戦後ドイツのタブーであるナチスをモチーフにした作品で物議を醸し、のちに新表現主義の代表的な作家となるアンゼルム・キーファーをヴィム・ヴェンダース監督が作品と現在をドキュメンタリーで、幼少期から青年期をドラマパートで描いたアートフィルム。キーファーの作品を魅力的に映像で表現していて、大規模な回顧展でキーファーの作品を生で見てみたい衝動に駆られる。今年はアウシュヴィッツ解放から80年がたち、記憶の風化や忘却が危惧されているが、映画でも語られたように深淵をのぞくことを嫌がり、楽なことばかりに向かうのではなく、負の遺産と真摯に向き合うことが大切だと再認識させてくれる映画です。