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〈伝説は死なない〉
単なるアーカイプ映像の焼き直しでも、ドキュメンタリーでもコンサート・フィルムでもない。エルヴィスがイリュージョナルな世界で〈初来日〉を果たす、没入型映像作品!

 エルヴィス・プレスリーは50年代にロックンロールを世界に広めた男として、ことあるごとにメディアに紹介されてきた。

 亡くなってから半世紀近くを経たいまでは、彼の音楽を聞いたことがなく、映画を観たことがない人も多い。それでも〈キング・オブ・ロックンロール〉というキャッチ・フレーズのもと、彼は有名人として生き永らえている。

 どんな有名人でも、時代の経過と共に知名度が少しずつ下がっていくことは避けられない。周年などをきっかけにあらためて脚光を浴びることはあるが、評価の仕方はそのたびに変わっていく。だから有名人であり続けられるのは、いくつもの時代のフィルターをくぐり抜けられた人だけだ。エルヴィスはその数少ない1人なのだ。

 ポピュラー音楽でいまのところ世界で最も有名なのは、ビートルズだろう。ビートルズはエルヴィスの音楽を聞いて仰天してバンドをやりはじめたグループだが、いまはビートルズの人気のほうが、兄貴分のエルヴィスを上回っている。ただしそれは時代の経過とそれに伴う社会の変化によるもので、本人の才能や音楽の評価とは関係がない。

「EPiC/エピック エルヴィス・プレスリー・イン・コンサート」(以下「エピック」)は、そんなエルヴィスについてよく知っている人も知らない人も楽しめる映画だ。

 いまは音楽映画がブームを呼んでいて、それらはドキュメンタリー映画と俳優が演じる伝記映画に大別されるが、「エピック」はタイトルから想像できるように前者のヴァリエイションだ。

 製作・監督は4年前(22年)に公開された伝記映画「エルヴィス」を作ったバズ・ラーマン。監督は、その制作過程で発掘した60時間に及ぶエルヴィスの未公開フィルムからコンサート、リハーサル、記者会見などの映像を選び、最先端のレストア/リマスター技術を使って「エピック」にまとめた。

 中心はもちろんコンサートの映像だが、編集の仕方が細かく、ライヴをそのまま記録した映画とは印象がちがう。15秒単位であらゆるタイプの映像が洪水のようにネットに氾濫するいまの時代ならではのスピード感に通じるものがその編集から感じられる。先にヴァリエイションと言ったのはそういう意味だ。

 

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 デビュー当時のエルヴィスのロックンロールは大人からは〈不道徳〉な音楽とみなされていた。人種差別的な法律があった時代のアメリカ南部に生まれ育ち、その垣根を超えて黒人音楽の影響を強く受けた彼の音楽やパフォーマンスは、存在するだけでも物議をかもすものだった。極右からは〈悪魔の音楽〉とまで非難された。

 そのイメージを振り払うかのように彼は58年に良きアメリカ青年として兵役につく。そして60年代にカムバックしてからはレコードと映画に専念した。

 それは彼の意志というより、マネジャーのパーカー大佐の作戦だった。パーカー大佐は〈危険〉なイメージを取り除くために、エルヴィスを健全な青春物語のプログラム・ピクチャーや気軽に楽しめる甘美な音楽の中に封じこめた。その中で、エルヴィスはポップ・アイコンに生まれ変わっていった。

 しかし60年代の中期には、ビートルズやローリング・ストーンズをはじめとするイギリスのグループに続いて、ロックの新しい波が押し寄せる。ヒッピーやサイケデリック・ロックのサブカルチャーが脚光を浴び、映画の中で他愛のないアイドルを演じていたエルヴィスの人気にもさすがに翳りが出てきた。

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 そんな68年、彼はNBCテレビの特別番組のライヴであらためて成熟したパフォーマーとして注目され、69年からラスヴェガスのホテルで本格的にライヴに復帰した。ホテルでのライヴは定番化し、後にはより大きな会場でのコンサートもはじまる。今回の「エピック」に使われたのは、ラスヴェガスの時期の未発表映像が中心だ。

 ショウとしてミュージカルなみに振付られ、音楽が派手な演出の一部と化した近年のポップ・スターのパフォーマンスとちがって、エルヴィスのライヴはあくまでも音楽に重点が置かれている。

 断片的にはさまれる50年代の映像に見られるように、デビュー当時のエルヴィスのステージは音楽と体の動きの結びつきが自然な遊びに満ちていた。リハーサル・シーンには、彼がその楽しさを持ち続けていることが捉えられている。「エピック」の彼の動きには、それに加えてエンタテインメントとして工夫された部分もある。ステージを動き回らず、マイクの前で身体を激しく震わせたり、見えを切ったりする姿に目を奪われずにいられない。

 そのパフォーマンスは、他のロックンローラーのそれとも、この映像が撮影された時期の長髪を振り乱す流行りのロックの動きともちがっている。生まれ変わったエルヴィスならではのそのディープなスタイルが、彼のパフォーマンスを時代を超えたものにしているのだ。

 ラスヴェガスのきらびやかな非日常空間で、幅広い年齢層の客を熱狂させるエルヴィスの表情には不敵な微笑もあどけない優しさも宿る。演奏や歌の素晴らしさは言うまでもない。細部は見てのお楽しみだ。

 


MOVIE INFORMATION
映画「EPiC/エピック エルヴィス・プレスリー・イン・コンサート」

製作・監督・音楽製作総指揮:バズ・ラーマン(「エルヴィス」「華麗なるギャツビー」)バズ・ラーマン
出演:エルヴィス・プレスリー
配給:パルコ ユニバーサル映画
(2025年/オーストラリア/97分)
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2026年5月15日(金)よりIMAX先行上映、5月22日(金)より2D(通常版)全国ロードショー
公式サイト:https://www.universalpictures.jp/micro/epic
X:@epicjp2026
Instagram:@epicjp_movie0515