフォーマンスを作り上げる行為の中に、幾重にも重なる肉体と機械の共同作業・コミュニケーションが存在することがわかる。そして、そうしたコミュニケーションのスリルというのは、パフォーマー達に限らず、私達自身が、〈自然、あるいはコンピューター〉という素朴な見取り図から進んで這い出し、〈曖昧〉や〈混濁〉の可能性へと身を委ねた時にこそ、もっとも忘れがたく、蠱惑的なものとなるのだ。私達を〈外部〉へと連れ出してくれる穴があるとするのならば、そういう体験の只中にこそ、ふとその姿を現してくるはずなのだ。


SETLIST
1. ただの好奇心
2. 君よりも君らしい
3. お前の場所
4. 影を追う
5. 熱中症
6. 偶然生まれた
7. 自然とコンピューター
8. わかってないことがない
9. また明日
10. 真ん中で
11. 家の外 alternative ver.
12. interlude
13. 待ち時間
14. 家の外
15. 朝
16. 見えないルール
ENCORE
17. たしかにそこに