
手が届かんもんに手を伸ばす
――さっきも少し話をしましたが、みんなの生活スタイルが大きく変わったじゃないですか。京都にいる石塚さんも、職がかなり変わったり……。
石塚「もう、転々ですよ」
――その変化とともに、曲の作り方にも変化はありましたか?
石塚「うーん。“南区”(新曲の“京都市南区”)とかはフィジカルっぽい曲を台風クラブなりにやろうと思って作ったっすね」
――それはトラックの運転手になったり、自分の車でも頻繁に運転するようになったりしたことも反映されて?
石塚「ブリッジミュートしかない、と」
――(笑)。運転するようになって聴く音楽も変わったんですか?
石塚「いや、ぜんぜん変わらん。何聴いても気持ちいいから」
――爆音だもんね(笑)。
山本「おれは車がなくなったやん。だから、まったく音楽聴かなくなったね」
石塚「やっぱり、車をちゃんと愛してあげてほしいね。道具として見ずに。こっちが言ったことは絶対車に聞こえてるから」
山本「車が動かなくなって、めっちゃバッドやったよ」
――新曲の話に戻しますが、“京都市南区”と、あと最近のライブでも演奏している“身も心も”がありますよね?
石塚「そやな。あれは信貴生駒スカイラインってとこで作った。車のトランクにアンプを積んでるから、大概ギター持ってどっかに弾きに行ってて」
――出先でもギターを触ることはありますか?
石塚「めっちゃ触る。“南区”も“身も心も”も今日やった新曲も、車乗ってった先で作った。いい停め場がいっぱいあるから」
山本「車乗りはじめてから、こいつの進歩を感じてる。風呂行くんや、とか」
――石塚さんだけはツアー先で頑なに風呂に行かなかったもんね。
石塚「湯舟嫌いやったもん。でも、冬場の露天風呂はほんま素晴らしかった」
――歌のテーマも含めて新曲は1st(2017年作『初期の台風クラブ』)の頃とはちがうものになってると思うんです。
石塚「そやね」
――その変化を山さんと伊奈さんはどう受け止めてるんですか?
山本「……難しい。“南区”も石塚がトラックの運ちゃんになってできた曲やなって思ってて。おれはそんなマッチョ系じゃないからさ」
――ブリッジミュートも……。
山本「苦手。したこともないし。難しいなあ」
石塚「いや、むずないて」
山本「むずいって。この前、〈おれらはこれにはなれへんな〉って話をしたやん? あれを“南区”に感じてまうから」
石塚「いや、台風クラブは元からそうやで。1stのときから手が届かんもんに手を伸ばすことだけをしてるから」
――伊奈さんはどうですか?
伊奈「(即答で)なんも考えてへん」
石塚「(店員に)すみません! 生を」
――“南区”や2ndの“野良よ!”のドラムって伊奈さんはあんまりやってなかったタイプですよね?
伊奈「まったく通ってなかったね。だからおれの少ない知識のなかで、〈たぶんこうなんでしょ?〉って考えてやってる。ただ、この数日でドラムが上手になる予感がしてる。ちょっと見つけたんですよね。東京に引っ越してきて3人揃わんから、それまでスタジオに1人で行くとかせえへんかったけど個人練をするようになって、ちょっとずつ上手になってきてる」
――ちなみに、今日やってた新曲も運転や旅がモチーフになってましたよね?
石塚「あれはスターバックス鴻ノ池店で作ったな。駐車場で」
伊奈「鴻ノ池ってどこ?」
石塚「奈良。奈良があちーんだよ! あちあち! 奈良奥山ドライブウェイが最高で。奈良奥山ドライブウェイ抜けたら奈良の市街地の南に出るんやけど、何か食べるにしても安くて美味いし、いい本屋もあるし」
伊奈「いろんな手段あるけど、移動ってすごい音楽と関係あるよね」
山本「じゃあ、はよ車直さなあかんな」
石塚「ただ、ロードノイズなしで家でレコード聴くとやばいで。ドラッグやで。16分(音符)のタンバリンとか聞こえっからね」
山本「家で聴くと〈めっちゃええ音やな〉ってなるよな」