ロンドンらしい多様性に日本人のソウルを込める

 シンガー・ソングライター、プロデューサー、アレンジャーの小袋成彬が拠点をロンドンに移して5年。彼の地での生活や人との交流を通じて、得るものがたくさんあったであろうことが 『Zatto』を聴くとよくわかる。

小袋成彬 『Zatto』 エピック(2025)

 約3年ぶりとなる4作目のアルバム『Zatto』は、現代のロンドンの音楽シーンで精力的に活動するミュージシャンたちとともに作り上げた作品。参加アーティストをざっと挙げると、日本でも人気の高いロンドン出身のシンガー・ソングライター、プロデューサーのサンファのバックでベースを務めるロゼッタ・カー、同じくロンドンを拠点とし、ジャイルス・ピーターソンのレーベルからのリリースでも知られるバンド、ココロコのドラマーのアヨ・サラウ、名門レーベル〈ワープ〉から素晴らしい作品を発表し、昨年は初来日公演も行ったナラ・シネフロのサポート・ピアニスト、ライル・バートンなど。このほかにも実にユニークなキャリアを持つミュージシャンたちが本作のために顔を揃えた。録音はステレオラブのドラマー、アンディ・ラムゼイ、ミックスはディアンジェロ『Voodoo』などを手掛けたラッセル・エレバドがそれぞれ担当している。

 全篇打ち込みなしの生音だという本作を簡潔に表現するなら、さまざまなスタイルのソウル・ミュージックとなろうか。レゲエやアフロ・ビート調ラテンもあって、ミュージシャンが自身のルーツを重んじることで多様性を獲得しているロンドンのジャズ・シーンと重なるバラエティ豊かなグルーヴを感じられるのがいい。そうした演奏のなかで小袋の日本語詞が蠢き、〈洗練されたいなたさ〉とでもいうような独特の世界を形作っているのだ。と、こう書いていて、このアルバムはロンドンに暮らす小袋のアイデンティティ表明なのではないかと思えてきた。ロンドンに根を張っていればこその表現であり音――そこに日本人のソウルが詰まっている。

 


LIVE INFORMATION
Nariaki Obukuro Japan Tour 2025 “Zatto”

2025年3月15日(土)大阪・味園ユニバース ※SOLD OUT
2025年3月16日(日)愛知・名古屋 CLUB QUATTRO ※SOLD OUT
2025年3月22日(土)東京・恵比寿 リキッドルーム ※SOLD OUT
2025年3月29日(土)福岡・福岡 BEAT STATION ※SOLD OUT
2025年3月30日(日)福岡・福岡 BEAT STATION
2025年4月3日(木)北海道・札幌 ペニーレーン24
2025年4月6日(日)東京・青海 Zepp DiverCity (TOKYO) ※SOLD OUT
https://www.liveexsam.co.jp/artist/nariaki-obukuro-japan-tour-2025-zatto/