都会の生活をトリートメントする〈安全地帯〉みたいなアルバム
――次がカリフォルニアのインディーポップアーティスト、ロス・レトロスを迎えた“Before You Go”。これも彼の作品のローファイな感じに比べるとよりブライトというか、少し印象が違いますね。
「彼とは以前JINTANA & EMERALDSでもコラボレーションしたことがあるんですが、どうやら今はフュージョンっぽいモードらしくて。この曲に限らず、アルバム全体で〈80s〉というキーワードもあって、それを現代的に解釈したサウンドをやってみたいと提案していたので、そういう意味でもとても良い曲になったと思います」
――続く“ロストシティ”は、プロデューサーのChocoholicさんとの共作ですね。こちらは比較的ダンスミュージック度が高めです。
「彼女には以前リミックスをお願いしたことがあったんですが、イチから一緒に作るのは初めてでした。いただいたデモの上に私がメロディーを付けていくっていう作り方でした」
――歌詞も含め、上向きな印象と憂いみたいなものが一曲の中に同居している感じが魅力的です。
「どうしても影のあるものに惹かれてしまうんですよね。クラブが好きと言っても、自分がめちゃくちゃパーティーピープルみたいな人間なのかと言ったら全然違う(笑)。自分の作品に限らず、普段聴くものも憂いを含んだものの方が心にヒットすることが多い気がします。
ヒリヒリした都会の生活をトリートメントするものが好きなんですよね。音楽の逃げ場所というか……。元々、今回のアルバムのタイトルも〈安全地帯〉にしようとしていたくらいで。結局、バンドの安全地帯を連想させちゃうかなと思ってやめたんですけど(笑)」
――ceroの髙城晶平さんと荒内佑さんが参加した“Hamon Baby Boy”は、メロディーやサウンドも、まさに彼らの個性が刻まれている感じがします。
「彼らとは(ceroのシングル)“Orphans”にコーラスで参加して以来の仲で、いつか自分の作品でもイチから共作したいなと思っていたんです。最初はダンスミュージック的な曲がくるのかなと予想していたんですけど、上がってきたのがまさかのバラードで驚きました(笑)。〈好きにやってください〉と伝えたのが結果的に功を奏しましたね」
――この曲の歌詞にもどこかうら寂しさが漂っていて、シネマティックな印象も受けます。
「髙城くんと歌詞について話したとき、季節外れの避暑地のイメージがあると伝えられたんです。海も見えているけど辺りに人気がなくて、ヤシの木じゃなくて松の木がある感じ。
あと〈日本映画〉というキーワードも言っていて、〈それって小津安二郎とか?〉って訊いたら、濱口竜介さんの『ドライブ・マイ・カー』に近い世界かなって。すごく透き通った雰囲気だけど、ずっと不穏なムードが漂っている感じ。ヒリヒリした感覚と美しいものの共存というのは、私が考えていたイメージともぴったり一致していたんです」