HISTORY IN THE MAKING
ジャファー・ジャクソン主演でレジェンドの姿を蘇らせた「Michael/マイケル」。心を揺さぶる最高の音楽を主軸に綴られたストーリーは何を物語っている?
より親しみやすい世代のポップ・アーティスト/ミュージシャンを題材にした伝記映画の話題作が続いている。昨年のジェレミー・アレン・ホワイト主演作「スプリングスティーン 孤独のハイウェイ」やティモシー・シャラメがボブ・ディランを演じた「名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN」は記憶に新しいとして、「Back to Black エイミーのすべて」(2024年)や「ボブ・マーリー:ONE LOVE」(2024年)、「ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY」(2022年)、さらにはバズ・ラーマン監督の「エルヴィス」(2022年)、ジェニファー・ハドソンがアレサ・フランクリンを演じた「リスペクト」(2021年)……と、それぞれの作品は映像記録を元にしたドキュメンタリーの生々しさとはまた違う切り口で、アイコンたちの足跡を物語性豊かに伝えてくれている。そうした近年の活況への状況を整えたのが、クイーンを取り上げて興行収入の面でも大成功を収めた「ボヘミアン・ラプソディ」(2018年)なのは間違いないだろう。そして、そんな世界的ヒット作を製作したグレアム・キングの新たなプロデュース作品こそ、マイケル・ジャクソンの半生を描いた映画「Michael/マイケル」だ。昨年11月に予告編の動画が公開されるや24時間で再生回数が1億1620万回を記録するなど、公開前から爆発的な期待を集めてきた話題作がいよいよ6月12日に日本公開を迎える。
ジャファーが体現するリアリティ
遡れば、マイケル・ジャクソンの生涯と音楽に基づいた映画を制作するプランに関して、グレアム・キングのチームとマイケル・ジャクソン・エステートとの合意が報じられたのは2019年のこと。もともとマイケルのファンでもあったというキングは、コロナ禍を挟みながらも水面下でプロジェクトを進行してきた。脚本を担当したのはジョン・ローガン。アカデミー賞に3度ノミネートされたこともある彼は「グラディエーター」(2000年)や「ラスト サムライ」(2003年)の脚本を手掛け、キングとはマーティン・スコセッシ監督の「アビエイター」(2004年)でも組んだ間柄だ。さらに監督に起用されたのが「トレーニング デイ」(2001年)や「イコライザー」シリーズで名高いアントワーン・フークア。もともとMVの世界で名を馳せた彼は、90年代にプリンスやハイ・ファイヴ、アッシャーなどR&B/ヒップホップのMVを数多く手掛けていた人。これだけの豪華な顔ぶれがスクリーンの中にマイケル・ジャクソンを蘇らせたのだ。
そして何より話題なのはキャスティングの妙だろう。そもそもマイケル・ジャクソンを誰が演じるのか、不世出のパフォーマンスの再現性という点もさることながら、あの美意識に溢れた独特の佇まいを誰が表現できるのかという点は、制作が伝えられた時点から世界中のファンにとっての関心事だったに違いない。92年にモータウン製作のTVミニシリーズ「The Jacksons: An American Dream」でマイケル役を背負ったワイリー・ドレイパーとジェイソン・ウィーヴァーも好演だったが、そんな高すぎるハードルを越えてきたのが今回の主演に選ばれたジャファー・ジャクソンである。
96年生まれの彼は、マイケルの実兄ジャーメインの息子、つまりはマイケルの甥にあたる血筋の持ち主。12歳の頃から歌とダンスを始め、2019年には“Got Me Singing”でアーティスト・デビューも果たしているが(ブルーノ・マーズに影響を受けたというのもおもしろい)、そういった血縁やステージングのスキルの面だけでなく、話し声や立ち姿なども含めた申し分のないリアリティは、マイケルの母(ジャファーの祖母)であるキャサリンも〈マイケルを体現している〉として承認したほどで、その凄さをトレーラー映像ですでに実感している人も多いことだろう。ジャファーが自身の主演をInstagramで報告したのは2023年1月のこと。そこから1年後の2024年1月下旬に撮影はスタートしている。